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Murder on the Orient Express

今はもう運行されていないのですね。

中学生の頃、私には個人的に欧米の古典推理小説ブームが来ていて、学校の図書館で借りて貪るように読んでいたものです。このジャンルではConan DoyleのSherlock Holmes、Maurice LeblancのArsène Lupin、Agatha ChristieのHercule Poirotが三巨頭と言っていいかと思いますが、実は天邪鬼な私が一番好きだったのはEllery Queenでした。といっても作品の内容はまったく覚えていないので、今から読み直しても新鮮に楽しめると思います。

この週末に公開された映画「オリエント急行殺人事件」は言わずと知れたAgatha Christieの代表作の一つ、「オリエント急行の殺人」を原作としているもので、この作品は私も間違いなく読んでいるのですが、内容は完全に忘れてしまっていました。ミステリーなのでその結末は知らないに越したことはないのでもちろん読み直すことなく観てきました。

イスタンブールからロンドンまで向かう長距離豪華寝台列車であるオリエント急行の中で乗客の一人が遺体となって発見されるという、列車を舞台にした一種の密室ミステリーとなっています。特徴的なのはそのキャストで、監督と主役を兼ねるKenneth Branagh以下、Penélope Cruz、Willem Dafoe、Judi Dench、Johnny Depp、Josh Gad、Michelle Pfeiffer、そして「スター・ウォーズ フォースの覚醒」の主演で一躍スターの仲間入りを果たしたDaisy Ridleyと、大変豪華な面々となっています。しかしこれもこの作品の特徴からして必要なことで、1974年の映画でも同じように豪華なキャストで話題となったようです。このような作品で、原作に比較的忠実に作られているので新しさはありませんが、当時の上流階級の人々が登場人物であるということもあって、華やかさが印象的でした。

こんな列車に私も乗ってみたいとも思いましたが、日本では寝台列車はどんどんなくなってしまって予約を取るのも大変ですし、瑞風なんてそれだけでなく私にはとんでもない値段です。アメリカにいる間にAmtrakで大陸横断の旅ができたのは良かったのですが、豪華というのとはちょっと違うものでした。あれとカリブ海クルーズをあわせたような感じがちょうどなのでしょうか。まあ変に格式高いのも疲れるだけなので、カジュアルながら贅沢な感じというのが良いのですが、そんな都合のいいものはありませんね。その点Royal Caribbeanは我が家にはとても良いバランスだったのですが。

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The Circle

結末に不満あり。

今年は11月から12月にかけて、毎週末に観たい映画の公開が続いていて嬉しいような困ったようなというところなのですが、先週末は出掛けていたので「マイティ・ソー バトルロイヤル」はちょっと見送りました。Marvel作品群は長男も好きで観たがっているのですが、大学受験を控えているため自制しているので、私も受験が終わったあとにAmazonかAppleかの動画配信で観ようかと思っています。

ということで今週はHermioneことEmma Watson主演の「ザ・サークル」を観てきました。映画として面白いかどうかだけではなく、ネットワーク界隈の話題としておさえておくべきところではないかと思って気になっていました。Emma演じるMae HollandがThe CircleというIT企業の顧客窓口として働き始めてしばらくして、CEOであるEamon Baileyの目に留まってSeeChangeなるSNSで私生活を含めてトイレ以外の24時間すべて公開することになりますが、これによって世界中から多くの視聴者を集めることになりますが、Mae自身と身近な人々に様々な影響を及ぼすことになる、というものです。

SeeChangeについて、現時点では送信側のデバイスは現在の技術で実現できるものではないと思いますが、それ以外のインフラや受信側についてはすぐにでも実現可能なもの、というより最近始まったInstagramのStoriesのようなものとそれほど違うものではないかもしれません。SNSで日常を公にすることについては私も妻にあれこれ言われていますが、現状はあくまで主体的なものであり、それが自動的なものになるというのはさすがに私でもかなりの抵抗があります。いくらさらけ出しているように見える人でも、相当限定的なものでしょう。

The CircleのCEOを演じているのがTom Hanksなのですが、本当にカリスマのある経営者のように説得力のあるプレゼンテーションに見えました。Steve Jobsなどのプレゼンテーションを研究したことは間違いないでしょうが、研究材料には事欠かないのではないでしょうか。また、The CircleのキャンパスもAppleの新社屋やGoogle、Facebookのキャンパスを彷彿とさせるものになっていますが、映画用にさらにそれを極端にした感じでしょうか。

このあたりの業界に関心の強い私には終盤までなかなか楽しむことができたのですが、最後の最後、肝心なところが尻すぼみになってしまったような感じでとても欲求不満の貯まるような終わり方になっているのがとても残念でした。しかし、これは映像化の時点でうまく描けなかっただけでDave Eggersによる原作ではうまくまとめられているのではないかという気がするので、ぜひ読んでみようと思っています。その際にはこの映画で見たイメージが重なり合ってよりリアルに感じられるのではないでしょうか。

ザ・サークル

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Atomic Blonde

映像も音楽も何もかも。

いわゆる東西陣営のいがみ合いにより国家が2つに分断されている、と言うと今では南北朝鮮を思い浮かべるかと思いますが、かつては東西に分断されていたドイツがその代表でした。さらにドイツがややこしいのは分断前の首都だったベルリンは当時の東ドイツ領内にありながら、ベルリン自体も東西に分けられ分割統治されていたということで、東側からの人口流出を食い止めるためにその境界に東ドイツが築いたのがベルリンの壁です。

このベルリンの壁は1961年から1989年に崩壊するまでの30年弱に渡って東西の行き来を阻んでいたわけですが、ちょうど今北朝鮮からの「脱北」が命懸けで行われているように、当時の東から西への脱出は逮捕、射殺、落下、溺死の危険を伴ったもので、運のいい一部の人だけが逃れることができたのでした。私はまだベルリンに行ったことはありませんが、当時イギリスに住んでいたことがあり、(西)ドイツも何度か訪れていたため、比較的肌に近いところでこの緊張感に触れていたものです。そしてこの壁が崩壊した1989年、日本でこのニュースを聞いた時には鳥肌の立つ思いだったことを今でも覚えています。

ということで前置きが長くなりましたが、公開初日の昨日観た映画「アトミック・ブロンド」はこの事件の直前のベルリンを舞台とした映画です。といっても壁の崩壊そのものとは直接関係なく、冷戦下のベルリンで暗躍する東西のスパイの戦いを描いたフィクションで、Antony JohnstonとSam HartによるThe Coldest Cityというグラフィックノベルを原作としたものです。

The Coldest City

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主役はMI6のエリートエージェントであるLorraine Broughtonですが、それを演じているのはCharlize Theronで、このLorraineが美しくカッコよく、最高にクールです。本作のレーティングは日本ではR15となっている通り、血しぶき飛ぶバイオレンスだけでなくちょっとエロティックなシーンもありますが、そうでないシーンでもかなりセクシーです。

そして本作が素晴らしかったのはストーリー、キャスト、アクションだけではなく、時代背景とそれに合わせた音楽もです。BGMにはこの80年代後半に流行っていたヨーロッパの音楽が使われていて、当時よく聴いていた私はノリノリで観ることができました。99 Luftballons、Cities in Dust、The Politics of Dancing、Father Figure、Under Pressureなど、とても懐かしい曲もあったので、帰宅後迷わずサウンドトラックを購入してしまいました。

Ost: Atomic Blonde

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ところで少々ネタバレになりますが、本人がカメオ出演している「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー: リミックス」その他、最近David Hasselhoffの名前を耳にする機会が多いような気がするのですが、何なのでしょうか。実はベルリンの壁崩壊にまつわるエピソードがあるなんていうことを私は知りませんでしたが、そんな小ネタまで仕込まれています。

ということでこの映画を観て、北朝鮮も突然崩壊して一気に統一が果たされる、ということになるかもしれないし、あるいは韓国の方がということも無いとは言えないかもしれない、なんてことを考えてしまいました。当時もドイツがいつまであの体制かなんていうことはわかりませんでしたし、どうしたら冷戦が終わるのかなんていうことは実際にそうなってみるまでわかりませんでしたからね。