Active! mailユーザ不在。

私が会社に入った頃には電話機のリレーか何かの微かな音を聴きとって、呼び出し音が鳴り始める前に誰よりも早く受話器を取ってしまう電話取りの達人のような人がいたものですが、最近は電話がかかってくるということもめっきり減ってしまい、事務所全体が静かになって活気がなくなったかのような気がしてしまいます。しかし実際には電話やファクシミリに頼っていた頃に比べると社内外との連絡はより密に、またタイムリーに交されるようになっているのではないでしょうか。

それはやはり電子メールの功績によるものです。通信相手の時間的都合を特に考える必要なく送りつけることができ、また簡単に同報通知ができて非常に便利なものですが、それであるがゆえに必要以上の情報が必要以上の相手に相手に送られて読み手の負担を高くしているとともに、情報漏洩のリスクを高めることにもなっています。Winny暴露ウィルスによる機密漏洩が社会問題になって以来、私の勤務先でも様々な対策が行われてきましたが、今回その一環としてメールシステムの変更が行われました。

これまでかれこれ10年以上になるかと思いますが、事業所内のメールシステムとしてはMicrosoft ExchangeOutlookの組み合わせが利用されてきました。私自身マイクロソフト嫌いということもあって、スレッドに対応していないなど気に入らないことも多々あったのですが、私に選ぶ権利がない以上使い続けるしかありませんでした。そもそも、Exchangeというのは閉鎖空間でのメッセージ処理システムでしかなく、それがインターネットに繋がっているというだけでインターネットメールそのものではないのですよね。インターネット標準を利用せずなんでそんなことにするのか私にはさっぱり理解できなかったのですが、システム管理者がマイクロソフトの言いなりになっていたのでなければ管理側(会社)に都合の良い仕組みがあるのでしょう。

それが今回、きっと本当の理由は他にあるのだと信じていますが、「クライアントPCに情報を保管させずサーバ側で管理する」という機密管理の名目でウェブメールに変更され、利用されることになったシステムがトランスウェアという会社の「Active! mail」という製品です。「累計900万アカウントの導入実績」と謳われており、日本の製品なのにかなりのユーザ数に驚いてしまいますが、主な導入先は大学というユーザの入れ替わりの激しい所のようなのでさもありなんという感じです。職場のK君の大学もActive! mailだったそうですが、全く利用しなかったので忘れていたというほどのものです。

この製品は電子メールとしては基本的な昨日は一通り揃っているようなのですが、どうもセンスが感じられません。「AjaxやDHTMLを活用」と言っているとおり、ドラッグアンドドロップでメールをフォルダに移動することができたり、新着メールを通知したりということはできるのですが、日頃Gmailを使っている私には見た目も使い勝手も見劣りしてしまいます。どうも痒いところに手が届かないのです。また、製品自体にはスマートフォンなどからのアクセスなどもできるようですが、会社側の管理に都合の悪いそういう機能はもちろん使えないようになっています。

さらに今回、私は早速出張先からVPNでアクセスして使用したのですが、そのレスポンスの悪さには閉口します。閲覧したいメールを選択してからその内容が表示されるまでに5秒待たされ、返信しようとボタンを押してから実際にメッセージを入力できるようになるまで1分以上待たされました。もちろん製品自体の問題だけでなく、運用環境の問題も大きいでしょうが、少なくともExchange+Outlookの時にはなかったことです。また利用出来るウェブブラウザがInternet Explorerのみということも大きな問題かもしれません。まだIE6なんていう信じられないものを使っている人も多いですし。

私以外の人からも不満の声は上がっているのですが、どうもやりきれないのはユーザにとっては移行に際して面倒な作業を強いられるだけでメリットが全く感じられないということでしょう。震災後でまだ落ち着いていないこの時期に何故というのもありますし、こんなシステムを選んだのが誰なのかは知りませんが、この強引さは上層部からも批判されるのではないでしょうか。まあ一介の従業員としては上が決めたことには従わざるを得ないわけですが… 本来やりたかったことはIMAPで出来るんじゃないかと思うんですけどね。