2004年にMotorolaから半導体部門が分離され発足したFreescale Semiconductorという会社があります。Motorolaの半導体といえば古くはMC6801やMC6809からMC68000、比較的最近ではPowerPCなどPC用のCPUとしてIntelとの双璧をなしてきましたが、AppleがPowerPC G5と呼ばれるIBM製の970系を採用し、その後Intel Core Duo/Soloへ移行したことからPCそのものとは縁遠くなってしまい、現在はMPUの分野では組み込みをメインターゲットとしているようです。また、MPU以外でもパワーデバイスや通信系デバイスなどでは大きな力を持っており、半導体分野では世界最高峰のテクノロジーを持つ会社の一つであり続けています。ちなみに現在はMotorolaとの資本関係はなくなっているということです。
このFreescaleからこれまでもサンプル出荷は行われていたMRAMという新しいメモリデバイスの量産が開始されたという発表があり、各所でニュースになっています。MRAMというのはMagnetoresistive RAMの略で、磁気抵抗効果を応用したRAMということになり、データを磁気の形で記憶する昔のコアメモリに似たような原理のものになります。
大きな特徴としては、磁気で記憶するためデータを保持するための電源が不要であるということが最初にあげられます。これは逆に言えば電源を切ってもデータを保持することが可能ということで、PCなどでは電源を入れるたびにOSを立ち上げ直す必要がなくすぐに使えるというようなことになります。これまで同じようなことをしようとすればフラッシュメモリなどを使うことになりますが、フラッシュメモリの場合には消去がブロック単位でありまた書き換えに時間がかかり、書き換え回数にも制限があるということでRAMやハードディスクと同じように常時書き換える必要があるようなデータを記憶させるには適していませんでした。
また、MRAMはアクセス時間がSRAMと同等程度に高速であり、また1組の磁気トンネル接合(MTJ)素子とFETで1ビットを記憶できるため、1ビット辺り6トランジスタを必要とするSRAMにくらべて集積度を上げることが理論的には可能であり、低コストでの製品化が可能ということにもなります。このこともあり、実際にはPCで使われているDRAMの代替よりも、組み込み機器で一般的なデータとコードをフラッシュメモリに、変数をSRAMに配置するというような構成のものを全体的にMRAMに置き換えてしまうことが可能ということで注目を集めているのではないかと思います。
まさに組み込み系の技術者にとっては夢のようなテクノロジーであり、これまでのプログラムの構成や考え方までも大きく変えてしまう可能性のあるものであり、私も大いに期待と希望を持っているところです。またこれまではフラッシュメモリだったので簡単には書き換わらないものと思っていたコードメモリがバグなどによって簡単に書き換えられてしまうこともあるなど、新しく考えなければならないことも色々ありそうです。まあ、組み込み機器で使えるようになるまでにはまだ数年かかることでしょうが、今回の量産開始のニュースによってぐっと現実味を帯びてきたことは間違いありませんので、それまでに私も何らかの準備をしておかなければならないようです。
