Black Panther少々主張が強すぎるような気はしますが。

このところアメリカの人種差別を一つのテーマにした作品が続いていますが、今回観たMarvelの「ブラックパンサー」も主役を始めとするキャスト、監督以下のスタッフ、サントラを提供する歌手などその多くを黒人が占めているということで話題となりました。特に黒人社会では「自分たちにもこんなかっこいい映画が作れるんだ」ということで大変な熱気となったようです。Rotten TomatoesTomatometerも97%と非常に高い評価になっていますが、一方で観客によるスコアは79%と低く、「作品としての価値は高いが面白いかと言うと…」というようなものになっていないかが気がかりでした。しかし実際に観てみると決してそんなことはなく、大いに楽しむことができました。

諸外国にはアフリカの発展途上国の一つとしか認識されていないワカンダという小国が、実は一万年前に落下した隕石に含まれていたヴィブラニウムという希少金属のおかげで経済的にも科学技術的にも先進諸国を凌ぐ驚異的な発展を成し遂げています。そのワカンダを治める王はヴィブラニウム製のスーツに身を包み、代々の王にのみ与えられる特殊な薬草でスーパーパワーを得てブラックパンサーとなり国を守ります。この作品では主人公のT’Challaが王位に就き、ヴィブラニウムを狙うテロリストと戦う中で、これまでヴィブラニウムの秘密を守ってきたワカンダの新しいあり方を見つけることになります。

映画自体は良くも悪くも他のMarvel作品とあまり違いありません。ただ、やはり目立つのは登場人物のほとんどがいわゆる黒人であるということで、白人に虐げられていることに対して抵抗しなければならない、ということが基本的には肯定されているような気がしました。黒人も力を持たなければならない、と言って武器を手にしようとするか、平和的な解決を目指すかだけの違いなのです。日本にいる限りは黒人差別というものを日常生活で意識することはまずありませんが、特にアメリカでは、少なくとも黒人側は、ハリウッド映画に関わるような階層の人々であってもそういう意識が根強いということなのでしょう。

昨年末の「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで! 絶対に笑ってはいけないアメリカンポリス24時!」での問題など、日本での各種表現が人種差別だと特にアメリカから批判されることが少なくありませんが、それは自分たちも有色人種とされている日本人が黒人に対して持つ感情が、アメリカの白人が持つものとは相当異なっているためでしょう。もちろんそういうことによって被差別側であるアフリカ系の人々が気を悪くするようなことは避けなければならないので、今回の件について擁護するつもりはありませんが、それを半差別意識の高い白人に攻撃されることには違和感があります。自分たちがそう考えているからといって相手も同じだと思うな、という「自己紹介乙」のようなものですね。

ということで映画自体の話から逸れてしまいましたが、本作はどうもメッセージ色が強すぎるような気がしてなりませんでした。ちなみにT’Challaの16歳の妹Shuriの役は現在24歳になるLetitia Wrightが演じているのですが、彼女はちょっと可愛いですね。ヒロインで恋人のNakiaはアカデミー女優のLupita Nyong’o、そして主役のT’Challa役はChadwick Bosemanですが、彼はこれまでに何度かアベンジャーズシリーズに出演してきているので顔なじみですね。まあ、黒人にもかっこいい映画はできるんだ、ということについては全くそのとおりだと思います。