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あなたの人生の物語

想像力を働かせるのがSFの楽しみ。

先日、居間で家族が見ていたテレビで映画「メッセージ」が紹介されているのを何気なく聞いていて、Amy AdamsやJeremy Rennerが出演しているということでちょっと興味を持ったのですが、この作品はTed Chiang原作のあなたの人生の物語を原作としたものであるとのことでした。映画の公開は5月ということでまだ間があるので、それまでの間に原作を読んでみよう、ということでその場ですぐにKindle版を購入し、読んでみたところこれが凄いものでした。

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というのは、「あなたの人生の物語」という作品自体は短編で、この本は短編集になっているのですが、ここに収められている作品がどれも独特で、素晴らしいものなのでした。ジャンルとしてはSFとされていて、「あなたの人生の物語」は地球に異星人がやって来て…という話なのでまさにSF的な設定になっているのですが、最初に収録されている「バビロンの塔」は旧約聖書に登場するバベルの塔での出来事を描いたものですし、「七十二文字」という作品は「名辞」という秘密の言葉を紙に書いて埋め込むと人形を動かすことができる、という世界の話で、ファンタジー的な世界観も併せ持つ不思議な雰囲気があります。なお、この72文字で人形を動かす、というのはユダヤ教のゴーレムから来ているようです。

私が一番凄いと思ったのは「地獄とは神の不在なり」という作品です。これもまた非常に宗教的なテーマのものなのですが、たびたび地上に姿を現す天使が降臨すると奇跡的治癒により救われる人がいる一方、その光を浴びることによって命を落としたり目を失ったりという目にも遭うという凄まじい世界が舞台となっています。この作品には作者の宗教観が反映されているようですが、読者も宗教を信じるということについて考えさせられるのではないでしょうか。

このようにSFとしては非常にユニークな世界観の作品が多いTed Chiangですが、なんとなく以前似たような作品を読んだことがあると思ったら「ここがウィネトカなら、きみはジュディ」という短編集に収録されていた「商人と錬金術師の門」が彼の作品だったのでした。たしかにこの作品もとても特徴的で味のある作品でした。

ということでとても面白かったのでTed Chiangの作品をもっと読んでみたいと思ったのですが、実は彼は非常に寡作で、これまでに発表されている作品が20に満たないとのことで、これ以上はしばらく読むことができそうにありません。本業はテクニカルライターだとのことですが、これだけ質の高い作品をコンスタントに出し続けるというのは難しいのでしょう。質の低い作品がいくつあっても評価を落とすだけですから、これも仕方のないことです。いつかまた新しい作品に出会えることを楽しみに待ちますが、一方でこの短編集に収められている作品もまた読み返すことで新しい理解が得られそうなのでまだしばらく楽しんでみたいと思います。

本日のバーガー

お腹が空いてきます。

先日の帰省の際、「ローグ・ワン」を観たあと次男と池袋をウロウロしていたのですが、
マンガとライトノベルの専門店である芳林堂書店コミックプラザに行った時にレジのそばで見つけたのが「本日のバーガー」というマンガでした。日頃はマンガを買うということはほとんどない私ですが、ハンバーガーを題材にしているとあっては無視できず、その場にあった第1巻と第2巻を購入し、とても面白かったので帰宅後にすでに発売されていた第3巻と、今秋発売予定となっていた第4巻をAmazonで注文し、それがこの月曜日に届いたところです。

この作品を簡単にいえば、食品商社マンだった主人公が会社を辞めてハンバーガー専門店を開き、自分の抱負な知識と経験をもとに降りかかる様々な問題を特別な「本日のバーガー」で鮮やかに解決する、というような感じでしょうか。基本的にはビーフパティをバンズで挟んだのがハンバーガーと呼ばれるものですが、実際には素材や調理法の組み合わせで無限のバリエーションがあり、それを紹介してくれるのが私にはとても楽しいです。

InstagramやTwitter、Facebookなどで私の写真を見ている人には、私が最近カレーばかりを食べて回っているのはおわかりだと思います。この、日本人にとってのカレーがアメリカ人にとって何に相当するかといえばやはりハンバーガーです。アメリカ赴任中は自宅や職場近辺でハンバーガーの食べられる店を探しては食べて回っていたのですが、日本のカレーが店によって様々であるように、アメリカのハンバーガーも店ごとにそれぞれ特徴を持っていて、まったく飽きることがありませんでした。その間に食べて美味しかったバーガーのいくつかが作品中で紹介されているのも嬉しいです。

もともと週刊漫画TIMESで連載されている作品のようですが、こういった連載漫画の良いところは一話である程度話が完結していて、短編小説集を読むように小気味よくいろいろな話題に触れられるということですね。次の号まで焦らされるのがせっかちな私には耐えられなかったというのもあって、マンガ雑誌は子供の頃からほとんど買ってこなかったのですが、一話完結ものであれば悪くないように思います。まあそんなことはわかりきったことですが、単行本にしてもまだ完結していない作品の場合は次の号を待たされることになるのがやっぱり辛いです。

それはともかく、最近は日本にもいわゆるグルメバーガーの店がたくさんできてきましたが、それが一過性のブームではなく日本の多彩な食文化の一端として定着してくれることを願いたいと思います。この作品もその一助となるとまた嬉しいです。ちなみに写真は今日食べてきた西宮市エスケールのチリビーンズバーガーですが、ボリュームたっぷりでとても美味しかったです。

君の名は。

色々無理はあるような気がしますが、それはそれで。

今年の夏休みの終わり頃である8月26日に公開されたアニメ映画「君の名は。」が大ヒットしていて、1か月経たないうちに興行収入が100億円を超えたということがニュースになりました。私の周辺では大ヒットしたように見えた「シン・ゴジラ」でも10月11日現在で77億円で歴代66位なのに対し、すでに歴代11位の145億円となっているのですからいかに幅広い支持を得ているということかと思います。ちなみに、この日本国内のランキングで歴代1位となっているのは「千と千尋の神隠し」で、このランキングの中でもつい先日観た「タイタニック」が2位につけていますが、7位に「踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!」が入っていて、この作品がここまでヒットしたとは知りませんでした。このシリーズにはまったく関心がなかったのですが、観ておかなければいけないかもしれないと思ってしまいました。

それはさておき、これだけ話題になっていると普段洋画ばかり観ている私でも気になってしまいます。幸い、Amazonでこの映画の小説版である「小説 君の名は。」のKindle版が安くなっていたので買って読んでみると思いの外面白くて、その後で本作のサイドストーリーである「君の名は。 Another Side: Earthbound」というのも読んでみてすっかりこの作品の世界に浸かってしまいました。となるともう映画も観ないでいるわけにいかず、ちょうど今週定期テストが終わったばかりの次男を誘うと1も2もなく二つ返事で行くというので、昨晩のレイトショーで観に行ってきました。

小説 君の名は。 (角川文庫)

(2016-10-16現在)

君の名は。 Another Side:Earthbound (角川スニーカー文庫)

(2016-10-16現在)

映画の内容はほぼ完全に小説版と同じなので私はストーリーを把握している状態で観たことになりますが、それでもとても楽しむことができました。文章を読みながら自分が頭の中に描いた光景が、映像により補完されて整理されていくというプロセスはなかなか気持ちのいいものだと思うので、展開を知らないまま映画を観て新鮮な驚きを得るというのももちろん楽しいものですが、それは小説を読むときに体験できているのでこれはこれで私は好きです。

上映直後の次男の反応はというと、これまでに観た映画の中で2番目に感動した、何度も観る人の気持ちがわかる、何度繰り返しても楽しめそうだ、とのことでした。もちろんこの「2番目」というのが気になったので1番目は何なのかと聞いてみると、「HACHI 約束の犬」だとのことで、渡米間もないころに英会話の先生に英語で映画を観てみろと言われて観たところ、何かが彼の琴線に触れたようです。ともあれ、せっかく連れて行ったからには大変楽しんでもらえて嬉しいですね。

しかし、これだけ多くの人に受け入れられている作品をブログなどで公然と批判する人もいます。もちろん面白いと感じるかどうかは個人により違いますし、それを表現するのも自由です。しかし、文章の端々から「自分はこの程度で楽しめる凡人とは違う」という無意味な優越感が垣間見えてしまう人もいて、そういう人には自分には面白さを見つけることができなかったと恥じてもらってもいいのではないかと思ってしまいます。「展開が都合良すぎる」というのは私も感じないでもありませんが、そういうことにしておけばいいと思いますし、「説明されていないしわかるわけがない」というのはすべて説明されなければわからない想像力の不足、というより想像することを楽しむことができないのが哀れにも思えてしまいます。まあいいんですけどね、自由ですから。

実は色々とツメの甘いところは私も気になりはしましたが、そんな完璧な映画ばかりではありません。特にSF的な要素があると現実とは違うのでどこかしら破綻してしまうものですが、それらを許容しながら楽しむという寛容さを持てるかどうかが作品を楽しめるかどうかの違いなのではないでしょうか。せっかくお金を出して映画を観るのですから、つまらなかったと思うより面白かったと感じられる方がお得ですよね。