空からのLingotto「良かった?」とか聞かないでください。

アメリカ赴任前後の1,2年は年に何度かアメリカへ出張する機会もできましたが、それまでの何年かは海外はおろか国内でさえ出張の機会はほとんどなく、業務はほとんど事業所の中で済んでしまっていました。出張に出掛けると日常的な業務が滞りがちなので調整が必要にはなるのですが、基本的に出掛けることが好きな私にはちょっと淋しい状態だったとも言えます。しかしそんな私に今度はイタリア出張の機会が巡ってきたので、ここではもちろん仕事のことは触れず大変なことは何もなかったかのように、旅としての部分で見てきたこと、感じたことをお伝えしたいと思います。
トリノの夜
まず、今回の目的地はイタリア北部ピエモンテ州の州都、トリノです。自動車メーカーFIATの城下町として栄えた工業都市であり、また一方世界遺産「サヴォイア王家の王宮群」を持つなど古い歴史を持つ街でもあります。さらにまた2006年にトリノオリンピックを開催したことからもわかるようにアルプス山脈の麓に位置し、見通しの良いところでは美しい山々に囲まれることが実感できます。

また、サッカー好きな人にとってはセリエAの名門チームJuventusTorino FCの本拠地として知られているでしょうし、お酒好きな人にとってはMartiniCinzanoで、はたまたキリスト教系オカルティズムではトリノ聖骸布のあるところとして認識されているかもしれません。このように色々と有名なものを持ちながらも日本ではあまりピンとこないのは、FIATが今ひとつ冴えないせいで街自体の活気も足りないせいかもしれません。
Lingotto屋上
トリノにはトリノ空港があるので私達はここから入りましたが、ミラノから120km程度しか離れておらず、長距離便の場合はミラノの空港を使用するようです。トリノ空港に着陸する直前には今回宿泊するホテルの建物を上空から見つけることができました。というのは、今回のホテルはFIATが工場として使用していたLingottoという建物をRenzo Pianoの設計でリノベーションしたものなのですが、何といっても特徴的なのは屋上部分に長円形のテストコースを持っていたということで、それは現在でも保存されており、見学も可能となっています。そのおかげで、初めて見る私でもしっかり視認できたというわけです。
ホテルの超高機能エスプレッソマシン
イタリアと言えばやはりイタリア料理です。滞在中にも現地事務所の歓待を受けましたが、連れて行ってもらったレストランはどこもとても美味しく、毎晩満足させてもらいました。本場の料理は日本人の口に合わなかったりということもありがちですが、そのようなことは全く無く、当然アルデンテのパスタやリゾット、新鮮な海の幸山の幸、ふんだんに使われたチーズなどどれをとっても素晴らしかったです。

ただ若干閉口するのは夕食の集合時間が8時だったりして食べ始めるのが遅く、またさらに長時間に渡るので食事だけなのにホテルに帰るのが毎晩12時前後になってしまうということでした。精一杯のもてなしをしてくれているのですからもちろん文句はありませんが、もうちょっとゆっくりして疲れを取りたかったというのが本音です。

また、イタリアでコーヒーと言えばエスプレッソです。これは何の誇張でもなく、レストランなどでただ「コーヒー」と注文すると当然のようにエスプレッソが出てきます。日本で普通のドリップコーヒーに近いものを飲みたければ「アメリカン」(アメリカーノ)と頼めばエスプレッソをお湯で割ったアメリカーノが飲めると思いますが、イタリアではあくまでエスプレッソが基本なのでこれ以上は難しいようです。しかしそのエスプレッソの味はさすがで、日本のその辺の店ではなかなか飲めないような濃厚なものを楽しむことができるので、コーヒー中毒の私にはとても嬉しいです。
アムステルダムの運河
今回のトリノ市内の移動はタクシーを利用することが多くなりましたが、乗っていて感じるのは日本やアメリカとは大きく異る交通秩序です。決して無法地帯というわけではなく、信号はしっかり守られているようです。しかし信号が赤から青に変わって走り出すのが1秒でも遅れれば後続車からホーンが鳴らされますし、あまり車両通行帯がないので進路は幅寄せで奪い合うような感じになっていて、常に気が抜けないような感じなので、仮に現地に駐在するとなった場合には大きな障害かもしれないと思いました。

ということで帰国時には乗り継ぎの都合でアムステルダムで一泊したので市内を散策してきましたが、ここもイタリアとは何もかもが違うところで、ヨーロッパ各国もアメリカも含めて「欧米」と一括りにするのはあまりに乱暴だということを改めて実感しました。日中韓だけでもかなり違って一括りにはできないのですから、当然のことですけどね。