Ready Player Oneおっさんホイホイのような気もしますが。

私がアメリカで住んでいたミシガン州は南側にオハイオ州が隣接しているのですが、そのオハイオ州の州都はコロンバスという都市になります。近郊のMarysvilleという町にホンダの生産拠点があることもあってコロンバスには日本人も多く住んでいます。私の自宅からちょうど200マイルほど、車で3時間ほどの距離ですが、直線的に高速道路で行くことができないということもあってホンダに用があるときにしか行ったことがありません。

と急になぜこのような話をするかというと、このコロンバスを主な舞台にした、ただし2045年という未来の話である映画「レディ・プレイヤー1」を観たからです。コロンバス市内のキャンピングカー、アメリカでいうRVトレーラーハウスを積み上げて高層住宅風にした”stacks”と呼ばれるスラム街で育ったWade Wattsという少年が主人公の作品で、主にOASISという仮想空間を舞台に繰り広げられる物語です。

OASISにはVRゴーグルと各種入力デバイスを装着して入り、それぞれが自分のアバターになりきって生活する一つの完全な社会になっています。現実世界よりもOASISの中の方が本当の生活になっているような人も少なくないような、今の私たちの感覚からすればかなり異様な世界かもしれません。このOASISの創設者James Hallidayが亡くなる際、OASISそのものを含むその莫大な遺産をOASIS内のイースターエッグとして隠したことで、これを探し求めるEgg Hunter = Gunterが多数現れ、その一人であるWadeが冒険を繰り広げるというのがこの作品です。

入力デバイスや感覚をフィードバックするスーツはかなり進化していて、街中でもゴーグルを装着してOASISに入っている人がいたりする一方、VRゴーグルは現代のものとそれほど変わっていないのですが、これは人々に理解させるためのアイコンとしても必要なものなのでしょう。例えば普通の眼鏡と見た目が変わらなかったり、コンタクトレンズ型になっていたりとあまりに変化させてしまうと、VRの世界に入っているのだということがわかりづらくなってしまうので、敢えてこうしているのかもしれません。

実はこの作品が注目を集めているのはこのVRが面白いというのではなく、James Hallidayの青春である1980年台のポップカルチャーが数多く取り込まれているためでしょう。WadeのアバターであるParzivalが乗る車は「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のDe Loreanに「ナイト・ライダー」の人工知能KITTを装着したものだったり、ヒロインのArt3misが乗るのは「AKIRA」の「金田のバイク」だったりすることから始まり、ガンダムメカゴジラキングコングまで映像として登場するだけでなく、セリフやポスターとして小ネタが数多く仕込まれていて、それこそイースターエッグを探すように楽しむことができます。

80年代の文化が今の若い人にとっても楽しめるのかどうかわかりませんが、少なくとも私と同年代の人々にとってはどストライク、私たちを狙っているとしか思えないような作品になっています。主人公らにとってはこれらの文化がカッコいいものとして、憧れの対象となっているようですが、果たして現実ではどうなのでしょうか。映画全体としてはさすがにSteven Spielbergの監督作らしく娯楽作品としてまとまっているので、細かいネタを拾うためにももう一度観てみたいという気になっています。もしかすると、この作品をきっかけに80年代カルチャーが再注目されるようなことにもなるでしょうか。