Magnetoよく知ることで深みが増します?

ある設定で大ヒットした物語があったとすると、どうしてそういう状況になったのかということにも興味が湧いてくるものです。例えば「スター・ウォーズ」でも最初に公開されたものは後に「エピソード4」とされ、その前日譚となる3部作が後から公開されて物語を補完し、全体的な世界観を強固なものとしています。

アメコミの実写版映画である「X-MEN」シリーズも突然ミュータント軍団が登場し、どうしてそんなことになっているのかはあまり説明されないままCGを大々的に活用して派手なアクションを繰り広げて人気を博してきましたが、シリーズの5作目は前日譚となり、X-MENを率いるProfessor Xとその敵役であるMagnetoとの若かりし頃の話となりました。この「X-MEN ファースト・ジェネレーション」の正式な公開は今日からということのようなのですが、昨晩「前夜祭」と銘打って先行公開されていたので観てきました。私が普段レイトショーで観るときは週末でもたいてい観客は十数人だけで寂しいものなのですが、今回は小さめなホールではあるものの半分以上の座席が埋まり、100人以上の観客が集まっていたようで、人気があるのか話題性があるのか、なかなかの賑わいでした。特に若者のグループが目立っていたような気がします。

ということで物語は1944年、のちのProfessor XことCharles XavierとMagnetoことErik Lehnsherrの大きく異なる少年時代の状況から始まります。そして、その後それぞれ成長し迎えた1962年のキューバ危機が主な舞台となっています。まさかキューバ危機もミュータントが引き起こしたものだったとは…こういう現実の出来事とフィクションとを織り交ぜて現実味を増しているのがいいですね。
Professor X
これまでのシリーズでProfessor XとMagnetoが敵対しつつも何か因縁めいたものがあるようで、憎み合っているというわけではない様子だったのはこういう事だったのか、と納得してしまうような話になっています。しかし、この作品での設定は原作であるコミックとは若干違うところがあって、映画は映画のオリジナルの設定となっているようです。辻褄があっていて説得力があればそれはそれで構わないと思いますが、もともとコミックを読んでいたような人は混乱してしまうことがあるかもしれません。

前作までもMagnetoの近くにMystiqueという自由に姿や声までも変えて真似られる女性がいましたが、そのMystiqueが実はかなり物語の中心に近いところにいたのだということが分かりました。また設定を調べるとこの後も重要な役割ないし立場にいるようなので、今後の作品でも要注目です。しかし、今回演じているのはJennifer Lawrenceで、これまでのRebecca Romijnとは変わっているためなんとなく違和感がありました。とはいえ、Professor Xほかほとんどすべてのメンバーが若い役者により演じられているのでMystiqueだけ特別というわけではないのですが。

全体的には派手なアクションにばかり目が行ってしまい軽い作品のように感じられがちだったこれまでのシリーズとは違い、心理的な描写にも重点が置かれてより重厚な作品になっているような気がします。登場メンバーがまだ力をうまく制御できず荒削りだというところにも人間味が感じられていいのではないでしょうか。これまではあまりに超人的すぎて現実味を失っていましたからね。