Mika彼は「本物」だった。

AmazonにしろiTunes Storeにしろ、オンラインのミュージックストアがどんなに便利でも実店舗に敵わないのは「スタッフの顔が見えない」ということではないでしょうか。もちろん店員一人一人のことなど私も知ったことではありませんが、店内に陳列されているCDの脇などに手書きのPOPでちょっとした解説やお勧めの理由などが書いてあると興味を引くこともありますし、全く知らないアーティストのものであってもちょっと聞いてみようかという気になったりするものです。Amazonにはユーザーの購買履歴に対応して自動的におすすめ商品が紹介される機能があって、これはこれでなかなか素晴らしいものだと思いますし、iTunes Storeも様々な企画で紹介していたり、自宅にいながらにして次々視聴できるというのも便利なものですが、手書きPOPにはそれらとは違う味のような捨てがたいものがあります。しかしながら、やはり便利さの引き換えになるものではないということなのか、街からは次々とCDショップが消えていっているというのは残念なことです。

先日、その手書きPOPによるおすすめ情報を入手しに駅前のTower Recordsに行った際、見付けてしまったのがMikaのニューアルバム”The Boy Who Knew Too Much“です。思えば前作”Life In Cartoon Motion“も同じくTower Recordsで見付けたのでした…なんてことは実はすっかり忘れていて、ブログの過去記事を読み直して思い出したのですが。

ザ・ボーイ・フー・ニュー・トゥー・マッチ(初回生産限定盤)
アーティスト:MIKA
ユニバーサル インターナショナル (2009/09/16)
ISBN/ASIN:B002JB3VK4

この新作は前作からさらに音に磨きがかかっていて、「セカンドアルバム以降の出来が心配にもなってしまいます」などと言っていたのは全くの杞憂だったようです。前作からはかれこれ2年半ほどの間隔となっており、やはりしっかりとした音作りのためにはこれくらいの時間が必要ということなのかもしれません。ファルセットを多用した独特のボーカルと、音楽の魅力の様々な要素を詰め込んだ色鮮やかな楽曲は紛れもなくMikaその人のものであり、聴いていて楽しくなる音楽が健在で非常に嬉しく思います。

また、前作ではアルバムのカバーアートも楽しく素敵なものでしたが、今回も同じタッチの賑やかなデザインになっていて、楽しさ満載のMikaの音楽にピッタリです。これらのデザインはMikaの実姉のデザイナーDaWack、そしてRichard HoggとMika自身によるものなのだそうですが、やはり独特な感性と才能は姉弟に通じるものがあるのでしょうか。

今回のアルバムで私が特に気に入ったのは1曲目We Are Goldenから3曲目Rainまでですが、それ以外のどの曲もそれぞれ良くて捨てがたく、いつもアルバム通しで聴いていますが全く飽きません。最初にGrace Kellyを聴いたときのようなインパクトはないかもしれませんが、このアルバム全体の完成度は前作以上ではないでしょうか。今ちょっと前作を聴いていますが、この時よりも様々な音が重ねられて厚みが増しているような気がします。

ということで、Brit Pop好きにはこのアルバムは間違いなく買いだと思うのですが、来日の予定はないのでしょうか。ライブではまた違った魅力に触れることができそうな気がして、大きなホールよりもむしろライブハウスのようなところで、シンプルな楽器をバックに聴いてみたいところです。こんな時、もしも自分が住んでいるのがイギリスだったら…などと夢想してしまうのですが、おそらくそれ以上に「日本に住んでいてよかった」ということの方が多いような気もするので、短期間なら良くてもイギリス人にはなりきれないのでしょうね。