同じ日に同じ国で。
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COVID-19の最大の感染国になってしまったアメリカですが、2020年5月30日は大きなニュースが2つありました。

今月25日にミネアポリス白人警察官Derek ChauvinがGeorge Floydという黒人男性を取り押さえる際に膝で首を長時間押さえつけていたことが原因で死亡するという事件がありましたが、これに対する抗議のデモから暴動に発展し、30日には各地に飛び火することになりました。

アメリカで白人警察官による黒人への人種差別的暴力行動も度々起こることなら、その都度このような暴動も繰り返されていますが、今回はCOVID-19とそれに対応するためのロックダウンなどで人々の鬱憤が蓄積していたこともあってか、かなり規模が大きくなっているようです。しかし一方で、店舗の前で暴動をなんとか鎮めようとする善意の人もいるようで、「アメリカ人」もひとくくりにできるわけではありません。

日本から見ているとアメリカの警官はどうしてこんなことを繰り返してしまうのか、またか、と思ってしまうかもしれませんが、アメリカの警察官は日本よりも命がけで必死なのです。日本でも職務によっては同じようなことはあるかもしれませんが、相手が銃を持っていても不思議ではありませんし、常に死と隣り合わせで仕事に取り組んでいます。警察に車を止められたらハンドルの上に両手を置いて待ち、急な動作はせず、何かを取るときには許可を得てから、というのは私のアメリカ駐在中に言われていたことですが、警察官側も一瞬の判断が命取りになるので躊躇せず発砲するわけです。そのような緊張感が行き過ぎることで今回のような事件に発展してしまうのだと思います。

[2020-06-01 追記]
なお、だからといって今回のChauvinの事件を正当化する意図はまったくなく、なぜこんな愚かな行動を取ってしまう者が続出するのか、そのわけを考えてみたまでです。おそらく相手が白人であったなら起こらなかった事件でしょうが、アメリカの人種差別の問題は深く難しいものなのでここでは述べていません。また、今回全米の多くの警察官の命をさらに危険に晒すことになったという点においても、罪深い一件だと思っています。
[追記ここまで]

ただ、こうした抗議行動が暴動と略奪につながってしまうのは私にも理解のできないことですが、日本以外の国ではそれほど不思議なことではないようで、逆に同調圧力がいい方向に効いて統制の取れた日本のほうが特殊なようだというのは3.11のときにも話題になりましたね。

一つ目のニュースが長くなってしまいましたが、もう一つはSpaceXCrew Dragonに乗ってNASAの2人の宇宙飛行士が国際宇宙ステーションに向けて飛び立ったということです。打ち上げは3日前に計画されていたものが延期されていたものですが、今回は無事成功し、その様子はYouTubeで同時配信されましたが、日本では発射時刻が未明となってしまったため、私はちょっと遅れてリプレイで視聴しました。

NASAにとっては2011年のスペースシャトル退役以来の約9年ぶりとなる有人ロケットの打ち上げになりましたが、今回は民間企業による有人ロケットの打ち上げであるという点で歴史的なものとなりました。Dragonの打ち上げにかかる費用はスペースシャトルの3分の1程度にまで圧縮されているそうで、かなり効率化が進んでいるようです。

SpaceXのFalconロケットといえば、これまでは打ち上げそのものが見どころであったものに加えて、メインロケットとブースターロケットが帰ってきて垂直に着地する、というのも大きな見どころとなりました。今回はブースターロケットを使用していないためメインロケットのみの帰還となりましたが、これも無事に成功しています。なお、Of Cource I Still Love Youと名付けられたドローン船への着地時はいつも中継画像が途切れてしまうのですが、これはロケットが減速するための噴射で船が揺れ、中継用の衛星を捕捉できなくなってしまうのが原因であり、わずか数秒の中継のためには対策コストが見合わず、仕方がないことのようです。

このほか打ち上げの時に私が感じたのは、他のロケットの打ち上げのときよりすっと上がったな、ということです。実際にロケットの点火はリフトオフの直前でしたし、重量感があまり感じられないような気がしたのはロケット自体がスペースシャトルなどよりだいぶ軽量だからなのかもしれません。また、Crew Dragonの内外装がSFチックで未来的にクリーンな仕上げになっているのも印象的です。特にキャビンはスイッチと計器類で埋め尽くされていたスペースシャトルなどに対し、Crew Dragonではほぼ自動操縦であることもあって液晶タッチパネルが広がっているだけです。宇宙服やヘルメットもかなりスタイリッシュですし、空想していた未来が現実になったかのように感じられます。

ということで、奇しくもアメリカの明るい面と暗い面が同日に見られることになってしまったわけですが、これはどちらもアメリカの現実です。