時代が先へ行ってしまったでしょうか。
🕵🏼

新型コロナウイルスのパンデミックは映画業界に甚大な影響を与えてしまいましたが、その中でも特に大きな影響を受けた作品の一つがJames Bondシリーズ最新作、「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」ではないでしょうか。もともと2020年2月に全世界同時公開とされていたものが一旦4月に延期され、その後11月、翌4月と何度も延期され、最終的に日本では2021年10月1日にようやく公開の運びとなったのでした。Billie Eilishが歌う主題歌も2020年2月にリリースされていて、それからだいぶ時間が経ってしまったので、残念ながら売上も期待されたほどにはならなかったのではないでしょうか。

イギリスの秘密情報部MI6の架空の諜報部員James Bondを主人公としたシリーズですが、Daniel Craigが演じる最後のJames Bondになるということで製作陣もかなり力が入っていたことでしょう。観る方の期待も否が応でも高まってしまいますが、Daniel=Bondの集大成と言っていい作品になっているのではないでしょうか。Danielが演じた6代目James Bondは代々のBondの中でも特に硬派で寡黙であり、かなり高い評価を得たようですし、私自身も最も好きなBondです。本作でも無駄に色ボケすることもなく、負傷しても力強く立ち上がる姿を好演しており、有終の美を飾っていると言えるでしょう。

前作「007/スペクター」に引き続き、いわゆる「ボンドガール」であるMadeleine Swannを演じるのはLéa Seydouxですが、色気をひけらかすようなこともなく、落ち着いていて良かったと思います。その代わりということなのか、CIA工作員の一人Paloma役で登場したAna de Armasが妖艶なイブニングドレス姿でのアクションを見せてくれて、またとぼけた演技もあってとても良い感じでした。どこかで見たことがあると思って調べてみると、Blade Runner 2049Joiを演じていたのがAnaだったということなので、私の好きな女優リストに入れておくことにします。

敵役となる謎の組織のリーダーLyutsifer Safinを演じているのが「ボヘミアン・ラプソディ」でFreddieを演じていたRami Malekだということは予告やポスターで見て期待していたところですが、最初から非常に謎めいた雰囲気を醸し出していて素晴らしかったのではないでしょうか。Ramiはまだ40歳ということですから、今後ますますの活躍が楽しみな俳優だと思います。

それにしても奇遇ながらコロナ禍にも微妙に関連しなくもないテーマというのが幸か不幸かという感じですが、本作の興行はどうなるでしょうか。私が観た上映回でも観客は中高年が中心だったように思いますが、ある種の様式美ではあるのでしょうが、スパイと美女というのがもう古臭いような気がしてしまいます。エンドロールの最後にはお決まりの”James Bond will return.”が表示されましたが、成功が約束されなければならないこのシリーズの今後も私は不安に感じてしまいました。今回で物語としても一区切りついた形なので、次作からは主演も交代して仕切り直しということになるのでしょうが、新しい要素を取り込んでどのように変わってくるのかが楽しみとも言えるかもしれませんし、ひょっとするとそれが最後のチャンスということになるのかもしれません。