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Once Around the World / It Bites

何年経っても好きなので。

今からちょうど30年前、私がまだ高校生だった1988年、東京では音楽中心のFMラジオ局であるJ-WAVEが開局し、それと前後して渋谷ロフトの1階にWAVEという大規模CD/レコード店が開店しました。当時すでに渋谷にはタワーレコードがありましたが、現在の山手線沿いのビルのような大きな店舗ではなく東急ハンズ近くの薄暗いビルにあり、まだ洋楽はちょっとマニアックな雰囲気がありました。そんな状況の中で当時は洋楽中心に一日中音楽を流し続けていたJ-WAVEによって認知度は高まり一般的なものになったのか、タワーレコードもWAVEも連日大変な混雑でしたが、私も足繁く通っていたものです。

ちょうどそんな1988年、イギリスのIt Bitesというプログレッシブ・ポップのバンドがリリースしたOnce Around the Worldというアルバムがあります。私は当時このアルバムをタワーレコードかWAVEかで購入したはずなのですが、当時からとても気に入っていて、今聴いてもその魅力は一切衰えることがありません。イギリスのアルバムチャートで最高43位ということなのでまったく大したヒットでは無かったようなので、このアルバムに偶然巡り合うことができたのは奇跡としか言いようがありません。

Once Around the World

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「プログレッシブ・ポップ」とは一体どういうジャンルなのか、あまりピンとこない人も多いかと思います。プログレッシブ・ロック、いわゆる「プログレ」といえばKing Crimson, Pink Floyd, YES, Genesis, Emerson Lake & Palmerという5つのバンドが「プログレ5大バンド」とされていますが、これらの他にもたくさんのバンドが様々な音楽性を持って活動しているジャンルです。そのわかりやすい特徴は曲の途中でテンポやキーが変わるというところではないかと思っていますが、これはプログレッシブ・ポップにも継がれていて、簡単に言えばプログレッシブ・ロックをちょっとソフトにした感じのものではないかと思います。とは言っても、その境界は非常に曖昧で、プログレッシブ・ロックや普通のロックやポップスともあまり区別はされていないかもしれません。

残念ながらCDではもう新品はかなりプレミアム価格になっていますし、中古でも入手は難しくなっているようです。また、iTunes Storeなどでも配信されていないようです。しかし、YouTubeにアップロードしている人が多数いるようなので、これらで聴いていただくしかないのでしょうか。音楽を言葉で説明するというようなことは私にはできませんので、アーティストの収入にならないのは非常に残念ですが、関心を持った人にはぜひ一度聴いていただきたいと思います。

しかしこのように入手が難しくなってしまうのは、メディアが廃れていくことによって文化が埋もれていってしまうということで、大変残念に思います。もちろん、例えば18世紀に大衆がどのような音楽を聞いていたかというようなことはもうほとんどわからないわけで、それと同じようなこととはいえ、あまりに早いのではないでしょうか。何でもかんでも未来永劫というような訳にはいかないでしょうが、そういう方向にも技術が活用されることを願いたいものです。

Taylor Swift - Red

まだまだ知らない世界がありました。

数ある音楽ジャンルの中でも日本人には馴染みがないものの一つに「カントリー・ミュージック」というものがあります。アメリカでは最も人気が高いものの一つながら他の国ではあまり聴かれていないという、ほぼアメリカ特有といっていいジャンルですが、アメリカでは日本人にとっての演歌以上に老若男女を問わない人気があるようです。これまでの私自身のカントリーのイメージも、口ひげを蓄えた金髪白人オヤジがギターを抱えて唸っている、というようなものだったので、どうして今だに根強い人気があるのかとちょっと不思議に思っていました。しかしそんなステレオタイプなイメージは誤ったものだったようです。

日本の演歌歌手でも若手で活躍している有名な人が何人かいますが、カントリーで言うとTaylor Swiftです。16歳でメジャーデビューを果たして最初のアルバムTaylor SwiftでBillboardのカントリー・アルバム部門で1位となり、2枚目のアルバムFearlessではBollboard 200で1位という快挙を成し遂げ、23歳の現在も乗りに乗っています。また、自分の交際相手や失恋を歌にすることでも知られています。私もこのようなことはだいたい知っていたのですが、実際にはあまり意識して歌を聴いたことがなく、ただ「カントリー」という先入観でなんとなく距離を置いていました。

しかし先日、昨年10月に発売されたアルバムRedの売れ行きも非常に好調で、Amazon.comでのセールのおかげもあってダウンロードランキングで1位になっていたので試しに聴いてみたところ思いの外良かったので、サクッとAmazon MP3で購入し、それ以来かなり頻繁に聴くようになりました。

Red

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実は実際に聴いてみると「これがカントリー?」と思ってしまうほど、曲調はかなりポップで、かつバラエティがあります。これは今回のアルバムでは何人かの共同制作者を迎えているおかげもあるかもしれません。また時折カントリー特有のコブシ回しのようなものが垣間見えることはありますが、Taylorの澄んだ歌声が美しく非常に聴きやすいのではないでしょうか。私はかなり魅入られてしまいました。

歌が好きになると歌っているTaylor自身も気になるものなので、色々調べてみました。180cmの長身でスラっとしていて、特に最近のPVで見ると濃い目のメイクのせいでキツく見えてしまいますが、それ以外の動画で見るとやはり若い女の子らしくキャピキャピした感じのようです。ウェブサイトのAboutでは

I’m easily excited, thrilled, scared, and shocked. I’m 23 now, but I never stopped jumping up and down when something wonderful happens.

と言っていますが、そういうところが男性にはキュートに見えるものです。しかし、10歳の頃から詩を書き始め、11歳でデモテープを制作、学校ではカントリーが好きということで笑われながらも頑張ってきた、という筋の通ったところから芯の強さがあるのは間違いないと言えるでしょう。まあそうでなければこんなトップアーティストになんてなれるわけもありませんね。

ということで、こうなるとぜひ生で聴いてみたくなるものですが、デトロイトにはこの5月に来るそうです。既にチケットはほとんど売れてしまっていますが、なかなか日本には来てくれそうにないので聴きに行っておきたいところです。問題は1人で夜のデトロイトに行くのがちょっと怖いこと…

Mika – The Boy Who Knew Too Much

彼は「本物」だった。

AmazonにしろiTunes Storeにしろ、オンラインのミュージックストアがどんなに便利でも実店舗に敵わないのは「スタッフの顔が見えない」ということではないでしょうか。もちろん店員一人一人のことなど私も知ったことではありませんが、店内に陳列されているCDの脇などに手書きのPOPでちょっとした解説やお勧めの理由などが書いてあると興味を引くこともありますし、全く知らないアーティストのものであってもちょっと聞いてみようかという気になったりするものです。Amazonにはユーザーの購買履歴に対応して自動的におすすめ商品が紹介される機能があって、これはこれでなかなか素晴らしいものだと思いますし、iTunes Storeも様々な企画で紹介していたり、自宅にいながらにして次々視聴できるというのも便利なものですが、手書きPOPにはそれらとは違う味のような捨てがたいものがあります。しかしながら、やはり便利さの引き換えになるものではないということなのか、街からは次々とCDショップが消えていっているというのは残念なことです。

先日、その手書きPOPによるおすすめ情報を入手しに駅前のTower Recordsに行った際、見付けてしまったのがMikaのニューアルバム”The Boy Who Knew Too Much“です。思えば前作”Life In Cartoon Motion“も同じくTower Recordsで見付けたのでした…なんてことは実はすっかり忘れていて、ブログの過去記事を読み直して思い出したのですが。

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この新作は前作からさらに音に磨きがかかっていて、「セカンドアルバム以降の出来が心配にもなってしまいます」などと言っていたのは全くの杞憂だったようです。前作からはかれこれ2年半ほどの間隔となっており、やはりしっかりとした音作りのためにはこれくらいの時間が必要ということなのかもしれません。ファルセットを多用した独特のボーカルと、音楽の魅力の様々な要素を詰め込んだ色鮮やかな楽曲は紛れもなくMikaその人のものであり、聴いていて楽しくなる音楽が健在で非常に嬉しく思います。

また、前作ではアルバムのカバーアートも楽しく素敵なものでしたが、今回も同じタッチの賑やかなデザインになっていて、楽しさ満載のMikaの音楽にピッタリです。これらのデザインはMikaの実姉のデザイナーDaWack、そしてRichard HoggとMika自身によるものなのだそうですが、やはり独特な感性と才能は姉弟に通じるものがあるのでしょうか。

今回のアルバムで私が特に気に入ったのは1曲目We Are Goldenから3曲目Rainまでですが、それ以外のどの曲もそれぞれ良くて捨てがたく、いつもアルバム通しで聴いていますが全く飽きません。最初にGrace Kellyを聴いたときのようなインパクトはないかもしれませんが、このアルバム全体の完成度は前作以上ではないでしょうか。今ちょっと前作を聴いていますが、この時よりも様々な音が重ねられて厚みが増しているような気がします。

ということで、Brit Pop好きにはこのアルバムは間違いなく買いだと思うのですが、来日の予定はないのでしょうか。ライブではまた違った魅力に触れることができそうな気がして、大きなホールよりもむしろライブハウスのようなところで、シンプルな楽器をバックに聴いてみたいところです。こんな時、もしも自分が住んでいるのがイギリスだったら…などと夢想してしまうのですが、おそらくそれ以上に「日本に住んでいてよかった」ということの方が多いような気もするので、短期間なら良くてもイギリス人にはなりきれないのでしょうね。