travel | 狼系

Archives

First Cabin

滞在時間はわずかでしたが。

カプセルホテルというと終電を逃したサラリーマンが夜を過ごすためのものというイメージですが、幸か不幸か私は一度も利用したことがありません。地価の高い日本独特の業態ではないかと思いますが、旅館業法的には簡易宿所にあたり、「宿泊する場所を多数人で共用する構造及び設備を主とする施設」ということになっているので部屋に鍵をかけることができないようです。

このカプセルホテルも21世紀になってから進化を遂げていて、最近ではいろいろ高級なタイプのものができているようなのですが、そうした中の一つであるファーストキャビンに先日東京に行った際に宿泊してみることにしました。今回泊まったのは日比谷線築地駅のすぐ上にあるファーストキャビン築地で、銀座まで徒歩5分というようなところに安価に泊まることができるのもカプセルホテルならではでしょう。ちなみに私がここを選んだのは朝食に築地場外市場で海鮮丼を食べるという目論見のためでした。

一般的なカプセルホテルはカプセルが上下2段ズラッと並んでいるイメージですが、ファーストキャビンではそれに近い安価なエコノミークラスキャビンというものの他に、上下方向を専有できるビジネスクラスキャビン、さらに左右方向も広くなってテーブルが備えられたファーストクラスキャビンというものがあります。これらはもはやカプセルという感じではありません。またさらに、鍵のかかる個室タイプのプレミアムクラスキャビンというものもありますが、それでは普通で面白くないので、今回私が選んだのはビジネスクラスキャビンです。

宿泊料金はいろいろ条件により異なりますが、築地のビジネスクラスキャビンは素泊まりでだいたい3600円から5600円くらいの間のようです。他の場所では3000円程度で泊まれるようなので、やはり東京では高くなってしまうのですが、それでも一般のホテルに比べれば格安です。

まだ新しいということもあるのでしょうが、キャビン内も共用部分も非常に清潔で快適です。風呂はシャワーブースも大浴場もあるので、好きな方を利用すると良いでしょう。洗面所やトイレが共用なのは民宿などと同じように考えれば何ら問題はないでしょう。大きな荷物を持っている場合にはそれを広げる場所がないのが問題になりますが、今回私は事情によりスーツケースを持っていたものの、幸い廊下の末端の部屋を利用できたのでスーツケースを廊下に広げてしまいました。人通りのある部分だった場合にはどこか別のスペースで広げなければならなかったでしょう。なお、荷物をおいておく部分は別のところにあり、フロントでワイヤーロックを借りて固定しておくことができます。

私が気になったのは自分が音を立ててしまわないようにどうしても気を使ってしまうことです。チェックインが深夜になってしまったため、それから着替えたりするためにビニール袋をガサガサいわせたりするのも気になってしまって、ちょっと落ち着かないのが難点です。もう一つは空気の循環がないので風呂上がりの体がなかなか冷ませないことでしょうか。キャビン内の空調の調節はあるのですが、体に当たるほどの風は出てきませんでした。

結局深夜にチェックインして早朝に築地市場に遊びに行き、翌日もう一泊するつもりだったのに台風のせいで30分ほどでチェックアウトしてしまったので、全然ゆっくり過ごすことができなかったので堪能したとは言えないのですが、思っていた以上に快適でしたし、費用対効果としては悪くないと思います。ただ、やはり落ち着かないのであまり気が休まらないような感じはしましたが、とりあえず体は休めることができるので良いのではないでしょうか。

なお、ファーストキャビンはファーストクラス、ビジネスクラスという名前からわかるように飛行機がテーマになっているようなのですが、鉄道がテーマになったファーストキャビン・ステーションというのもあるようです。こちらは今のところ大阪天王寺と和歌山という関西のみの展開となっているようですが、内装が木目調になっていたりカーテンの柄が違っていたりして、また中には「トワイライトエクスプレス」の内装を再現したコンセプトルームなんていうものもあるようで、これは1泊16000円となかなかの値段ですがちょっと楽しげです。

The Continuing Evolution of C++ by Dr. Bjarne Stroustrup

まさしく勉強になりました。

先日、「東京に行って台風のせいで帰ってくるのが大変だった」という記事を書きましたが、いったい何のために東京に行ったのかは書きませんでした。実家へ行ったり長男に会ったりというのは実はあくまで「ついで」であって、本当の目的は東京大学で行われた「Special Lecture: “The Continuing Evolution of C++” by Dr. Bjarne Stroustrup, the inventor of the C++ language」という講演を聞きに行くことだったのです。

これは東京大学大学院情報理工学系研究科が講義の一環として開催したもので、学内向けの講演会ながら一般の参加も受け付けるということだったので申し込んでみたものです。参加登録は6月25日の正午12時からということだったのですが、私は勤務先の昼休みが12:15からなので休憩時間に入るやいなやアクセスしたところ、その時点で100名の枠で50番目ということだったので、人気のほどが伺えます。受付は先着順でしたが、最終的には定員の倍ほどの申し込みがあったようです。

会場は本郷キャンパスの講義室の一つでしたが、私は初めて訪問したのでお上りさんらしく東大の代名詞である赤門やら大学紛争で知られた安田講堂やら、写真でしか見たことのなかったものを見られたのも良かったです。一般に公開されているものなので誰でも自由に見られるのですが、私はこれまで機会がなかったのです。

さて講演の方へ話を移すと、知っている人なら知っていて当然ですが、講師はC++言語を開発したDr. Bjarne Stroustrupです。私にとってはこんな凄い人を肉眼で見られて、話を生で聞けるというだけで大興奮なのですが、知らない人にそれを伝えるのは難しいかもしれません。ちょっと違う分野で言えばBill Gatesのプレゼンが聞ける、というような感じでしょうか。まあ、Dr. Stroustrupは大富豪でもVIPでもないかもしれませんが、それくらい特別な人だということです。

とはいえ、私は実はC++を日頃使っているわけではないので、当初はそんな私にはもったいようにも思えました。大学の卒業論文はC++のクラスブラウザをC++で作るというものだったのですが、卒業後の仕事ではCをずっと使っていて、C++を使わないままちょうど25年も経ってしまっていたのです。しかし、今回の講演はそんな私にもってこいだったとも言えます。そのテーマが「C++のこれまでとこれからの進化」というようなものだったので、C++がどう良くなってきて、今後どうなっていくのかがわかり、結局は非常に有益なものとなったと思います。

講演はもちろん英語で通訳もありませんでしたし、Q&Aセッションでも時間いっぱいまで活発に質問が(英語で)行われていてさすが東大生と思ったのですが、博士のコメントで印象的だったのは、「C++はオブジェクト指向言語ではない」「CよりC++が非効率という場面はない」というようなことです。前者はC++はオブジェクト指向プログラミングを支援する機構を備えてはいるが、それを前提にしたものではないということ、後者はC++は高度な最適化を支援するようになっているのでC以上に効率的なコードを出力することができるはずだということでした。

これを聞いて私は業務に直接活かすことができるのではないかと思い、早速コードの一部をC++に書き換えてビルドできるようにしてみました。Cよりも厳密な型付けが必要なのでいい加減なプログラムはエラーになってしまい多くの人が苦労するのが目に見えるようですが、その分コードの品質は上がるはずです。出力されるコードの効率も博士が言っていた通り心配するようなことはなさそうです。いまだに私の業界ではCが主流ですが、環境も整いつつあり今後C++化の流れも遅ればせながらあるので、その先陣を切っていくのも良いのではないかと思いました。

直島へ

再びアート。

例年私は家族の誕生日と結婚記念日には休暇をとって、大抵は妻と二人でランチを楽しむことにしているのですが、今年は次男も高校生になって構う必要がなくなったということもあり、ちょっと長めに時間をとって足を伸ばしてみようということになりました。そこで、以前妻が行ってみたいと言っていた岡山沖にある、香川県に属する直島へと行ってみることにしました。直島へは宇野港から四国汽船のフェリーで20分、旅客船で15分という近さになります。このフェリーと旅客船の乗船券は共通ですが、時刻により使い分けられていて乗船場所が異なるので、時間に余裕が無いときは注意してください。

さて、直島に何があるのかというのは今さら説明するまでもないと思いますが、ベネッセアートサイト直島としてベネッセが運営するアートの施設が島内に点在し、島全体がアートで盛り上げられているような感じです。今年の正月に訪れた犬島と同じプロジェクトの、その本拠地とも言えます。島自体が犬島よりもだいぶ大きく、高低差もあるので歩いて回るのは大変なので、今回は港のすぐ近くで電動アシスト付きのレンタサイクルを1日1000円で借りましたが、これは大正解だったと思います。バスで回ることもできますが、時間に縛られることなく、電動アシストで坂もグイグイ登れるのでほとんど疲れることもありませんでした。

まず最初はANDO MUSEUMへと行ってみました。入り口が周囲の民家にあまりに溶け込んでいて、私達は1回通り過ぎてしまいましたが、なんとか中へ入ってみるとこの建物自体が木造民家の中に打放しコンクリートの構造という安藤忠雄の作品で、その中に他の安藤作品のいくつかを紹介する展示があるというものでした。住宅として使えるような空間にはなっておらず、全く実用的ではありませんが、その空間の遊びを楽しむということになるでしょうか。内部の展示はそのおまけでしかないと思います。

昼食はこのすぐそばの玄米心食 あいすなおというごはん屋さんで摂りました。こちらの売りは玄米を小豆と一緒に圧力釜で炊き上げ、それを3〜4日保温して寝かせているという玄米ご飯で、まるでもち米の赤飯のように本当にモチモチで美味しいです。私達は「あいすなおセット」という看板メニューを選びましたが、このごはんが完全に主役で、ごはんだけで美味しく食べることができます。おかずも豆腐と野菜のみの優しいビーガン対応のものですが、郷土料理の「呉汁」という味噌汁も非常に美味しく、魚や肉がないからといって物足りないということは一切なく、私はかなり満足しました。

食事の後はまた自転車をひとこぎして島の南西方向へと向かい、黄色い「南瓜」とベネッセハウスショップを見てからシャトルバスに乗って地中美術館へと向かいました。建物の大半が地中に埋まっていて見えないようになっていることからその名がつけられていますが、この建物自体も安藤忠雄によるもので、作品の一つとなっています。そしてその内部にはClaude Monet、James Turrell、Walter De Mariaの3名の作品だけが展示されているのですが、建物はこれらの作品に合わせて専用に設計されたものとなっており、建物と一体になって恒久的に設置されたものとなっています。

それだけに作品の演出は最高のものとなっており、有名なMonetの「睡蓮」が展示される部屋に足を踏み入れたときには文字通り息を呑みました。自然光のみで照らされているというその空間は圧倒的です。Turrellの「オープン・フィールド Open Field」という作品は得も言われぬ感覚を楽しむことができますし、「オープン・スカイ Open Sky」では実際以上の空間の広がりを感じることができます。ここでは「オープンスカイ・ナイトプログラム」という日没前後の光線の変化を楽しむことができるというものがとても良いそうなのでいつか行ってみたいものですが、その場合は島内での宿泊が必要となりますね。De Mariaの作品はヨーロッパの教会にも通じる荘厳さがあり、ある種の宗教的な感覚を感じてしまいました。

このあとは来た道を逆にたどって宮浦港の方へと戻り、「I♥湯」の前を通ってアカイトコーヒーで一休みしてから自転車を返し、フェリー乗り場でお土産を買って帰りました。振り返ってみるとこの日は普通の木曜日だったせいかどの施設でも人が少なく、行きの旅客船に乗ったときにもあまりに乗客が少なくて不安だったくらいなのですが、ゆっくりと楽しむことができたのがとても良かったです。また、そのせいなのか日本でのブームが去ったからなのか外国人の比率が高くなっていて、感覚的には観光客の半分以上が中国や欧米からの外国人でしたが、受け入れ体制は問題ないのかちょっと気になってしまいました。最近は京都などの定番観光地以外も世界に知られるようになって賑わっているのは良いことですが、ここに限らず外国人の間でがっかりスポットになっていないかも心配です。