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American Made

これが実話とは。

1991年のクリスマスにソビエト連邦が崩壊するまで、それぞれソ連とアメリカを中心とする東西国家の間では冷戦状態となっていたわけですが、その裾野ではKGBとCIA (中央情報局)による各種工作合戦が繰り広げられていました。その中で実際にあったことをもとにしたという映画「バリー・シール/アメリカをはめた男」を観てみました。

バリー・シール/アメリカをはめた男(吹替版)

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実話をもとにした話ということで、主人公は邦題にもなっているBarry Sealという、1970-80年代のアメリカで暗躍した実在の人物で、Tom Cruiseが演じています。私はまったく予備知識を持たずに観始めたのですが、メデジン・カルテル、コントラ、サンディニスタ民族解放戦線という中米の組織がいろいろ関わってくるので、これらについて何らかの知識を持っておいた方がより楽しめるかもしれません。また、CIAのほかFBI (連邦捜査局)、DEA (麻薬取締局)、ATF (アルコール・タバコ・火器及び爆発物取締局)といったややこしいアメリカの捜査組織の職掌についても知っておくとちょっとだけ面白いでしょうか。

作品はあくまで実話を「もとにした」もので、脚色として事実から変えてあるところもいろいろあるようですが、Barryがアーカンソー州のMenaという田舎町の空港を拠点として麻薬の密輸を行っていたことは事実のようです。当初の作品名はずばり”Mena”としようとしていたそうですが、それはさすがに直接的すぎるのでやめたということでしょうか。現在5000人余というMenaの町の住人にはちょっと複雑ですよね。なお原題が”American Made” (アメリカ製)というのに対して、「アメリカをはめた」という邦題では大胆不敵な人物をイメージさせてはいますが、私が見たところではアメリカを騙したわけでも、国に陥れられたわけでもないようで、ちょっと印象操作になっているような気がします。

ということで、作品自体も1980年代風の映像となっていて、そういう面でもいろいろ楽しめたのですが、あまり人が死んだり痛い目に遭う直接的な描写がないというところも良かったです。私はどうも暴力描写が苦手なので極力避けて欲しいと思うのですが、それがリアリティだと思う人もいるようなのが困ったものです。いやしかし、ここ数年でTom Cruiseがだいぶ好きになってきたような気がします。

Three Billboards Outside Ebbing, Missouri

観ておいて良かったです。

20世紀フォックスの子会社でインディペンデント系に強い映画製作会社のFox Searchlight Picturesという会社がありますが、「JUNO/ジュノ」や「スラムドッグ$ミリオネア」などの有名作品の他、良い作品を色々扱っていて私も常々注目しています。巨額の製作費をかけた超大作でなくても、面白い映画はいくらでもあるということを思い知らせてくれる良いスタジオだと思っていますが、日本では先週から公開されている「スリー・ビルボード」という作品がヴェネツイア国際映画祭に出品されて好評を博し、アカデミー作品賞にもノミネートされているなど高い評価を得ているようなので、私は普段あまり観ない犯罪ドラマというジャンルではありますが、土曜日の朝から映画館に観に行ってみました。

娘を強姦殺人で亡くしたMildred Hayesが、何ヶ月たっても一向に犯人を見つけることができない警察への抗議のため、町の寂れた道路に面する3枚の大きな看板に「RAPED WHILE DYING (レイプされて殺された)」「AND STILL NO ARRESTS? (なのにまだ逮捕なし?)」「HOW COME, CHIEF WILLOUGHBY? (どうして? ウィロビー署長?)」という広告を出すところから物語が始まります。これに対し、町の人々はMildredに同情しながらも、敬愛されるWilloughbyへの個人攻撃に対しては賛同しません。特にWilloughbyを慕うJason Dixonは激しく反応しますが、その後様々な展開が起こることになります。

Mildred役のFrances McDormandやDixonを演じているSam Rockwellの演技が特に高く評価されているようですが、確かにMildredの静かな狂気と対極的なDixonの激しさと終盤の二人は見応えがあると思います。また、Willoughby役のWoody Harrelsonは悪役で見ることが多いですが、本作ではとても良い人のように見えますし、とても存在感があります。ちなみに、WikipediaによるとWoodyの父親は「マフィアの雇われ殺し屋」で、終身刑で服役中に死去したとか…母の方は「弁護士秘書」だとかでそれも驚きですが、いずれにしても本人とは直接関係のないことですね。

本作は脚本が本当に良くできていて、私も面白くていつの間にか時間が経っていたという感じでした。製作費は1200万ドルということですが、たとえば昨年末の「最後のジェダイ」は2億ドルですから、やはり製作費と映画の面白さには直接の関係はないということです。脚本が全てということではありませんが、創造力、クリエイティビティしだいでいくらでも面白いものは作れるということではないでしょうか。もちろんStar Warsのようなものを作ろうとするとどうしてもお金は掛かってしまうのですが。

2016年アメリカ大統領選挙

まさかの展開かもしれませんが。

私もそれほど注目していたわけではないのですが、昨日アメリカでは大統領選挙の投票が行われ、共和党候補のDonald Trumpが民主党のHillary Clintonを抑えて当選確実となりました。この結果を勤務先で聞いて私も驚きましたが、事実は事実として受け入れるしかありません。

Hillaryは言わずと知れた第42代大統領Bill Clintonの婦人ですが、その後上院議員、Obama政権の国務長官を歴任してきたバリバリの政治家です。もしも当選していたら初の女性大統領になるということでも注目されていましたが、これが逆に仇になり、これまで2期続いた黒人大統領に続いて今度は女性、ということを嫌った白人男性の票がTrumpに流れたという話もあります。また、ファースト・レディの時から国政にだいぶ口出ししているように見えたので、女性でも保守的な人にはあまり良く思われていなかったのではないでしょうか。

一方Trumpの方は問題発言があったりもしましたが、アメリカが世界のすべて、強いアメリカこそ正義という人々にとっては耳障りの良いことをいっていたこともあって特に低所得者層の人気が高かったようですね。アメリカ人でも私や他の日本人の友人らと接しているような層の人々でTrump支持の人というのはほとんどいなかったようなので、同じアメリカでもくっきり別れた2つの世界があるような印象です。開票結果を見ても東海岸と西海岸の州ではHillary、中央部ではTrumpと見事に分かれています。

しかし結果が出た今、実はTrumpでもそれほど酷いことにはならないのではないかと私は思っています。実際、勝利演説ではかなりまともなことを言っているようですし、結局のところアメリカという超大国はたった一人の力でそんなに大きく舵を切れるものではなく、政権運営はどれだけ優秀なスタッフを揃えることができるかというところにかかっているはずです。これまで政治家としての経験のないTrumpの能力は未知数かもしれませんが、ビジネスにかけて超一流であることは間違いないわけで、ビジネスマンらしく思い切った経営手腕を発揮してくれるかもしれません。

それにしても、相当な僅差であったというのはかなり健全に思われます。どちらに転んでもおかしくないほど、ほぼ同程度にそれぞれ支持されているというのは、一気に民主党に傾いたり大きく揺り戻したりする日本よりもよほどバランスが取れています。もはや日本人は懲りてしまったかもしれませんが、日本にも本当に政権担当能力のある政党がもう一つあったらと思いますね。