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Hunter Killer

「潜水艦映画にハズレなし」だそうです。

映画の予告編というのは本編が完成する前に本編のカットを利用して作られるようで、本編のストーリーとは全く違うものになっていたりするのであまりあてにならないものです。予告編を作ったあとで脚本が書き換えられるということもあるでしょうし、あえてネタバレにならないようにカットの順序を入れ替えて完全に別物のように作ってしまう場合もあるでしょう。そんなものなので、予告編を見ただけでその映画を観るべきかどうかを判断するのも難しいものです。

今回観た「ハンターキラー 潜航せよ」については予告ではとても面白そうに見えたのですが、その後日本に先行して公開されたアメリカでの興行成績や評価があまり芳しいものではなかったので、本作を劇場で観るのは見送って、Amazon Prime Videoかなにかで後で観ようと思っていました。しかし最近、高校時代の友人が観てきて面白かったとFacebook等に投稿しているのを見てやっぱり観たくなってしまい、公開から1ヶ月ほど立った昨晩、まだレイトショーのみで上映されていたので劇場へ足を運んでみたのでした。

その結果、心地よい緊張感が持続する、とても面白い映画でした。そんなにうまくいくものか、と思うような場面もありますが、そこはお話として単純に楽しんでおきましょう。あらすじとしてはクーデターで海軍基地内に監禁されたロシア大統領を、アメリカの潜水艦とNavy SEALsの特殊部隊が救出する、という荒唐無稽とも言えるものですが、娯楽映画というのはそういうものでしょう。

Rotten TomatoesのTomatometerは36%ながらAudience Scoreは71%ということなので、専門家受けは良くないけれど一般には楽しめる、ということなのではないでしょうか。批評を見てみると「これまでの潜水艦映画ですでに描かれたものと同じで新しさがない」というのが低評価の理由のようなので、沢山の潜水艦映画を観てきたという人以外には当てはまらない評価と言えそうです。

映画そのものから外れてちょっと面白かったのは、ロシア人同士がロシア語で会話している設定の場面では、ロシア訛りっぽい英語で表現されていたことです。007シリーズなどでちょっとした会話だけのときは実際のロシア語の音声に英語字幕が付けられていることが多く、またほとんどの会話が外国語という設定の場合にはすべて英語に置き換えられているのではないかと思いますが、本作では比較的会話が多く物語にも直接関わっている一方、アメリカとロシアを区別する必要もあったためかもしれません。ただ、これを日本に当てはめたとき、日本人の訛りっぽい英語を他国の俳優が喋っていたとしたら、あまり良い感じはしませんね。

なお、本作ではロシアの潜水艦艦長をMikael Nyqvistが演じていますが、撮影後に公開までの間に亡くなってしまったらしく遺作となっており、本作はMikaelと、同じく亡くなったらしいプロデューサーの一人、John Thompsonに捧げられています。

Den skyldige / The Guilty

想像力をフル動員。

全国民的に大型連休となった今年のゴールデンウィークですが、我が家は家族それぞれに過ごすことになり、私は連休の前半に一人で東京の両親と祖母に会いに行ってきました。東京には3泊しましたが、入院中の祖母の見舞い以外はこれといった予定を入れていなかったためのんびり過ごすことになり、日中は時間があったので映画でも観に行くことにしました。

せっかくなので地元では観られない映画を、と思い調べてみると、以前から次男が観たがっていて私も気になっていた「ギルティ」を観ることができることがわかり、これに決定しました。上映されているのは渋谷宇田川町の奥の方にひっそりとあるインディーズ系映画館のUPLINK渋谷でしたが、インディーズ系映画館というのは私もこの歳になって初めての経験です。劇場にはスクリーンが3つあるのでインディーズ系としては比較的大きなところなのでしょうが、「ギルティ」の上映はわずか45席という非常に小さなスクリーンでした。しかも、ちゃんとした映画館らしいシートはそのうちの32席のみで、最前列はビーチチェアのような低い椅子、最後列はディレクターズチェアのハイチェアとなっていて、あとで追加されたもののように思われます。私は事前予約せずに行ったので、その時点で残っていたのは最前列と最後列のみだったため最後列を選んだのですが、深く座ると天井に吊るされたリアスピーカーが頭の前方斜め上にあるというような席でした。最初はこれに不安というか、失敗したかという思いがよぎったのですが、実際に上映が始まってしまうと特に問題なく楽しむことができました。

この作品はデンマークの作品で、全編デンマーク語の台詞となっているのですが、何を言っているかは全くわからないものの、字幕さえあれば気持ちは伝わってきます。出演しているのもデンマークのローカルな俳優だけなので経歴などもよく分かりませんが、それも関係ありません。なお、本作は2018年のサンダンス映画祭で観客賞を受賞したり、今年のアカデミー外国語映画賞の最終選考9作品に残ったりしたとのことで、面白さはお墨付きと言って良いでしょう。

舞台となっているのはコペンハーゲン近郊を管轄する緊急通報司令室で、ここでオペレーターのAsger Holmが誘拐の被害者だという女性、Iben Østergårdからの電話を受けるところから物語が展開します。Asgerは電話だけを頼りにIbenを救出しようと奮闘するのですが、ストーリーは思いがけない方向に進み、映像はAsgerを演じるJakob Cedergrenだけがどアップで映る変化の少ないものながら、非常に緊張感のあるドラマティックな作品となっています。

ほとんど音声だけで描かれている作品でありながら、観ている人の想像力を掻き立てて、まさに情景が目に浮かぶようです。その情景は一人ひとり違うものなのかも知れませんが、それもまた良いのではないでしょうか。映像として出演している人は主人公とその同僚数名を除いてセリフもなくまるでエキストラのようですが、電話の向こうの声として出演している人の演技は作品にとって非常に重要なので、綿密な選考が行われたのではないでしょうか。しかし、それなら映画ではなくラジオドラマのようなものでもいいのではないかというと、あるシーンでのAsgerの表情など映像により補完されている情報もあり、これはこれで映画である必要があるのではないかと思います。

なお、本作はJake Gyllenhaal主演でハリウッド版がリメイクされることになっており、この春から撮影開始予定とのことだったので、公開は2020年以降になるでしょうか。ストーリーにどのようなアレンジが加えられるのか、これもまた楽しみです。

The Hateful Eight

つくづく、こんな時代に生まれなくて良かった。

「キル・ビル」などのヒット作で知られる映画監督Quentin Tarantinoの作品はバイオレンス描写がえげつないということでも知られており、それが苦手なので私は今まで興味を持ちつつも一度も観たことがありませんでした。しかし、今回観た「ヘイトフル・エイト」については予告で観て興味を惹かれたのを覚えており、レビューを見ると私の好きな伏線回収もののように書かれていたので、意を決して観てみたというわけです。

ヘイトフル・エイト(吹替版)

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物語の舞台は南北戦争集結の数年後のアメリカ中西部、ワイオミング州の山の中です。日本で暮らす普通の人にはワイオミング州といってもアメリカのどこなのかピンとこないと思いますが、州境が直線4本で描かれるほぼ完全な長方形の州で、その北西の角にイエローストーン国立公園を含んでいます。また、現在全米50州の中で最も人口が少なく、南北450km、東西550kmという広大な面積の中に50万人余りしか住んでいないということですから、今でも相当な田舎であり、当時はさらに相当な僻地だったということは間違いないでしょう。

南北戦争が終わったのは1865年ということですから、今からおよそ150年前のこと、日本で言えばちょうど幕末から明治維新の時期にかけての頃の話ということになります。日本の長州征討とアメリカの南北戦争がほぼ同じ時期の出来事だったということは私も知りませんでしたが、日本史と世界史とを完全に分けて教えられてきた弊害ですね。まあ、私は歴史の授業が非常に苦手で全く頭に入っていないだけなのかもしれませんが。

そんな時期のアメリカは全く野蛮な社会だったようです。昨年ヒットした「レッド・デッド・リデンプションII」というゲームが1899年のアメリカを舞台にしたオープンワールドゲームですが、この映画より若干あとにはなりますが同じような世界観で、一時期このゲームの実況プレイを観ていたのでちょっと馴染みのある感じでした。

Samuel L. Jackson演じる主人公のMarquis Warrenは元北軍少佐の賞金稼ぎで、いきなり3人分の死体を携えて登場します。そこへ通りがかったO.B. Jacksonの馬車に乗るKurt Russel演じるJohn Ruthと、Johnが連れた賞金首のDaisy Domergueらが物語に加わることになり、その後も加わって互いに信用できない者どうし合計8人となって駆け引きが繰り広げられるというものです。このストーリーが合計6章に区切られているというのは、小説を読んでいるような感じで面白い仕掛けではないでしょうか。

ストーリーは非常に面白かったのですが、やはり特に終盤の残虐描写が私にはキツかったです。もしも本で読んでいたとしたら、仮に同じような情景を頭に浮かべるのだとしても、きっとその方が純粋に楽しむことができたのではないかと思います。結局、Tarantinoを避けてきたのは正解だったということなのかもしれませんが、直接的な残虐描写を除けばとても素晴らしい監督なのだと思うので、なんだか大変残念です。

しかしこんな野蛮な時代に生まれなくて本当に良かったと思いますが、アメリカには未だに賞金稼ぎという職業が存在するということが驚きです。世界最高の文明社会のような面をしていますが、古いものやその名残もたくさん残っているのがアメリカなのですよね。