日本経済新聞の記事「VWやホンダ、ボタン・つまみに回帰 平らなタッチ式改善」というものを知りました。これは今月はじめの日系クロステックの「クルマのHMIが物理スイッチに回帰、VW・ホンダはタッチ式を見直しへ」という記事を再構成したものだということで、速報としての価値のあるものではなく、傾向としての情報となります。これらは有料記事なので興味のある人だけが内容を読んでみればいいと思いますが、見出しだけでも伝えたいことはわかります。

これを見たときの私の感想は「何を今さら」というものです。30年以上前に私が車に興味を持った時にはすでに、メルセデス・ベンツなどでは各種スイッチをあえて異なる形にしたり、クリック感を持たせたりするなど、運転しながら視線を移すことなく操作できるようにしている、と言われていました。フォルクスワーゲンでも私が乗っていたゴルフ2などでは視線の移動量を減らすためにオーディオがエアコンの吹出口よりも上に装着されていたり、様々な人間工学的配慮がなされていたものですが、そういったものがいつの間にか失われてしまっていたのでしょうか。

私が現在乗っているMINIはHMIのタッチパネル化が進む前の2015年式ということもあり、一見どうでもいいような車内のイルミネーションの調整なども物理的なトグルスイッチにしたりと遊び心のある車ですが、エアコンなどのスイッチはもちろん、カーナビもタッチパネルではありません。

カーナビのタッチパネルは一見便利そうにも思えますが、それは停車しているときや助手席の人が操作するときだけで、運転しながら操作するためにはいいものではないと思います。たまに乗るレンタカーで実感していますが、たとえば縮尺を変えるためだけに画面を注視しなければならないというのは結構危険なことではないでしょうか。これはカーナビだけのことではなく、エアコンの設定もタッチパネルだったら「ちょっと暑いな」と思った時に手探りだけでつまみを回せるのと、パネルに視線を移して確認しなければならないのとでは、運転への注意力に大きな違いがあります。

自動車メーカーのモチベーションとしては先進的なイメージがあるということよりも、コストダウンができるということが大きかったのだろうと思いますが、それよりも第一に考えるべきは安全性ではないでしょうか。ユーザーからは「タッチパネルは使いにくい」という声が聞かれるということですが、そんなことは開発している間にわからなければならないことなのに、それがわからなかったのは開発期間短縮の弊害でしょうか。そんなことでは本末転倒もいいところなのですが。