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Joker (2019年の映画)

現実とそうかけ離れてもいないような気がするのが怖い。
🃏

これまでにここでも何度も書いていることですが、同じアメリカンコミックでもMarvel ComicsとDC Comicsではだいぶカラーが異なっていると思います。今、Marvel Cinematic Universeの作品群がすでに一つのジャンルと言ってもいいほど市場での地位を確立していますが、それに対してSupermanBatmanを擁するDC陣営はあまりうまく行っていると言えない状況ではないでしょうか。日本でもSupermanシリーズやBatmanシリーズはそれぞれ歴史や知名度があって知らない人はいないのでしょうが、Wonder Womanは最近の映画がそれなりにヒットしたとはいえ、その他のキャラクターが弱すぎます。

とはいえ、別にMarvelと同じようにする必要はありません。私自身の幼い頃のヒーローはSupermanでしたし、Batmanシリーズのダークで大人っぽい雰囲気も脳天気なMarvelよりも好みです。また、3年前に映画化されて2021年には続編が予定されているSuicide Squadもディズニー傘下のMarvelではとてもありえないような破天荒な作品で、私は大好きです。特にMargot Robbie演じるHarley Quinnがとても気に入っていて、今でもiPhoneの壁紙はHarleyにしているくらいなのですが、このHarley Quinnが主役の「ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 Birds of Prey」という作品も来年3月に公開が予定されていて、今から非常に楽しみにしているところです。

ということで前置きが長くなりましたが、このHarleyを狂気の世界に引きずり込んだ張本人であり、Batmanの宿敵の一人であるThe Joker がいかにして誕生したかを描いた作品「ジョーカー」がこの週末に公開されたので、こちらも早速観に行ってきました。

しかし実は、上映が始まって最初の30分ほどまでは観に来たことを後悔していました。というのは、この作品があまりにリアルなタッチで精神的に病んでいるThe JokerことArthur Fleckの状況を描いたものであり、とても痛々しいものだったからで、できるだけ気楽に生きていきたいと思っている私にとっては重すぎると感じたのです。しかしながら、それを乗り越えて観ているとThe Jokerについての理解を深めることができたと思います。

本作でArthurを演じているのはJoaquin Phoenixですが、この作品で生活に困窮するArtherを演じるために23kgほども減量したとのことで、演技も真に迫るものだったと思います。あまりに急激な減量は精神にも影響するということですから、もしかするとそれも寄与したのかも…なんていうことはあって欲しくありません。2008年の「ダークナイト」ではその公開直前に亡くなってしまったHeath Ledgerが主役を食う存在感の怪演を魅せていたのですが、本作のJoaquinの演技もArthurがThe Jokerに至る過程として決して劣るものではなかったと思います。

舞台となっているのはニューヨークをモデルとした架空の都市Gotham Cityですが、撮影がニューヨークで行われていることもあって紛れもなくニューヨークの出来事のように感じてしまいます。時代としては1981年の景気が悪く世の中が暗い頃なので、現代のニューヨークとは雰囲気は違うのですが、それでも非常に現実的に感じられてしまい、今でもニューヨークの街角ではArthurのような苦境に喘いでいる人がいて、現実のJokerが生まれてしまうのではないかと不安に…というのは言いすぎですね。しかし、ハイテクメカが登場するわけでもなく、荒唐無稽なところは一切ないので、設定さえ整ってしまったらこの狂気が現実のものとなってもおかしくないのではないかと思ってしまうのです。

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Ad Astra

結構死にます。
🚀

日米同時公開だったためか、Brad Pittの主演なのに公開がかなり近づくまでほとんど情報がなかった映画「アド・アストラ」、映画館での予告やテレビでの宣伝を見ると私好みのような気がしたので観る気になっていたのですが、どうも次男も興味を持ったようだったので半ば強引に二人で観に行ってきました。

この作品の舞台はそう遠くない未来ということになっていますが、地上から成層圏辺りまで達するようなアンテナが立っていたり、太陽系内はそれほど難なく行き来できるような状況になっていたり、技術的にはだいぶ進歩しているような世界です。ただ、月へ行く民間機も数人しか乗れないロケットなので、スター・トレックほど進んだ世界でもなく、だいぶ現実的な気がします。

Brad演じる主人公のRoy McBrideはアメリカの宇宙軍U.S. SpaceComに所属する宇宙飛行士ですが、ある時世界各地を大規模な電流サージが襲い、その直後に出頭を求められてある任務を告げられます。その任務というのが、地球外生命体の探査のため太陽系外へ向けて16年前に地球を発ったRoyの父親Clifford McBrideに関するもので、Royは火星の基地へと向かうことになります。しかしそこでRoyには隠されていた情報を知ることになり…というような感じです。

しかしこの作品、SFとしては色々と腑に落ちないところがあり、舞台をSFに借りた哲学的作品なのではないかと思いました。高校生の次男にも難しかったようで、終わったときにも微妙な反応でした。なかなか深い作品で、いい作品ではあっても面白いというものではないように思います。しかし、Bradの静かで落ち着いた演技はこれまでにないものではないでしょうか。むしろBradのこの演技がこの作品の全てと言ってもいいかもしれません。一方Royの妻Eve役ではLiv Tylerが出演しているのですが、重要な役柄ではあるものの出演シーンはかなり少なく、Livほどの人を使うのがもったいないような気がしてしまいました。

なお作品冒頭で明かされる通り、タイトルの”ad astra”とはラテン語“to the stars”の意味ですが、こうしてラテン語を使うという時点で小難しさを作り出しているのではないでしょうか。日本語で言えば漢語を使うようなものかと思いますが、ラテン語なんて日本人にはさらに馴染みがないので何の映画なのかさっぱりわかりませんね。まあポスターを見れば宇宙ものだということは一目瞭然ですが。

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Once Upon a Time in Hollywood

古き佳き時代。
🚬

Sharon Tateという女優と、そのSharonがManson Familyというカルト集団に惨殺されてしまった事件というのは日本ではどの程度知られているのでしょうか。事件が起こったのが今からちょうど50年前の1969年という私が生まれる直前であることもあり、私は何一つ知らなかったのですが、現代のようにインターネットで世界中の情報がリアルタイムに得られるような環境ではありませんでしたし、わたしの両親の世代であれば知っていることなのでしょうか。Sharon Tateについても26歳という若さで、これからというところで亡くなってしまったため、この事件を知らなければ知られていないのではないかと思いますが、映画監督Roman Polanskiの当時のだったとのことです。

というようなことなのですが、この事件を背景とし、SharonやRoman Polanskiも登場するQuentin Tarantino監督の作品「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」が昨日封切られたため、初日のレイトショーで早速観てきました。この日は夏休み最後の週末であったためか、それとも地元の姫路城が舞台となっている「引っ越し大名!」の公開初日だったためか、普段はレイトショーならガラガラの映画館の駐車場に長蛇の列ができていて、並んでいては開演に間に合わないようだったので仕方なく近隣のコインパーキングに停めざるを得ないという状況でした。そうとわかっていれば徒歩かバスかで行ったのですが仕方ありません。

それはさておき、本作ではピークを過ぎてやや落ち目の、かつてのテレビスター俳優Rick Daltonと、スタントダブルと友人としてRickを公私ともに支えるCliff Boothという二人を主人公としてハリウッドを舞台に起こる出来事を描いた話となっています。主人公らはそれぞれLeonardo DiCaprioBrad Pittという現代の映画スターが存在感たっぷりに演じており、特にLeoの劇中劇の演技にまで魅せられてしまうほどです。そしてSharon Tateを演じるのは「スーサイド・スクワッド」でのHarley Quinnがとても良かったMargot Robbieです。本作中のSharonはちょっと頭が足りない感じに描かれているように感じましたが、超ミニスカートで闊歩する姿はとてもキュートでした。

本作の論評を見ると「ストーリーがない」というようなことを言う人が多いようなのですが、確かにカット間の関係が非常に希薄で、一見不要なシーンが多々あり、一体どういう話なのか、どこへ向かっているのかということはわかりにくいかもしれません。しかし私が驚嘆したのは、それぞれのなんでもないカットが非常にかっこよく撮られているということで、おそらく様々な定石を踏まえて、巧妙に計算し尽くされているということなのでしょう。本当にただの移動シーンでも「うわっ」と思うようなカッコ良さで、映画オタクのTarantino監督ならではではないでしょうか。

なおTarantinoといえば過剰なバイオレンス描写も特徴ですが、それも最後にしっかりあります。なにしろ「シャロン・テート殺害事件」がテーマですから…