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QLine

きれいなうちに乗ってみたい。

アメリカでは公共交通機関で満足に移動できるのはニューヨーク、シカゴ、サンフランシスコといった数えるほどの大都市だけで、その他の地域では日本に住んでいる人には想像できないほどの車社会になっています。しかし、実は第二次世界大戦の頃まではそこまでではなく、鉄道網がそれなりに整備されていて、各都市には路面電車などが走っていたのですが、長距離の移動は飛行機に、近距離は自家用車に置き換えられてしまったのでした。

アメリカのモータリゼーションの中心地であるデトロイトもその例外ではなく、1863年から1956年までの100年弱の間、市内を路面電車が走っていたとのことです。結局それはバスによって置き換えられることになってしまったのですが、終焉から50年後に復活が検討され始め、それからさらに11年後の今年、つい先週末にQLineという愛称で再び走り始めることとなったのでした。

工事は私が駐在している2013年末頃から始まっていたので、帰国までに完成して乗ることができないだろうかと思っていたもののそれは叶わなかったのですが、Twitterの公式アカウントなどで状況を逐次確認しながら楽しみに待っていて、ようやく晴れの日を迎えたということでめでたく思っているところです。最初の週は無料で乗車できるということだったので市内も賑わったのではないかと思いますが、復活しつつあるデトロイトの街にまた明るい話題となってくれているようです。

路線はミシガン州の州道1号線の一部でもあるWoodward Avenue上のほぼ真っすぐの路線であまり面白みのあるものではありませんが、利用者が多くなれば路線の延長や追加も検討されるのではないでしょうか。悪名高いデトロイトの中でも比較的治安の良い地区を走っているのはもちろんですが、ダウンタウン中心部からの5kmほどの沿線にはDetroit Tigersの本拠地Comerica Park、来シーズンからDetroit Red WingsとDetroit Pistonsの本拠地となるLittle Caesars Arenaがあり、Detroit LionsのFord Fieldもすぐ近くで、さらにデトロイト美術館の前も通るようになっています。Amtrakの駅にも接しているので、鉄道の利便性も上がるでしょう。

料金は3時間以内$1.50、一日$3.00ということなので、気軽に利用できるのではないでしょうか。私が住んでいたアナーバーのバス料金も1回$1.50でしたが、乗り換えは1回のみ、一日券は$4.50だったのでそれよりは安価です。なお、チケットは電停の端末の他にiOSかAndroidのアプリやウェブでも購入できるということで、こういうところがアメリカの先進的で柔軟なところだと思います。

車両はアメリカのBrookvilleという会社のLiberty Modern Streetcarsというものが6編成購入されたようです。リチウムイオン電池を搭載していて、架線のない区間も走行できるようになっている先進的なシステムにより、路線の60%の区間は架線が設置されていないとのことです。アメリカ人によるアメリカのための路面電車として売っているようですが、各地で見直されてきているのでそれなりの市場規模があるのでしょうか。

ということで、私はまだ写真や動画でしか見ていないので、早くこの目で見て、できれば乗ってみたいと思っているのですが、出張の間にデトロイトのダウンタウンへ行くというのは難しいかもしれません。

Amtrak – Silver Meteor

時間と気持ちに余裕のある人向け。

アメリカではどこへ行くにも自動車で、ちょっと遠くへとなると途端に距離が長くなってしまうので飛行機を使うのが一般的になってしまい、長距離移動手段としての鉄道は一般的ではありません。鉄道が引かれていないわけではなく、あちらこちらに踏切があったりはするのですが、見かける列車は長大編成の貨物ばかりで、運悪く踏切に引っかかると長時間足止めをくらい散々な思いをしたりします。といっても、私が引っかかったのもこの1年弱で2回だけで、しかもそのうち1回はわずか数両の編成だったのですぐに開放されたのですが。

それはさておき、今回年末の長期連休でフロリダに来ているのですが、あまりオーランドに長いこといてもテーマパークの連続で疲れたり飽きたりしてしまってはもったいないですし、第一お金がかかってしかたがないので途中でもっとのんびり出来るところへと移動しようと考えました。ただ、そこで飛行機やレンタカーで移動するだけでは面白く無いなあと思案していたところ、かねてから乗ってみたいと思っていたAmtrakの路線がちょうどよい具合にあることが分かり、早速予約してみたのでした。予約はAmtrakのウェブサイトで簡単に行うことができて、送られてくるPDFファイルを印刷しておけばそれで乗車することができます。

荷物を預ける場合は発車時刻の45分前までにチェックインしろということなので、ホテルからオーランドの駅へタクシーで移動し、13:10の発車に対し12時前に到着しました。しかし、チェックインといっても何か手続きが必要というわけではなく拍子抜けしてしまいましたが、とりあえずスーツケースを預け、駅前のタイ料理店Thai Stopで昼食をとって待つことにしました。ちなみにここは店内も清潔感があり、料理もなかなかで、もう二度と来ることはないだろうというのが残念でした。

列車の到着時刻が近づいてくるとプラットフォームに列ができはじめたので私達も並びました。列車は10分ほど遅れて到着しましたが、これは全く想定の範囲内です。決まった改札口というものはないのですが、ロープで導入された先に車掌が立ち、iPhoneにバーコードリーダを付けたような機器でチケットのQRコードを読み取り、どこから列車に乗り込むかが指示されました。Amtrakの長距離路線は座席指定制なのですが、まさに乗車するその時まで自分の座席が何号車の何番なのかは分からず、というか決まっておらず、乗り込む直前に車掌が空いている席に割り当てていくような形になっています。しかもそれをマス目の入った紙に記入していくというアナログなものです。改札の車掌に指示された先に、その席を割り当てる役目の車掌がいるのです。座席指定はシステムの対応が必要なので投資対効果の問題があるのかもしれませんが、改札なんて予め駅員が対応していればすぐに乗り込めるのに、のんびりしたものです。

さて、乗降口は数箇所しか開けないので乗り降りにはかなりの時間がかかっていましたが、なんとかほぼ予定通りの停車時間15分で発車できたようです。私達が今回乗ったのはSilver Meteorという列車で、ニューヨークからフロリダ州マイアミまでの路線のごく一部です。全線では28時間かかるので寝台車も連結されていますが、私たちは5時間ほどの乗車なのでCoach Classという一般の座席です。機材がちょっと老朽化しており、お世辞にもきれいとはいえない車内ですが、座席は横4列で新幹線普通車よりもかなりゆったりしていますし、前後の間隔も広く、フットレスト、レッグレストも完備、AC電源もありました。短中距離路線では3列のBusiness Classもあるのですが、Coach Classでも十分快適です。

席に付くと再び降車駅を聞かれ、その駅の略称を手書きした札を頭上の棚の前に差し込んでいくので、これは何のためなのだろうと思っていたのですが、途中の駅に近づいたところでようやくその意味が分かりました。Amtrakの列車は1日に数本しか走っていないので、寝ていて乗り過ごしたりすると大変なことになるので、各乗客の降車駅が近づくと車掌が教えに来てくれるのです。札はそのための目印というわけでした。親切なサービスですが、新幹線ほど混み合っていたらとてもやってられないでしょうね。

路線はほとんど単線なので、途中で上下線の行き違いのための待機がありましたが、日本の鉄道のように時間に正確に運行されていれば待ち時間もわずかで済むのでしょうが、Amtrakではせっかくそこまでそれなりのスピードを出して走っていたのに、15分ほども停車していました。そんなことがあっても私達の目的地フォート・ローダーデールにはほぼ予定の時刻に到着してしまったのが不思議、と思いきや、実は発車予定時刻に到着しただけで、積荷を下ろすのに時間がかかって結局発車は15分以上遅れてしまっていたのでした。預入手荷物が一度に台車に載らなかったので、荷物を客に配って台車を空にしてからまた列車から降ろしてくる、という何とも悠長なことをやっているのだから驚きます。最初から台車に荷物を載せた状態で列車に積んでおいて、駅では台車ごと積み替えるようにしたらすぐに終わるのに、なんて考えてしまうのですが、それでは駅員の仕事をなくしてしまうのでダメなのでしょうか。

そんなこんなで何につけてものんびりしているので、暇のある人にしかお勧めできない感じです。しかし、のんびりした旅をしたいという人にはうってつけと言えるのかもしれません。私自身は結構気に入ってしまったので、今度はシカゴからシアトルまでのEmpire Builderなんていう列車に乗ってみたいなあなんて考えています。これは2泊3日の46時間もの路線になるので当然寝台を取る必要がありますが、やはり数が限られているので夏休みのためには今から予約しておかないといけないようです。そんなに先の予定はなかなか立たないのですが…

特急はまかぜで蟹三昧温泉旅行

日本の冬を満喫。

先日、妻と二人で大阪に行く用事があったとき、駅で見かけたのが「はまかぜ」という名の特急列車でした。JR大阪駅から神戸線を通って姫路まで行き、そこでスイッチバックして播但線に入って、和田山から山陰本線で香住、浜坂、鳥取に至る路線を走っているものですが、播但線の一部区間が未電化であるためキハ189系という気動車が使用されています。この気動車というところが何とも旅情を誘うもので、さらに蟹をいっぱい食べて温泉に浸かるなんていいんじゃないか、とイメージが膨らんでしまったため、成人の日の連休を使って家族で行ってきてしまいました。

キハ189系という車両は2010年の11月に営業運転が始まったばかりの最新式の気動車ですから、車体もまだ新しく綺麗だったので非常に快適な旅行になりました。ディーゼルエンジンの音も発進加速時以外はあまり気にならず、不快な振動なども一切ありません。一方、車内は中高年女性の賑やかな話し声が響き渡り、列車が走り始めるやいなやビールを開けてすっかり宴会ムードでした。中には途中下車する人もいますが、この季節はほとんどが蟹を食べに行く人でしょうから致し方ありません。

そうこうするうちに目的地の城崎温泉駅まで乗車した姫路駅からおよそ2時間で到着し、そこから徒歩7,8分で到着した宿は「お宿 白山」というところです。もちろん宿からは送迎のサービスも出ているのですが、大した距離ではないので散歩がてら歩いても全く苦ではありませんでした。こちらの宿は「旅の窓口」という独立したサービスだった頃から愛用している楽天トラベルで予約したのですが、楽天アワードなるものを受賞しているということで、口コミ情報もあわせてそのサービスの質の高さに期待して予約したものでした。

今回は奮発して一人につきカニが3匹強も出てくるという豪華な料理を予約していて、しかも子供も料金は7掛けなのに出てくる量は同じということで本当に食べきれるかが心配なほどのカニづくしコースで大変期待していました。しかし、部屋に通してもらって仲居さんの説明を聞いてみると、すべて食べ終わるまでに過去最も早かった人で2時間強、長い人は4時間くらいかかってしまうという予想を超えたコースでした。4時間となると6時に食べ始めても10時までかかってしまうわけですから、本当にそれだけで寝る時間になってしまうという恐ろしいものでした。

というわけで食事の前に風呂を済ませておいたのですが、こちらは風呂も工夫が凝らされていて、旅館内にある5つの風呂場にそれぞれ鍵をかけて貸切風呂として使うことができるようになっています。そしてその風呂の空き具合は廊下などにリアルタイムに表示されるようになっていて、ランプが点いているときは空いているということになっています。ただ、これも集中する時間帯は空いたかどうかを何度も見に行くことになってしまい、落ち着かないものではありましたが、既存の設備をうまく活かした面白い試みではないでしょうか。また洗い場には畳が敷かれていて、冷たかったり滑りやすかったりということがなくなかなか快適でした。

そして風呂を上がってみるとすでに仲居さんが配膳を始めていたのですが、全部で揃ってみるとなかなか壮観でした。お品書きでは、

1、冬船盛り(0円カニ刺し、雲丹軍艦巻き、カニ握り、甘エビ、さざえ等)
2、カニスキ大鍋2L半匹
3、800g津居山カニ花咲き作り【2人で足5本】
4、紅香住カニ1匹
5、650gg茹でカニ2人で1匹
6、カニ天足3本
7、焼ガ二半丁
8、但馬牛すき小鍋
9、日本一卵の雑炊セット
10、東さんの手作りプリン

ということになっていましたが、茹でカニが2皿も出てきてしまうとは思いませんでした。しかしこのどれもがとても美味しく、身をほじるのが面倒にはなっても食べ飽きてしまうようなことはありません。カニスキの後の雑炊まで、全て平らげても「もう当分カニは要らない」なんていうことにはなりませんでした。まあさすがに翌日に食べようとは思いませんでしたけどね。最後のプリンもこの宿のオリジナルのようなのですが、非常にクリーミーで美味しく、カニの後にプリンという意外さも全く問題になりませんでした。

というように私たちは大満足だったのですが、残念なのが次男です。やはり大人と同じ量を食べるのは無理で、茹でカニ一皿と焼ガニをまるまる残してしまったのでした。さすがに私たちもこれを食べてあげることも出来ず、申し訳なく思いながら下げてもらったのですが、これだけでも数千円分にはなるのではないかと思うと非常にもったいない限りです。こんな事なら一つ下のランクにしておくべきだったかもしれませんが、そうすると花咲き作りが無くなってしまうので、それもまた惜しいですからね。

翌日は昼過ぎの列車だったのでそれまでの時間を外湯に浸かってみたりして過ごしましたが、たまにはこういう旅もいいものだと思いました。目的地でもあちこち動きまわるような所では車の方が便利ですが、こういう温泉でのんびりするような時には列車の方が楽ちんですね。帰りの列車でも居眠りすることが出来ましたし、ただ乗っていれば着くというのはやはり楽です。