Lost In Translation先日、マリー・アントワネットの映画を観る前からなぜサントラを買ったのかということで「ソフィア・コッポラの映画って音楽がいいよね」という話をしていて、良かったですよということで後輩Mが貸してくれたのがSofia Coppolaの出世作「ロスト・イン・トランスレーション」です。ちょうどマリー・アントワネットの前に押さえておきたかった映画なので、渡りに船とばかりに喜んで借りて観てみました。

ロスト・イン・トランスレーション
東北新社 (2004/12/03)
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サントリーウィスキーのCM撮影のために単身来日した映画俳優Bobと、写真家の夫と共にやってきたもの仕事に忙しい夫にホテルに置いてきぼりにされている若妻Charlotteという孤独な二人のアメリカ人が主人公なのですが、作品の舞台となっているのは全編日本で、ごく一部京都や道中の新幹線での撮影もあるもののほとんどが東京都内となっています。しかも、日本以外での公開時にも日本語の台詞はそのまま字幕も無しで上映されているということらしく、それが日本という未知の異質な国にやってきたアメリカ人の孤独さを強調する効果を持っているようです。日本語の台詞をそのまま理解できる私たちと、そうでない外国人とではこの作品のとらえ方は若干異なるのではないかという気もしますが、ほとんどデタラメな通訳などから私は私なりに受け取ることができたように思います。

Bob役はBill Murrayですが、ハリウッド俳優という役の割には嫌に地味な感じです。日本にやってきて萎縮してしまっているから、ということなのでしょうか。私はどうしてもGhost Bustersの印象が強くてコメディ俳優のように見えてしまい困ったのですが、実際ちょっとしたジョークを放つ様などはかなりしっくり来ました。

Charlotte役は当時ほとんど無名だったというScarlett Johanssonです。とは言っても芸歴は長く子供の頃からの経験があるので、かなりの好演だったのではないかと思います。あまりはっきりとは感情を表に出さない役ですが、それでもしっかりと伝わってくるものはありましたし、何よりキュートでした。アイランドでは今一つパッとしない感じでしたが、それは脚本や演出の問題だったのかもしれません。この作品でScarlettのことをちょっと見直してしまいました。

この作品の雰囲気はSofia Coppolaのデビュー作ヴァージン・スーサイズによく似たところがあるように感じました。淡々としたペースで事柄を描き、観ている側に色々考えさせるようなところがあるのは共通していて、それがSofiaの持ち味というところでしょうか。想像力をかき立てられるようなところがあるのが面白いような気もしますが、それを受け入れられない人には何を描きたいのかがわからず評価されないかもしれません。

まあそれにしても外国人の目から見るとやはり日本というのは島国であるせいもあるのか異質な国ですね。ネオンがきらびやかな新宿や渋谷の雑踏はかなり厳しいものがあるような気がしますが、逆に雄大な富士山をバックに静かにゴルフをプレーするシーンや京都の寺などは日本ならではの美しさがあり、外国人にも魅力的に映るのではないでしょうか。後者を見るまでは「こんな国に行くものか」というような感じですが、京都の美しさを見るとそれも忘れてしまうかもしれません。

そういえば私が一つ違和感を覚えたのは、夕方のはずなのに首都高速箱崎ジャンクションを走るクルマがかなりまばらであることです。撮影のために首都高を封鎖するということも考えづらいので、あれはおそらく明け方に撮ったものなのでしょうね。箱崎といえば慢性的に混む渋滞のメッカですから、それにしてもクルマの数が少ないのですが…私は10年以上通っていませんが、今でもそんなに変わっていませんよね?