ソマリランドなんだか楽しそうに思えてしまう…

ごく一部の観光地を除き、アフリカというのは日本人の多くにとって馴染みのない地域だろうと思いますが、その中でも謎に包まれているのがソマリアという国です。ソマリアと聞いて真っ先に思い浮かぶのが海賊かもしれませんが、内戦により20年以上に渡って事実上の無政府状態が続いているということで、「リアル北斗の拳」とも言われる暴力が横行する世界をイメージさせます。しかし実際にそうなのでしょうか。あまりに危険ということでマスコミもなかなか足を踏み入れることができず、情報が出てきづらい状況になっています。

実はソマリア共和国の一部、旧イギリス領だった地域はソマリランドとして独立を宣言しています。しかしながら日本も含め国際的には国家としては承認されず、あくまでソマリアの一部地域として認識されるにとどまっています。そしてこのソマリランド、めぼしい産業がないため決して豊かな状況ではないようですが、町中で銃を見かけることもなく平和に暮らしていると言います。報道で伝えられるソマリアからは程遠い話です。

そんなソマリランドに実際に渡って過ごしてきたという著者のルポルタージュ「謎の独立国家ソマリランド」という本が最近発売され話題になっていたため私も早速購入してみたのですが、非常に面白く、約500ページというボリュームのある書籍ながらまったく飽きることなく読み切ってしまいました。

謎の独立国家ソマリランド
高野 秀行
本の雑誌社
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その一部はWEB本の雑誌というサイトで連載されていたようですが、それはあくまでごく一部の出だしに過ぎないようです。私はもともと連載のことを知らなかったので読んでいませんでしたが、この連載を読んで興味を持った人はぜひ本を購入するなどして読んでみるべきでしょう。この4年の間に4回ソマリアに渡って取材を続けてきた著者による、生のソマリランドとその他ソマリアの諸地域の状況が非常にダイナミックに伝わってきます。

ソマリアに住む人々はソマリ人という、というよりソマリ人の国をイタリア語でソマリアというわけですが、ソマリ人はイスラム教徒なので飲酒が禁じられています。その代わりに嗜むのが「カート」と呼ばれる一種の麻薬だそうです。アルコールがダメなのに麻薬は問題ないのかというのが非常に不思議なものですが、非常に効果は低いので日本でも問題がないレベルのようです。著者はこのカートを現地の人々と一緒に楽しみながら、カートなしでは決して聞けないような話を聞くことができたようで、大手マスメディアには得られない情報が満載となっているのではないでしょうか。

しかし私には受け入れづらかったのが、ソマリアの氏族の関係を表す上で日本の歴史上の武家や武将の名前を用いていることです。具体的には「イサック奥州藤原氏」「ダロッド平氏」「ハウィエ源氏」「バーレ清盛」といった具合なのですが、頭に入りやすいように便宜上、と言われても私には余計な情報が入り込んできてしまって余計に入りにくく感じました。私が日本の戦国史に疎いせいなのでしょうが、これはどうしても最後まで慣れることができませんでした。

それ以外は大変面白いエピソードが満載で、現地の人々も非常にいきいきと描かれているので、自分もソマリランドを訪れてみたいと感じてしまうほどです。実際にはそんなに楽しい事ばかりではないはずですが、著者が4回も訪れてしまうほどなのですから魅力のある街と人々であることはきっと間違いないでしょう。私も機会があれば…と言ってみてもそんな機会がやってくることはおそらくないのでしょうが。