つくづく、こんな時代に生まれなくて良かった。
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キル・ビル」などのヒット作で知られる映画監督Quentin Tarantinoの作品はバイオレンス描写がえげつないということでも知られており、それが苦手なので私は今まで興味を持ちつつも一度も観たことがありませんでした。しかし、今回観た「ヘイトフル・エイト」については予告で観て興味を惹かれたのを覚えており、レビューを見ると私の好きな伏線回収もののように書かれていたので、意を決して観てみたというわけです。

ヘイトフル・エイト(吹替版)
(2016-08-16)
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物語の舞台は南北戦争集結の数年後のアメリカ中西部、ワイオミング州の山の中です。日本で暮らす普通の人にはワイオミング州といってもアメリカのどこなのかピンとこないと思いますが、州境が直線4本で描かれるほぼ完全な長方形の州で、その北西の角にイエローストーン国立公園を含んでいます。また、現在全米50州の中で最も人口が少なく、南北450km、東西550kmという広大な面積の中に50万人余りしか住んでいないということですから、今でも相当な田舎であり、当時はさらに相当な僻地だったということは間違いないでしょう。

南北戦争が終わったのは1865年ということですから、今からおよそ150年前のこと、日本で言えばちょうど幕末から明治維新の時期にかけての頃の話ということになります。日本の長州征討とアメリカの南北戦争がほぼ同じ時期の出来事だったということは私も知りませんでしたが、日本史と世界史とを完全に分けて教えられてきた弊害ですね。まあ、私は歴史の授業が非常に苦手で全く頭に入っていないだけなのかもしれませんが。

そんな時期のアメリカは全く野蛮な社会だったようです。昨年ヒットした「レッド・デッド・リデンプションII」というゲームが1899年のアメリカを舞台にしたオープンワールドゲームですが、この映画より若干あとにはなりますが同じような世界観で、一時期このゲームの実況プレイを観ていたのでちょっと馴染みのある感じでした。

Samuel L. Jackson演じる主人公のMarquis Warrenは元北軍少佐の賞金稼ぎで、いきなり3人分の死体を携えて登場します。そこへ通りがかったO.B. Jacksonの馬車に乗るKurt Russel演じるJohn Ruthと、Johnが連れた賞金首のDaisy Domergueらが物語に加わることになり、その後も加わって互いに信用できない者どうし合計8人となって駆け引きが繰り広げられるというものです。このストーリーが合計6章に区切られているというのは、小説を読んでいるような感じで面白い仕掛けではないでしょうか。

ストーリーは非常に面白かったのですが、やはり特に終盤の残虐描写が私にはキツかったです。もしも本で読んでいたとしたら、仮に同じような情景を頭に浮かべるのだとしても、きっとその方が純粋に楽しむことができたのではないかと思います。結局、Tarantinoを避けてきたのは正解だったということなのかもしれませんが、直接的な残虐描写を除けばとても素晴らしい監督なのだと思うので、なんだか大変残念です。

しかしこんな野蛮な時代に生まれなくて本当に良かったと思いますが、アメリカには未だに賞金稼ぎという職業が存在するということが驚きです。世界最高の文明社会のような面をしていますが、古いものやその名残もたくさん残っているのがアメリカなのですよね。