The Net時代は既に先を行っている?

私が大学でコンピュータ・サイエンスを齧っていた頃には既にインターネットそのものはありましたが、ちょうど同じ頃にSir Tim Berners-LeeによりWWWが開発されたところだったため、一般にはまだその存在はほとんど知られていませんでした。それからおよそ15年経った今、インターネットは人々の生活に深く入り込み、直接的にも間接的にもなくてはならないものになっていることは疑いようもありません。

しかし15年前のちょうどWindows 95が発売されたその年、インターネットとはどのようなものなのかを人々はまだ知らず、しかしその名前はよく目にし耳にするようになっていたとき、映画「ザ・インターネット」は公開されました。話題性のあるその名前に乗って大ヒットを記録したのは当然のことでしょう。

ザ・インターネット [DVD]
監督:アーウィン・ウィンクラー
ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント (2002/11/01)
ISBN/ASIN:B00006JOJH

この作品で描かれているのはそう遠くない未来、人々の生活に関わる行政や民間の情報はすべてインターネットに接続されたコンピュータにより管理されています。Sandra Bullock演じるAngela Bennettはコンピュータオタクの女性で、自宅に引きこもりながらソフトウェアの分析などを請け負う仕事をしているのですが、ある日入手したソフトウェアには機密管理されているはずのサーバへのアクセスが可能な特殊なプログラムが仕込まれており、それを見つけたために事件に巻き込まれていく…というようなストーリーになります。

現在から見ると過去にあたる将来を、過去の時点から予想して描いた話になるので、細かいところでは苦笑せずにはいられないような設定もあります。例えばデータのコピーにはフロッピーディスクが使用され、しかもその受け渡しにはFedExのメール便が使われているというのは、今の子供が見たら何をしているのか理解もできないかもしれません。今やたかだか1MB程度の容量なんて写真の1枚も入りませんが、その当時はそれで事足りていたのですから逆に凄い話です。まあ今でも本当に必要な情報に限ればそんなもので済むのかもしれず、単に贅肉が増えただけとも言えるのかもしれませんが。

また、作品内で使われているコンピュータのほとんどはMacです。もちろんMacとは言ってもNeXTSteve Jobsが率いていた頃なので今のMacとはかなりかけ離れたものですが、Windows 95以前の段階ではMac OSの方が圧倒的に映像として見栄えが良かったはずで、近未来の演出には欠かせない要素だったのではないでしょうか。今見ると古臭い画面でしかありませんが、15年前の一般の人々には「これぞ未来のPC」という感じだったのかもしれません。

大抵の映画のように、コンピュータウィルスがメインフレームなどにもCPUやOSの種類に感染なく感染したり、インターネットからどんなローカルなマシンにも侵入できてしまったりという細かいところには苦笑してしまったりもするのですが、コンピュータによって管理される社会の危うさを題材として捉えているところはなかなか鋭いところなのではないでしょうか。ただ、ストーリーがストレートすぎて陳腐なものに感じられてしまうのが残念なところで、警鐘を鳴らすものとして真剣に受け取られることはなかったようなのは惜しいところです。

それにしても、果たして現代の社会において各種サーバの乗っ取りなどへの対策が万全なものであるのか、またセキュリティシステムにバックドアなどが設けられているおそれはないのか、といったあたりについて自信を持って「問題ない」と答えられる人がいるのでしょうか。政治家などはそう答えられるのかもしれませんが、よくわかっていない人には問題点も見えないでしょうからね…