広島は中国地方第一の都市として栄えているわけですが、観光で行くとなると見るべきところが限られてしまっているように思います。その原因の一つは第二次世界大戦の末期に投下された原子爆弾により街が破壊し尽くされてしまったことではないかと思うのですが、その原爆が今の広島の有力な観光資源となっているというのは皮肉なものです。
その原爆の資料が展示されている広島平和記念資料館は原爆ドームと並んでモニュメント的なものになっているのですが、2016年にアメリカ大統領のBarack Obamaが訪問したことで外国人にも広く知られることになったようで、私が今回訪れたときにも外国人観光客はかなり高い割合でした。
私はこれまでに何度も見学しているのですが、2019年に本館がリニューアルされたということで、また行ってみることにしたのでした。現在の入館料は大人200円ということでそれでもかなり安いと思いましたが、2007年の時点ではたった50円だったようなので、そこからするとだいぶ値上がりしているのですね。
展示内容は本館部分がだいぶ大きく変わっていて、犠牲になった人々のその当日朝や生前の様子を遺品や写真とともに伝えるようなものが中心で、かなり感情に訴えかけるものとなっていました。以前のおどろおどろしいジオラマなどは撤去されていて、必要以上に心理的に圧迫感を受けることが亡くなったのはいいのですが、これはずしりと来るものがあります。しかし反面、これらは原爆そのものとは直接関係がないことも多く、戦争被害の一般的なものでもあります。例えば今のウクライナやパレスチナで犠牲になっている人々にも同じように当てはまるものもあるのではないでしょうか。
核兵器の問題点は、大量破壊兵器であるということと、放射能により長期間にわたって影響が残ること、生存者にも苦痛を与える非人道的なものであること、といったことなのだと思いますが、あまりそのあたりにフォーカスが当たっていなかったように感じてしまいました。なお、後半の新館部分では技術的・科学的・歴史的な観点での展示となっていて、だいぶ色合いが異なっています。