他の地域では今川焼きや大判焼き、回転焼きなどと呼ばれるあの和菓子が、兵庫県では一般に「御座候」と呼ばれているというのは、ある程度知られるようになったかと思います。これは姫路に本社を置く同名企業の同名製品が県内で覇権を握っているからなのですが、地元出身の妻との会話から、どうやらこれはこのお菓子の在り方からして他の地域と違っていて、兵庫県民が持っている御座候への感覚と、他地域の人のそれとではまったく違うのではないかという考えに至りました。
御座候を販売する店舗は実は北は札幌から西は広島まであって、といっても東北と北陸にはないのですが、それでも80店舗以上もあります。そのうち半数以上が京阪神と姫路に集中しているのですが、この御座候の特徴は専門の常設店舗で売られているということではないでしょうか。私が東京近郊に住んでいたとき、今川焼きといえば駅前に出ている出店屋台で売られているもので、どこかの企業の特定の商品というものではなかったと思います。しかし、御座候のお膝元では、御座候のお店に行って購入するものなので、商品とその商品名とが強く結びつくことになったわけです。
例えば関東地方で「今川焼き」というものは特定の商品を指すのではなく、あの形状と構造からなる漠然としたイメージで、「鯛焼き」とほぼ同列にあるものだと思います。しかし、御座候はあくまで商品名なので、他社が売っている似たような商品を御座候と呼ぶことはおそらくないでしょう。なぜ「おそらく」なのかと言えば、兵庫県内で他店が売っている「御座候のようなもの」を、私が見たことがないからです。
したがって、「今川焼きのようなものを兵庫県では『御座候』と呼ぶ」というのは半分正しく半分間違いなのではないでしょうか。兵庫県でも日頃から御座候に親しんでいる人は今川焼きを見て御座候だと思うでしょうし、そうでない人は別の名前で呼ぶというだけではないかと思います。
なお、妻が子供の頃には1個65円程度で売られていた記憶があるとのことで、私が姫路に来た30年前の時点では80円だったと記憶しています。それが今は1個110円になっているということで、いつの間にか物価が上がっていることをここでも実感するのですが、それでも税込110円というのは安いのではないでしょうか。今や山崎製パンの一番ベーシックなあんパンでも税抜き115円、ちょっと小洒落たベーカリーのあんパンなら300円近いものもザラです。そんな中、店頭で手焼きされた出来たての御座候がわずか110円というのは破格とも言えます。しかもただ安いだけではなく、さっぱりしたあんこの美味しさは格別なので、姫路に来られた方は駅構内にある店舗で購入して新幹線の車内のお供やお土産にしてはいかがでしょうか。まあそうは言っても「ちょっと美味しい今川焼き」以上のものではないのですが。

