Amtrak時間と気持ちに余裕のある人向け。

アメリカではどこへ行くにも自動車で、ちょっと遠くへとなると途端に距離が長くなってしまうので飛行機を使うのが一般的になってしまい、長距離移動手段としての鉄道は一般的ではありません。鉄道が引かれていないわけではなく、あちらこちらに踏切があったりはするのですが、見かける列車は長大編成の貨物ばかりで、運悪く踏切に引っかかると長時間足止めをくらい散々な思いをしたりします。といっても、私が引っかかったのもこの1年弱で2回だけで、しかもそのうち1回はわずか数両の編成だったのですぐに開放されたのですが。

それはさておき、今回年末の長期連休でフロリダに来ているのですが、あまりオーランドに長いこといてもテーマパークの連続で疲れたり飽きたりしてしまってはもったいないですし、第一お金がかかってしかたがないので途中でもっとのんびり出来るところへと移動しようと考えました。ただ、そこで飛行機やレンタカーで移動するだけでは面白く無いなあと思案していたところ、かねてから乗ってみたいと思っていたAmtrakの路線がちょうどよい具合にあることが分かり、早速予約してみたのでした。予約はAmtrakのウェブサイトで簡単に行うことができて、送られてくるPDFファイルを印刷しておけばそれで乗車することができます。

荷物を預ける場合は発車時刻の45分前までにチェックインしろということなので、ホテルからオーランドの駅へタクシーで移動し、13:10の発車に対し12時前に到着しました。しかし、チェックインといっても何か手続きが必要というわけではなく拍子抜けしてしまいましたが、とりあえずスーツケースを預け、駅前のタイ料理店Thai Stopで昼食をとって待つことにしました。ちなみにここは店内も清潔感があり、料理もなかなかで、もう二度と来ることはないだろうというのが残念でした。

列車の到着時刻が近づいてくるとプラットフォームに列ができはじめたので私達も並びました。列車は10分ほど遅れて到着しましたが、これは全く想定の範囲内です。決まった改札口というものはないのですが、ロープで導入された先に車掌が立ち、iPhoneにバーコードリーダを付けたような機器でチケットのQRコードを読み取り、どこから列車に乗り込むかが指示されました。Amtrakの長距離路線は座席指定制なのですが、まさに乗車するその時まで自分の座席が何号車の何番なのかは分からず、というか決まっておらず、乗り込む直前に車掌が空いている席に割り当てていくような形になっています。しかもそれをマス目の入った紙に記入していくというアナログなものです。改札の車掌に指示された先に、その席を割り当てる役目の車掌がいるのです。座席指定はシステムの対応が必要なので投資対効果の問題があるのかもしれませんが、改札なんて予め駅員が対応していればすぐに乗り込めるのに、のんびりしたものです。

さて、乗降口は数箇所しか開けないので乗り降りにはかなりの時間がかかっていましたが、なんとかほぼ予定通りの停車時間15分で発車できたようです。私達が今回乗ったのはSilver Meteorという列車で、ニューヨークからフロリダ州マイアミまでの路線のごく一部です。全線では28時間かかるので寝台車も連結されていますが、私たちは5時間ほどの乗車なのでCoach Classという一般の座席です。機材がちょっと老朽化しており、お世辞にもきれいとはいえない車内ですが、座席は横4列で新幹線普通車よりもかなりゆったりしていますし、前後の間隔も広く、フットレスト、レッグレストも完備、AC電源もありました。短中距離路線では3列のBusiness Classもあるのですが、Coach Classでも十分快適です。
Amtrakの降車駅名札
席に付くと再び降車駅を聞かれ、その駅の略称を手書きした札を頭上の棚の前に差し込んでいくので、これは何のためなのだろうと思っていたのですが、途中の駅に近づいたところでようやくその意味が分かりました。Amtrakの列車は1日に数本しか走っていないので、寝ていて乗り過ごしたりすると大変なことになるので、各乗客の降車駅が近づくと車掌が教えに来てくれるのです。札はそのための目印というわけでした。親切なサービスですが、新幹線ほど混み合っていたらとてもやってられないでしょうね。

路線はほとんど単線なので、途中で上下線の行き違いのための待機がありましたが、日本の鉄道のように時間に正確に運行されていれば待ち時間もわずかで済むのでしょうが、Amtrakではせっかくそこまでそれなりのスピードを出して走っていたのに、15分ほども停車していました。そんなことがあっても私達の目的地フォート・ローダーデールにはほぼ予定の時刻に到着してしまったのが不思議、と思いきや、実は発車予定時刻に到着しただけで、積荷を下ろすのに時間がかかって結局発車は15分以上遅れてしまっていたのでした。預入手荷物が一度に台車に載らなかったので、荷物を客に配って台車を空にしてからまた列車から降ろしてくる、という何とも悠長なことをやっているのだから驚きます。最初から台車に荷物を載せた状態で列車に積んでおいて、駅では台車ごと積み替えるようにしたらすぐに終わるのに、なんて考えてしまうのですが、それでは駅員の仕事をなくしてしまうのでダメなのでしょうか。

そんなこんなで何につけてものんびりしているので、暇のある人にしかお勧めできない感じです。しかし、のんびりした旅をしたいという人にはうってつけと言えるのかもしれません。私自身は結構気に入ってしまったので、今度はシカゴからシアトルまでのEmpire Builderなんていう列車に乗ってみたいなあなんて考えています。これは2泊3日の46時間もの路線になるので当然寝台を取る必要がありますが、やはり数が限られているので夏休みのためには今から予約しておかないといけないようです。そんなに先の予定はなかなか立たないのですが…