今ならまだ引き返せる…かも
「弘法筆を選ばず」とは言いますが、弘法大師だってきっと書き心地の良い筆を使ったほうが気分良く書けたはずです。ソフトウェアエンジニアもどんな安物のキーボードでもプログラムを書くことはできますが、使い心地の良いキーボードを使ってプログラミングしたほうが生産性や品質が高くなるはず、と私は信じて、職場のPCにも本体に付属してきた安物ではなく、それなりのものを購入して使ってきました。最近はほとんど毎日在宅勤務になっているので、自宅のキーボードも惜しまず気に入ったものを購入するようになって、今は昨年購入したKeychron Q8をただ一点を除いて気に入って使っています。
その一点の不満というのは、バックティック/バッククオート(`
)とチルダ(~
)のキーがないということです。VIAを使って自由にキー配置は変更できるので、どこかのキーに割り当てるということはできるのですが、まったく使わないキーといえばcaps lockくらいなので、ここにコントロールキーを割り当てたとして元の左下隅をバックティックにするか、でもちょっと押しづらいのでいっそエスケープキーを置き換えようかともしたものの、エスケープキーは無意識に押すことが多くて間違えてしまう…となかなかいい場所がありません。バックティックはMarkdownのドキュメントを書くときに頻繁に使いますし、特にWindowsではIMEの切替時に使うので結構なストレスに感じていました。一時は直後に発売された一段キーが多いQ10に買い換えようかとだいぶ迷いましたが、ホームキーはほとんど使わないのではないかというアドバイスを聞いて、なんとか落ち着いているところです。ということで長くなりましたが、それ以外のところはかなり気に入っています。
しかし先日、Rebuildというポッドキャストの357回「Keyswitch Roomでnaoya氏がキーボード沼にハマっているという話をしていて、その中でかなりマニアックな話をしていたのですが、おすすめのキースイッチをいくつか上げていたのが気になってしまって、今まで満足していたのについ魔が差して私もいわゆる沼に方足を踏み入れてしまいました。
私が購入したのはGateronというこの筋では有名なメーカーの鉄板と言われるOil Kingというもので、AliExpressで中国から購入しました。日本円でいうと70キー分で6000円弱です。35個単位なのですが、私のキーボードは68キーなので2個余りますが、万一の不良を考えると丁度いい余裕ではないでしょうか。
スイッチはキーボードに付属してきたスイッチプラーを引っ掛けて引っ張れば抜けるのですが、少々コツが要るのと場所によってきつかったり緩かったりがあるようで、ちょっと面倒といえば面倒です。とはいえ、はんだ付けなどの手間とはまったく比べ物にならないお手軽さではあり、一時間もかかるような作業ではありません。
交換してみた感じでは、静かさや押し心地などはほぼ期待通りです。ただ、もともと付いていたスイッチもGateron G Pro Redというものでそこそこいいものだったのと、キーの押下圧(重さ)が45gfから55gfに重くなったのが実は好みではないことに気づいてしまったのとで、完全に満足とは言えなくなってしまいました。また、スイッチ本体が黒くてLEDの光が通らないため、キーボードのイルミネーションはほとんど見えなくなってしまったというのもありますが、私は常に消灯して使っているのでそれは特に問題ありません。
ということで、実際に簡単に交換できることがわかってしまったのと、案外面白いかもしれないと思ってしまったのとで、ひょっとすると私もこのまま沼にズブズブと入っていってしまうのかもしれません。普通の人はキーボードのスイッチが交換できるなんていうことも知らずに生きていくのではないかと思いますが、知ってしまうといやはや困ったものですね… とりあえず、押下圧が35gfくらいと軽く、1.5mmくらいの浅いところで反応するスイッチを探していますが、メーカーを横断してパラメトリック検索できるサイトとかないものですかね。