プラストミック - 肺の血管一昨日の夕方のニュースを見ていたところ、神戸で開催されている「人体の不思議展」が紹介されていて、その様子を見て長男がかなり興味を示し行きたいというので早速昨日家族で見に行ってきました。ちょうど先日観た映画「カジノ・ロワイヤル」のワンシーンにも登場していて気になっていたのですが、こんな近くで偶然にも今開催されているとは全く知りませんでした。

本物の人間の体をプラストミックまたはプラスティネーションと呼ばれる技術により、体内の水分と脂肪分をプラスティックなどの合成樹脂に置き換え固定し、見た目だけでなく細胞組織までほぼそのまま保った形で腐敗などのない標本としてしまったものが展示されているものです。実際に展示されているのはこれらの標本を切開したり、スライスしたり、血管や神経系など特定の組織以外を取り除いたり様々な加工が施されたもので、一般人は普段全く知ることのない人体の構造を「ほんもの」で見ることができます。また手術や解剖の経験のある医療に携わる人にとっても、血で隠されたり重みで潰れてしまったりせずにつぶさに見ることができるのは価値のあることらしく、昨日も医大生のグループが見学に来ていたようです。

本当は私は色々想像してしまうので血や刃物も苦手で、映画の残虐シーンなども辛くて見ていられないのですが、今回は学術的な価値のある貴重な機会ということで見てきたわけですが、明るい会場でたくさんの人と一緒に観たためもあるかもしれませんが、グロテスクな感じは全くありませんでした。しかし、広いとは言えない会場に並んだ標本の数は限られていて1400円という入場料は高いようにも感じてしまうものの、見終わったときには満足感とは違う何かでもうお腹いっぱいでした。

一つ一つの標本はさすがに本物なのでかなりの説得力があり、模型とは違って細部まで細かく見ることができるので、絵や写真でしか知らなかった体の内部の立体的な構造を知ることができたのは貴重な体験でした。子供にとっては喫煙者と非喫煙者の肺の比較が印象的だったようで、禁煙教育にも役立つのかもしれません。これも写真はクリニックのポスターや図鑑などで見たことがありますが、やはり実物には説得力があります。

それにしても気になるのは標本になっている人のことですが、

本展で展示されているプラストミック人体標本は、すべて生前からの意思に基づく献体によって提供されたものです。

との表示があります。しかし、当初は研究者のいたドイツの人のものが多かったようなのですが、この展示が世界的に行われるようになって数多くの標本が必要になってから、最近の標本はほとんど中国人のものばかりだということなのが気になります。展示がどのようなものなのかを実際に見ることもできないような経済的に貧しい人は、献体することでそれなりの対価が約束されるとなれば、家族のために自ら進んで…というのが目に浮かぶようです。今のうちはまだいいのですが、この「人体の不思議展」も純粋な学術目的とは言えなくなりつつあるような気がして、ある時期から「遺体を見せ物にするな」というような批判の声も高まるようになるのではないかと思いますが、科学博物館の常設展示にするなどしてイベント的な要素をなくしてしまう必要があるのかもしれません。今の形は多くの人に見てもらうということではいいのかもしれませんが…

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