Silence - Andrew Garfield as Sebastião Rodriguesいろいろむごい。

今週水曜日は毎月1日の映画の日ということで、映画館の入場料金が大幅に割引されるわけですが、普段の1800円から1100円というのはだいぶ安くなっているものの、諸外国に比べるとまだまだ高いのではないでしょうか。日本でも深夜に及ぶ上映はレイトショーとして1200円程度になるサービスがありますが、アメリカでは時間帯や曜日などによってかなり柔軟に値段が変えられていて、週末でも午前中の回は3ドル程度で観られるというところもあります。逆に夜は割高になっていて、12ドル程度の場合もあってあまり日本と違わない場合もあります。それはそうとして、差額の絶対値だけ見るとたかだか数百円なので最近はあまり気にしなくなっていて、今週はだいぶ久しぶりに映画の日に映画館に足を運びました。

今回観たのはMartin Scorsese監督の「沈黙 -サイレンス-」という作品です。このところ娯楽作品ばかりで長らく観ていなかった重厚な作品になりますが、遠藤周作の「沈黙」を原作とする作品です。私の母が遠藤周作のファンのようで、幼い頃から家にハードカバーの本が揃っているのを見ていた記憶がありますが、実際に読んでみたことはありません。

沈黙 (新潮文庫)
沈黙 (新潮文庫)

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遠藤 周作
新潮社
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本作は完全なハリウッド作品ですが、舞台となっているのは17世紀の日本、登場人物もほとんどが日本人です。キリスト教が禁じられ、信者が弾圧されていた当時の日本に、棄教したイエズス会神父Ferreiraを探しに二人の若い神父RodriguesとGarupeが密入国し、隠れキリシタンの村で危険を冒しながらも信仰を守る者たちに触れ、やがて捕らえられてもなお信仰を捨てない人々を見て苦悩する、という話です。

主人公の神父Rodriguesは「アメイジング・スパイダーマン」でPeter Parkerを演じていたAndrew Garfield、もう一人の神父Garupeは馴染みのある顔なのに思い出せない…と思っていたら「フォースの覚醒」でKylo Ren役のAdam Driverでした。そしてFerreiraを演じるのは「ファントム・メナス」のQui-Gon JinnことLiam Neesonで、私にはとても馴染み深い俳優たちのシリアスな演技を見ることができました。

また、日本人の登場人物は窪塚洋介浅野忠信塚本晋也笈田ヨシイッセー尾形らにより演じられていますが、ハリウッド作品にありがちな韓国人や中国人、日系アメリカ人などではなくちゃんとした日本人の俳優により演じられているため、日本人が観てもまったく違和感がないだけでなく、日本人でなければ理解できない感情も表現されているように感じられ、作品を一層深いものにしているように思います。

なお本作は日本では17世紀の日本の風景を描くのは困難であるということから台湾で撮影が行われたとのことです。確かに日本では離島以外ではどこへ行っても本当の自然のまま残っているところなどはないでしょうから、これは仕方のないことでしょう。言われてみれば草木の茂り方などがなんとなく南国っぽいかもしれませんが、昔の日本がどうだったかということなど知らないので違和感などはまったくありません。

ところで作品中には重要な場面として何度か踏み絵が出てきます。小学校時代に教科書で習ったものですが、当時も「命がかかっていても踏めないものなのか」というのが疑問でなりませんでした。実は私はキリスト教一家で育ち、今はまったく熱心な信者ではないものの物心付く前から毎週日曜日には教会へ通っていたのですが、ちょっとしたためらいはあったとしても踏めと言われれば踏めると思います。私はきっと信仰というものの捉え方が人とは違うのだろうと思っていますが、果たしてどうなのでしょうか。

それはともかく、今回は久しぶりに良い映画を観たという気がします。「面白かった?」と聞かれると答に困りますが、間違いなく観て良かったです。