Kennedy Space Centerアメリカが輝いて見えた時代。

夢の世界に浸った翌日は、アメリカが最も輝いて見えた時代に人類の夢と希望を載せてロケットやスペースシャトルが飛び立った場所、Kennedy Space Center (以下KSC)へと行ってきました。KSCはアメリカの宇宙開発の歴史の中でも大きな役割を果たした施設ですが、主にアポロスペースシャトルといった有人機の打ち上げを担当しており、無人機の打ち上げはすぐ隣にあるアメリカ空軍のCape Canaveral Air Force Station (ケープ・カナベラル空軍基地)で行われ、打ち上げ後の管制はテキサス州ヒューストンのJohnson Space Centerに引き継がれるようになっています。したがって、スペースシャトル計画の終了してしまった今は次世代の有人計画Orionのテストを2014年9月に控えて準備が進められていてアクティブな状況ではありませんが、今回訪れたのはこのKSCにある見学用施設Visitor Complexで、ここはオーランドからほど近いアトラクションとして今でも人気となっています。

さてここの目玉は大きく2つ、アポロ計画に使用されたSaturn V型ロケットと、2011年に退役したスペースシャトルAtlantisです。まず入口を入るといくつかの屋内展示と屋外展示のロケット等が見えますが、これらを適当に見ながら一番奥の方にあるバスツアーの乗り場へ向かいます。このバスツアーの代金はKSC自体の入場料に含まれており、これに乗らないと展示の半分以上を見ずに帰ることになってしまうでしょう。
Saturn V
バスが発車すると運転手のビデオを交えた様々な解説を聞きながら、巨大なVAB (Vehicle Assembly Building: スペースシャトル組立棟)に近づいてその前を通り、また巨大なクローラー・トランスポーターを間近に見つつ、まさにかつてアポロやシャトルが打ち上げられた発射台39Aと39Bの2つのすぐそばまで連れて行ってくれます。そしてそこで折り返した後、Saturn Vの発射時の様子の再現や、Saturn Vの実物が展示されているApollo/Saturn V Centerで一旦降ろされます。ここで体験できる発射の再現というのは実物の管制盤を使用しているものの動きのあるのはほぼ音声のみですが、それでもなかなかの迫力と臨場感がありました。そしてその後で巨大なSaturn Vが横倒しに展示されている大ホールへと導かれますが、その大きさには圧倒されるばかりです。またロケットノズルのあまりに複雑な配管にはまじまじと見入ってしまいました。
Space Shuttle Atlantis
この後再びバスに乗りますが、あとは元の展示場に戻るだけです。そして戻った後、今度はバスのりばのそばに半年ほど前に出来たばかりのAtlantisの展示施設があるのでそちらへ向かいます。こちらはできたばかりなだけあって非常にきれいで、しかも凝った展示がされていますが、まず最初は2つの部屋でそれぞれシャトル計画の解説ムービーを見せられます。そしてその後Atlantisとご対面、となるのですが、この見せ方が実に上手く、非常に感動的なものになっているため、思わず目頭が熱くなってしまいました。これは言葉では上手く説明できませんし、実際に見る時に知らない方がいいと思いますので、あえて書かずにおきます。なお対面後はすぐ近くで観察でき、思っていた以上に表面に凹凸があることに驚きましたが、それがこの眼の前にあるものがまさに何度も宇宙へ行って帰ってきたのだということをより実感させてくれたように思います。

しかしこのAtlantisの初飛行は1985年、まだコンピュータの性能も集積度も低かった頃にどのように宇宙往還を実現していたのか、まったく想像の域を超えています。昨年末には中国が無人月探査機「嫦娥3号」の月面軟着陸を成功させましたが、ソ連が「ルナ9号」を最初に着陸させたのは1966年、実に50年近くも前のことです。この50年の間の技術の進歩が大きなものだからといって中国が達成したものが大したものではないなどと言う気はありませんが、ルナ9号にしろアポロにしろ、またスペースシャトルにしても、現代ならリアルタイムに計算しシミュレーションできるようなものもほとんど膨大な量の事前の机上計算で対応していたのではないでしょうか。莫大なコストを掛けてもそれだけのことができたのは冷戦があったからこそですが、今の中国にとっては何がかかっているのかと考えるとちょっと恐ろしいような気がしてきます。

ちなみに、KSCにはお土産などを買える物販コーナーがいくつもあり、品揃えも充実しています。ディズニーのキャラクターグッズなどではなく、ちょっと知的で洒落たお土産選びにもお勧めかもしれません。