つやま自然のふしぎ館岡山県北東部、中国地方の東端に位置する津山というところはちょっと不思議なところで、中国自動車道が通ってはいるもののあまり交通の便がいいというわけでもないのに昔から栄えていて、近代には数多くの著名人を輩出しています。第35代内閣総理大臣である平沼騏一郎をはじめ、最近ではB’z稲葉浩志、映画最新作「東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン~」も話題のオダギリジョーらも津山市の出身です。

さて、そんな津山市はドライブに手頃な距離なので独身時代の一時期は頻繁に遊びに行っていたりもしたのですが、ここに「つやま自然のふしぎ館」というちょっと変わった博物館があるということを今年に入ってから知りました。行きつけの理髪店に散髪に行ったときに、散髪してもらいながら「人体の不思議展に行った」という話になり、「そういうのが好きならきっと楽しめると思いますよ」と他のお客さんから聞いたからと教えてもらったのでした。特に「そういうのが好き」というわけではないけれど、詳しく聞いてみると確かに面白そうでした。というのも、戦前に津山の富豪が水族館を作ろうと準備を進めていたところで戦争が始まってしまい断念したのですが、代わりに蒐集していた剥製の膨大なコレクションを博物館として公開することにした、というようなことらしく、その剥製の数が尋常なものではないというのです。しかも古くから集められているものなので、現代では考えられないような絶滅危惧種の剥製などもあり、なんとキリンの全身の剥製まであるというのです。これはぜひ行ってみたい!と思ってはみたものの、案の定妻は気持ち悪がってかなり嫌そうです。仕方ないので一人の時に行くしかないかと諦め気味だったのですが、長男が興味を示してくれたので何とか家族で行くことができたのでした。

津山城のすぐ隣という絶好の場所に位置するのが逆にわかりにくかったりもしたのですが、何とか車を停めて入館料を払います。大人700円はまあ良心的かと思うのですが、小学生は600円、幼児も4歳から400円というのがなかなか微妙な設定ではないでしょうか。館内に入ってみると「ゴールデンウィークでも他の客は2組しかいなかった」と聞いていた通り、シーンとしていて他の客の気配がありません。次男などはそれでビビってしまったのかやや挙動不審でしたが、建物は古そうなものの照明は明るく掃除も行き届いているので、イメージしていたようなおどろおどろしい雰囲気は全くありませんでした。

いきなり最初に入った部屋からローランドゴリラキリンに出迎えられてしまったのでいきなりハイライトが来てしまったようで「すぐに見終わってしまうのかな」と思ってしまったのですが、それは大変な間違いでした。1階はその部屋の他に人体標本の部屋と昆虫標本の部屋があってちょっと怪しい感じだったのですが、2階に上がってみるとそこには大小様々な動物や鳥の剥製がおびただしい数、しかしテーマごとに整理されて見やすく展示されているのです。展示総数は実に22000点にも上るということですが、これは実に壮観というほかなく、誰しも圧倒されること間違いありません。

ライオントラ、タカなどの定番とも言える剥製はもちろんあり、複数あるホッキョクグマのうち1頭などは自由に触って毛並みを感じることなどもできてしまいます。他にも珍しい動物がたくさん展示されているのですが、中でも興味を引いたのはミナミゾウアザラシヘラジカなど、動物園でもほとんど見られないような動物の巨大さを間近で感じることができるものでした。これはある意味剥製ならでは、この博物館ならではと言えるものなのではないでしょうか。

最初は引き気味だった妻や次男も楽しめたというわけではなかったものの最後にはだいぶ慣れたようでしたし、長男はかなり喜んでくれたようだったので私としても皆で行った甲斐がありました。私自身も期待していたようなものとは違っていたものの、素直に楽しむことができるものだったので満足しています。一風変わった博物館ではありますが、今から作ろうとしても作れない貴重な剥製が数多くあり、この博物館の存在自体も極めて貴重なものなのではないでしょうか。これが大都市ではなく津山という地方都市に忽然と存在するというのが非常に不思議なものですが、私もいずれまた行ってみたいと思うので末永く存在し続けて欲しいものです。