バルサン氷殺ジェット使い方が悪いだけなのに…

知らないうちに家の中に忍び込む様々な虫には誰もが嫌な思いをしたことがあるかと思いますが、我が家にも年に数回ムカデが侵入するので、春から夏の終わり頃までの暖かい季節は家族でビクビクしながら暮らしているような状況です。その他にも胴の太さが2cm以上あるような巨大なクモが出現したりしますが、特に害はありませんしムカデに比べれば可愛いものなのでこちらは誰も恐れてはいません。またゴキブリがたまに出てくるのはどうしようもないことでしょうか。

そんな虫に関する話を先日帰省中に祖母の家でしていたときに、「あれがいいらしいわよ」と叔母も言っていたのがライオンの「バルサン飛ぶ虫/這う虫氷殺ジェット」でした。

日本初、殺虫成分を一切使わずに「マイナス40度の強力冷却」で瞬時に不快害虫を退治する家庭用殺虫スプレー

ということで家の中どこでも安心して使える…というはずだったのですが、やはり一般の人には可燃性ガスが使用されているということに気付けないらしく、火のそばで使って引火して火傷を負うなどの事故が相次いだということで、残念ながら「安全を最優先して自主回収」ということになってしまいました。

オゾン層の破壊と温室効果が環境問題として大きく取り上げられるようになる前は、噴射剤として不燃性のフロンが使われることが多かったわけですが、最近ではほとんどのスプレー類でLPGが使われているのではないでしょうか。LPGは主に燃料に使われてきたものですから、良く燃えるのは当然のことです。また氷殺ジェットではこのLPGに加えてイソペンタンを使用し、LPGの主成分であるブタンプロパンとの沸点の違いを利用して効果を高めていたようなのですが、このイソペンタンというものが非常に引火性の高い物質であったということがさらに危険なものとしてしまっていたようです。

当然のことながら製品パッケージにはしつこいほどに「火気と高温に注意」ということが書かれているはずなのですが、いきなり害虫に遭遇してパニック状態に近い人がそれに気付くことができるかというのは難しいかもしれません。燃えるとは思っていなかった、というよりも気付いたときには後の祭り、ということも実際には多いのではないでしょうか。これを使う側の不注意と片付けてしまうのはちょっと問題がありますので、やはり自主回収というのは仕方のない決断なのでしょう。

「殺虫成分を使わない殺虫スプレー」というのはかなり画期的な商品でメーカー側はしてやったり、ユーザー側は大喜びで飛びつく、という状態だったのではないかと思われますが、実用上の問題が隠されていたということになります。どんなに優れた発明であったとしても、一般消費者向けに広く売り出すためには誰もが安心して使えるものでなくてはならず、とても難しいものです。しかし、この件に関してライオンはそれなりの経済的損失を被ることにはなるかとは思いますが、生活に密着した製品を提供する企業として責任のある対応を適切なタイミングで取ったということで、企業イメージは向上することになるのではないでしょうか。近頃企業の隠蔽体質に辟易しているところでしたから、こういうことがあると逆に清々しくさえ感じられませんか。