Inheritance全部続けて読んだ方がのめり込めます。

Christopher Paoliniの処女作にしてベストセラーの「ドラゴンライダー」シリーズは当初3部作の予定だったものが「著者の構想があまりにふくらんだため」ということで4部作になってしまったのですが、3巻目「ブリジンガー 炎に誓う絆」が出てからなかなか次が出てこないため、私もすっかり忘れてしまっていました。しかし先日、こちら(アメリカ)の書店で原書”Inheritance“が発売され棚に並んでいるのを見かけて思い出し、いそいそと調べてみると日本語版「インヘリタンス 果てなき旅(上巻)(下巻)」ももう少しで発売されるということだったため早速予約しておきました。それから実際に発売されるまでもひと月以上あったため非常に待ち遠しく感じましたが、ようやく手にすることができました。

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原書は1冊なのに日本語訳すると2冊になってしまい、値段も1冊の時の2倍になってしまうというのは2作目以来のことで、相変わらず納得いきませんが仕方ありません。また残念なのが表紙デザインです。原書ではドラゴンの顔に書名と著者名だけなのに、日本語版ではゴチャゴチャと不要な文字がドラゴンに被さってしまって、非常にもったいないことになっています。ドラゴンの絵は新しく書き下ろしているようなのに、どうしてこうなってしまうのでしょうか。

本書が届いてから私もすぐに読み始めたのですが、最初はなかなかページが進みませんでした。というのも、前作を読んでから3年以上経ってしまっているため、内容をほとんど覚えておらずまるで訳がわからなかったのです。仕方がないので第1作目の「エラゴン 遺志を継ぐ者」から読み直すことにしたのですが、するとまるで初めて読んだかのように何も覚えておらず、新しい気持ちでまた楽しむことができました。前作までは最初から読み直すようなことはしていませんでしたが、続けて読むことでそれぞれの間の繋がりもよく分かってさらに楽しめるようです。また、暇を惜しんで読んでいる私を見て興味を持ったのか長男も読み始め、夢中になっているようです。

最終巻となる本作ではついに宿敵ガルバトリックスと対決することになるわけですが、これは思っていたよりもあっけなく終わってしまいます。まあ、高度な魔法の力を持つ者同士の対決でありあまり派手な戦いになるとは思えないので、ダラダラしてしまうよりはいいかもしれません。しかし、むしろ決着が着いてからの後始末が長いことの方が気になってしまいました。取り残した伏線を回収しなければならないと思ったのでしょうが、「あれはどうなったんだ」と思うような作品もままある中でのこれは著者の真面目さなのかもしれません。

本作でエラゴンの物語は落着というところですが、続編シリーズを作ることも十分可能な終わり方になっているのではないでしょうか。また、本シリーズの登場人物の他の誰かを主人公に据えた外伝はいくらでも書くことができそうです。何しろ何百年もの寿命を持つドラゴンライダーのうち、本シリーズはたった一年ほどの物語です。ぜひこのアラゲイジアの世界を広げてくれることを楽しみに待ちたいと思いますが、問題は作者の筆が遅そうなことですね…

また、映画化にも期待したいところです。映像表現としては戦闘アクションシーンよりも魔法をどう描くかというところが難しいような気がしますが、きっと才能のある人が何とかしてくれることでしょう。1巻目を原作とした映画「エラゴン 遺志を継ぐ者」は駄作に終わってしまったので、出来ればまた最初から作り直してもらえると嬉しいのですが、それは無理でしょうか。1作目の失敗のせいで止まってしまっているのでしょうが、原作がこれだけ売れているのですからしっかりした映画を作れば間違いなく人気が出るはずです。何とかならないものでしょうか…