自分で焼いたステーキかつてこんな美味しいステーキを食べたことがあっただろうか、いやない(反語)。

先日から、高校の編入試験のために帰国した長男と一緒に妻が一時帰国してしまい、次男と二人でしばらく過ごしていました。その間外食ばかりというわけにも行きませんので、私も普段はやらない料理なんぞをしなければならないわけですが、一番手軽で作り溜めできるのはやはり煮込み料理です。こういう時に私がよくやるのは「なんちゃってポトフ」なのですが、そればっかりでは飽きるので、今回は「なんちゃってラタトゥイユ」と「チキンヌードルスープのつもりだった何か」というのを作ってみました。前者は鶏肉を炒めた後で野菜とダイストマトとトマトピューレの缶詰を入れ、圧力鍋で煮込むだけです。後者は前の日にスーパーで買ってきて食べた鳥の丸焼きの胸肉がパサパサで美味しくないので、それをまた野菜と一緒に煮込んで後からパスタを入れただけの簡単料理です。どちらもブイヨンとローリエさえ入れればそれなりの味になるので失敗はありません。

でもやはり煮込み料理ばかりでは次男も可哀想なので何度かは外食に連れて行きましたが、一度ステーキでも焼いてみようとスーパーで魔が差してというか間違えて1lbで$20というちょっと高い肉を買ってしまいました。日本でアンガスビーフのテンダーロインヒレなんてそんな値段では買えないでしょうが、アメリカでは肉の値段は鶏、豚、牛の順に高く日本と逆になっていますので、普通の安い肉なら1lbで$10もせずに買えるのです。しかし今回はしっかり値段を見ずに「美味しそう!」とカゴに入れてしまったのでした。

そんな調子ですから、ステーキを焼くなんていうのも初めてのことです。そんな状態で高い肉を無駄にしてしまうのではないかと心配になるかもしれませんが、実は今回は心強い味方がいるのです。それが「家で「肉食」を極める!肉バカ秘蔵レシピ 大人の肉ドリル」という本で、いかに肉をおいしく調理するかという点にこだわっており、ただのレシピ本とは一線を画するものとなっています。私は入手してからしばらく経っていましたが、これまで実践することなくイメージトレーニングに励んできており、今回が初めての挑戦となります。

大人の肉ドリル

ステーキの焼き方の基本とは、表面にはしっかり焼き目を付けつつ、内側は中心まで60℃の熱を入れるという低温調理です。それ以上の温度にしてしまうと肉が固くなってしまうのですが、厚みのある肉の外側の温度を上げすぎずに内側まで熱を入れるにはどうしたらよいかというと、フライパンの上で裏表10秒ずつ焼いたら2分休ませ、表面の熱が内側に伝わって温度が下がったらまた10秒ずつ焼いては休ませる、というのを適度な硬さになるまで繰り返すというのです。その適度な硬さの目安として、手でOKサインを作った時の親指の付け根の固さというのが示されており、親指と人差指の時がレア、親指と中指がミディアムレア、親指と中指がミディアム、とされていますが、正直なところ微妙すぎてよくわかりません。これはもう「エイヤ!」で行くしかなかろうと腹をくくりました。

ということで実践に移ることにしましたが、10秒という時間にはそれほど神経質になることもなかろうと適当に数えて焼いていましたが、10秒×2+2分を何セットか繰り返しても全く埒が明きません。この調子ではいったい何十セット繰り返さなければならないのだろうという感じでしたが、よくよく考えれば写真に写っている肉は私が焼いているものと比べるとはるかに薄く半分以下のものです。厚さが倍なら繰り返し回数は倍では済まないのだろうと気づき、途中から30秒ほど焼くことにしたところ進展が見られ、結局10回ほど繰り返したところで火が通ったような気がしたので満を持してテーブルに移して食べてみることにしました。

恐る恐るナイフを入れてみると、それはそれは見事なピンク色のミディアムでした。そして口に運んでみると、これまでに食べたことのない柔らかさの素晴らしい焼け具合でした。ステーキソースなどは付けずに、焼く前に擦り込んだ少量の塩と胡椒だけで食べましたが、肉の味だけで十分に行けます。手前味噌になりますが、誇張抜きにこれまでに食べたどのステーキ店のものよりも柔らかく美味しいステーキです。1人前$10の材料費でも手間さえかければこれほどのものが食べられるのかと感動しました。これはぜひ妻にも味あわせたいと思っていますが、今回はちょっといい肉だったからこれだけ美味しかったのかとも考えられますので、次回はもう少し安い肉で試してみたいとも思っています。きっと少々安い肉でも美味しくはできるのでしょうが、その度合がやはり違うのでしょうね。高いのには理由があるはずです。

今回のステーキは大成功でしたが、この本の最初に載っているのはステーキなものの、牛肉以外の肉についても、ただ焼くだけではない料理も色々載っています。唐揚げなどもこの本の通りに揚げたらどれだけ美味しい物ができるのかと期待してしまいますが、ぜひとも試してみたいものです。まあきっと揚げ物は妻にお願いすることになるでしょうが。