朝鮮民主主義人民共和国本当に現代のこととは信じられません

国際社会から孤立し、日本からも近くて遠い国となっている北朝鮮こと朝鮮民主主義人民共和国というのは私にとっても謎に包まれた得体の知れない国ですが、逆にそれが興味を引く不思議な存在となっているのもまた事実です。大韓民国盧武鉉大統領については「ちょっとイタいオッサン」というくらいの印象で特に興味の対象とはならないのですが、北朝鮮の最高指導者である金正日についてはミステリアスというより訳がわからない「あちら側の人」という感じで何となく気になってしまいます。

といってもそれほど積極的に調べてみようとまでは思っていなかったのですが、昨日図書館に行った際に「話題の本」のコーナーに置かれている「マンガ金正日入門」が目に留まったので、マンガならサッと読めていいかな、というくらいの感覚で借りて読んでみることにしました。

マンガ金正日入門-拉致国家北朝鮮の真実
著:李 友情
飛鳥新社 (2003/07/31)
ISBN/ASIN:4870315750

この本はタイトル通り、金正日がどのようにのし上がり、権力をにぎり何をしてきたかをマンガで描いたものです。もともと韓国の漫画家李友情氏が韓国向けに描いたものの発行直後に発禁処分となってしまったものを、拉致問題で関心の高まった日本向けに書き直して発行したものということです。このとき日本語訳と監修をしているのが関西大学教授の李英和氏なのですが、この人は北朝鮮の民主化のために活動をしていて暗殺命令まで下されているほどの人だというので、内容には一定の信頼が置けるのではないかと思われます。

読んでいるとこれが現在進行中の実際の出来事とはとても信じがたく、周囲からは数十年以上は遅れているのではないかと感じられます。歴史の上では似たような専制独裁国家というのはこれまでにいくつも存在したわけなのですが、それが現在も2千万人という国民を抱えて存在しているというのが驚きです。また本書では金正日に焦点を当てているのでわからないのですが、彼の父親である金日成がどうやって国家主席の座についたのかというところにも興味が湧いてきました。

しかし残念ながら、この作品の「マンガ」の部分についてはちょっと厳しい評価が必要です。訳者まえがきには「韓国漫画界の重鎮」と書かれているのですが、日本のマンガのレベルからするとかなり低いものと言わざるを得ません。まあ私自身絵は描けないのであまり偉そうに言うのもなんですが、とりあえず絵が入っているというだけで絵から得られるものがないように感じられます。結局は文字で書かれていることを読んでいるだけで済んでしまうので、マンガでなくてもいいのではないかと思えてきてしまうのです。さらにところどころに入っているギャグっぽいものの寒さがその思いに拍車をかけます。

現在は続編も出ているようなのですが、こちらの方は架空の話も混じっていたりしてどうも評価が低いようです。その点本作は綿密な取材調査に基づいて事実を描いているようなので、タイトル通り金正日についての入門編としてはいいのではないかと思います。別に入門しなくてもいいような道だとは思いますが、私のようにちょっと気になっていたという人がもうちょっと知りたいというときにはお手軽でいいのではないでしょうか。まあこれを読んだからといって北朝鮮が身近なものに感じられるというようなことは決してないと思いますけどね…