Detroit Institute of Artsたまには芸術に触れるのも。

毎週土曜日に子供達を日本語補習校へ通わせている我が家では、子供を学校へ送ったその足で夫婦で買い物などに行くのが恒例になっています。しかし、そう毎週毎週買い物ばかりもしてはいられないので今週はどうしようかと考えたところ、子供と一緒でない方がいい所ということで思いついたのが美術館です。本当は小さいうちから芸術にはある程度触れておくべきだと思うのですが、残念ながらこれまでなかなかそういう機会を作れなかったので急には無理です。

ということで、今日はデトロイト美術館ことDetroit Institute of Arts Museumへ行ってきました。この美術館は全米有数の犯罪都市デトロイトの中心部に近いところにありますが、美術館周辺は昼間なら安全と言われています。まあそうでなかったら誰も見に行きませんよね。しかしながらフリーウェイを降りてからそこにたどり着くまでの沿道には廃墟や空き地が多く、やはり気を抜くことができません。

ビクビクしながら駐車場を見つけて車を停め、館内に入ればもう安心です。入館料は大人$8ともともと安いのですが、近隣の郡の住民は無料となっているようです。私の家はその隣の郡になっているためこの特典を受けることはできませんが、とてもいいことではないでしょうか。日本の公立の美術館にもぜひ見習ってほしいものです。
Self Portrait / Vincent Willem van Gogh
展示は古代エジプト・ギリシャやアメリカ原住民の美術品からヨーロッパとアメリカの近現代の作品まで揃っていますが、特にアメリカの作品が充実しているとのことです。これは日本ではあまり見ることができないものですから、私達にとっては貴重といえるかもしれません。またその他、ゴッホルノワールピカソなどの有名作品も収蔵されているのですが、作品の前には何も隔てるものがなく、人だかりがあるわけでもないので、これらの作品の間近に寄ってじっくりと見ることができるというのが素晴らしいことです。どんなに貴重な作品であってもあまりにさり気なく展示されているため、ついつい見過ごしてしまいそうになるほどです。

私が今回特に見ておきたかったのはゴッホの自画像のうち、麦わら帽子をかぶったものです。これは後輩Mが見たいと言っていたためですが、確かに数あるゴッホの自画像の中でも最も明るい雰囲気のもので、彼の精神状態も一番安定していた時期のものなのではないでしょうか。これまで写真で見たことはありましたが、実際に見てみると思っていたよりも小さなものでした。
Eleonora of Toledo and Her Son / Agnolo Bronzino
他に見た中で特に強く印象に残ったのはブロンズィーノの「エレオノーラ・ディ・トレドと子息ジョバンニの肖像」です。この作品に描かれているエレオノーラのドレスの生地がまるで写真のようで、シルクの光沢と立体的な刺繍が本物を見ているようにしか思えず、本当に驚かされました。またこれが500年近くも昔の絵と知って、さらに驚かされずにはいられません。

もうひとつ驚いたのは、美術館の建物に、実際のフランスのチャペルの一部が組み込まれてしまっていることです。ここには細かいステンドグラスが嵌めこまれているのですが、まるでヨーロッパの本物の教会のようだと思って近寄ったらフランスのチャペルだと銘板にあってびっくりしたのでした。1923年に実業家が購入し美術館に寄付したものだということですが、財力に物を言わせてこのようなものまで運んできてしまうとは恐れ入ります。

ということで、色々と驚かされるものもありましたが、こうしてたっぷり芸術に浸ってみると心が満たされるような気がしました。西洋美術を見るのはかなり久しぶりで、実は大人になって初めてではないかという気もするのですが、これまでとは違う見方ができて楽しむことができました。しかし今回はとても全部を見ることができず、まったく入ることもできなかった部屋もいくつもありますし、現代美術なども早足で見ただけで終わってしまいましたので、またもう一度ゆっくりと見に行きたいと思います。