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人魚の眠る家 (小説)

自分の身に起こることは想像もしたくありませんが。

元エンジニアということで理系的に筋の通った所があるような気がして東野圭吾氏の作品が好きなのですが、最近「マスカレード・ホテル」を読んで以来、その続編に続いて久しぶりにいろいろ続けて読んでいます。もっぱら図書館の書架にあるものを適当に選んでいるのですが、今回借りてみたのは「人魚の眠る家」という作品です。なお、この作品は昨年暮れに映画化されていたようですが、邦画にも感心を持つようになったのがつい最近のことなので気づいていませんでした。

人魚の眠る家 (幻冬舎文庫)

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プールでの不幸な事故で、朝まで元気に笑っていた我が子が次に会ったときには見た目は変わりないのに自発呼吸のできない脳死状態、というのは子を持つ親としては他人事のように思えず、職場で昼休みに読みながら目頭を熱くしてしまいました。そのような状況で、まだ心臓の動いている子供に対して脳死判定、すなわち死亡宣告を行い、臓器提供に踏み切ることができるのか、私にも全く自信がありません。

本書はそれをテーマにして、周囲の人々との関わりによって変わっていく両親の考え方などを描いた小説です。つまり、東野圭吾による推理小説ではない作品なのです。これまでは東野圭吾といえば推理小説だと思っていたので、本作を読みながらも途中まではこの状況でさらにどんな事件が起こるのだろうと考えてしまいましたが、犯罪のようなものは一切起こりません。

ただ、夢のようなテクノロジーがいくつか登場してそれが鍵になっているですが、それはやはり今のところ夢でしかないでしょう。そんな事ができたら良いと思っている闘病中の方も多いでしょうから、それが実現したら素晴らしいことですが、その場合には新しい問題も生まれるかもしれないということになるのでしょうか。人それぞれ皆良かれと思ってやっていることが、他の人から見ると疑問に感じられるというのはよくあることで、そういうこともこの作品で改めて考えさせられることでした。

マスカレード・ホテル (小説)

映画も観てみたい。

昨年暮れ頃から映画の予告で頻繁に流れていて、その頃ちょうど瀬戸弘司のゲーム実況で通称「キムタクが如く」こと「JUDGE EYES:死神の遺言」を観ていたので好感度が上がってしまっていた木村拓哉と長澤まさみが主演していた映画「マスカレード・ホテル」はちょっと気になっていたのですが、基本的に邦画はあまり観ない私なのでこれもAmazon Prime Videoで無料になったときに観よう、くらいの気持ちでいました。まあこれほどの映画であれば無料にはならないような気もしますが。

そんな映画の原作は東野圭吾氏なので、まず間違いなく面白いと思っていたのですが、先日図書館に行った際にその原作本がおすすめコーナーにあるのを見つけ、借りてみたところやはり予想通りに面白く、結局読み始めて2日、のべ4時間足らずで読み切ってしまいました。東野氏はもともと技術者だった理系の人なので、推理小説でも論理の破綻が少なく、理屈として筋が通っているところがある気がして私は好きです。

マスカレード・ホテル (集英社文庫)

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本作は2008年末から連載されていたもので、単行本としては2011年に発刊されたものだということです。映画の予告編でも説明されていたとおり、とある高級ホテルでの殺人の犯行予告があったために警察が潜入して警戒することとなり、フロントスタッフとして潜り込んだ刑事、新田浩介と、できるフロントクラークの山岸尚美を中心に、誰が犯人で誰が被害者になるのかもわからないまま、犯行を未然に防ぐために四苦八苦するというような話です。その中で、ホテルという場所柄さまざまな人が訪れていろいろな事が起こりつつ、事件に関係があるのかないのかわからないというのが面白いところかと思います。

予告編を観ていたおかげで脳内ではキムタクと長澤まさみで映像が再生されてしまいましたが、それには全く違和感がありませんでした。きっと映画でも原作に忠実に映像化されているのではないかと思うので、このあと映画を観たときにも違和感はないような気がします。しかしこの主人公2人以外は誰がどの役を演じているのか知らなかったので、それらの人は脳内映像では顔がない感じでした。

なお、本作はすでに第2作として前日譚の短編集「マスカレード・イブ」と、第3作の続編「マスカレード・ナイト」が出版されており、「マスカレード・イブ」についてもすでに図書館で借りて読んでしまいました。新田と山岸の2人が出会う前にそれぞれが出会った事件・出来事とその解決までを描いたものになっており、「マスカレード・ホテル」からの流れで読むと楽しめるのではないかと思います。ただし、本作のエピローグは「〜ホテル」のネタバレにつながるものになっているので、読む順番は間違えないようにした方がいいでしょう。

マスカレード・イブ (集英社文庫)

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容疑者Xの献身

これも一つの愛の形

というわけで、「探偵ガリレオ」に引き続き、現在映画も公開中の「容疑者Xの献身」を読んでみることにしたのですが、ガリレオシリーズの全2作が短編集の形になっているのに対し、この「容疑者Xの献身」はシリーズ最初の長編作品ということでだいぶ趣の違うものになっています。

容疑者Xの献身 (文春文庫)
著:東野 圭吾文藝春秋 (2008/08/05)ISBN/ASIN:4167110121
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しかし実際には短編と長編との違いだけではなく、トリックの種類自体が大きく違うものになっていて、主人公らが同じというだけで「探偵ガリレオ」とは全く別の作品でした。「探偵ガリレオ」では先日書いた通り著者の理系的なというか、科学的な知識に基づく現実的なトリックが用いられていて、言い方を変えればある程度わかる人にはいつかはわかってしまうような単純なトリックだったのですが、この作品のトリックはかなり頭脳的なもので、相当頭のいい人でなければ解き明かすことはできないのではないかという物でした。私も「そういう手があったか」と思わず感心してしまうもので、極めて新しいトリックなのではないでしょうか。

今回のトリックも理系的と言えば理系的なのですが、前回読んだもののような工学的な要素はなく、理系でない人にも普通に読める一般的なミステリーに仕上がっていると思います。妻も短編の方はちょっと意味がわからないものもあったけれど、こちらは面白かったと言っていました。

まあしかし、推理小説については何を書いてもネタバレになってしまいそうで、紹介するのも難しいですね。「これは新しい」「面白かった」としか言えません。本当にこのトリックには参ったとしか言えないのですが、それも作者のミスリードにまんまと狙い通り引っ掛かってしまったせいで、うまくしてやられたというところでしょうか。この作品を読んで、ガリレオシリーズ以外の東野圭吾氏の作品にも俄然興味が湧いてきたので、とりあえずこのシリーズの他の作品のあとで読んでみようと思うのですが、図書館は順番待ちが455人とか…一体いつ回ってくるのでしょうか。