ドライバーからチーム関係者、ジャーナリストに至るまで誰もが賞賛する、ヘルマン・ティルケ氏の設計による新設のIstanbul Speed Parkで開催された初のトルコ・グランプリは、そのサーキットの素晴らしさにより実に見応えのあるものとなりました。このサーキットは高低差が70mにもなるアップダウンがあり、また左回りということでドライバーの首にかかる負担は他のサーキット以上とのことですが、コース幅もエスケープゾーンも広く取られており、非常にエキサイティングなレースが期待されます。

予選ではライコネンがルノーの2台を抑えてポールポジションを獲得し、またモントーヤが4位ということでルノー対マクラレンの構図が鮮明となっています。その後ろには予選では速いトゥルーリが今回も控えています。BAR Hondaは2台とも第8コーナーでコースアウトしてしまいバトンが13位、佐藤琢磨が14位のタイムと不満の残る結果となりましたが、さらに琢磨はピットに戻る周回で予選アタック中のウェーバーの進路を妨害してしまい、そのペナルティで審議の結果最後尾スタートということになってしまいました。

フェラーリの2台も腑甲斐無い結果に終わり、バリチェロは11番手、ミハエルはコースアウトしてノータイムでした。最近めっきり不調のウィリアムズはフリー走行では2台とも右リアタイヤがバンクするトラブルで不安が感じられましたが、予選ではハイドフェルドが6位、琢磨のせいで0.3秒はロスしたと主張しているウェーバーが0.013秒遅れで7位となり、マシンの性能から考えればまずまずの結果だったのではないかと思われます。

決勝では琢磨がフォーメーションラップからピットに戻り、給油してのピットスタートという奇策に出ましたが、これが結果的に功を奏することとなりました。ルノーの2台が好スタートを決め、フィジケラがトップで第1コーナーに飛び込みましたが、その後方ではマッサがクラッシュして部品を撒き散らしました。ピットスタートの琢磨は幸いこれをうまくかわすことができ、その後ラップを重ねるにつれてどんどんオーバーテイクしてゆきました。

中盤ではフリー走行に続きまたしても、しかも2台がそれぞれ2回ずつウィリアムズ勢は右リアタイヤがパンクするというトラブルがあり、結局2台ともリタイヤする結果になってしまいましたが、他のチームの車は全く問題ないということで原因はタイヤにあるというわけではなさそうです。またウェーバーとミハエルが接触するというアクシデントがあり、ミハエルの車はピットでの修復後、次戦の予選走行順を上げるためにラップを重ねるという帝王らしからぬシーンもありました。

ライコネンは結局オープニングラップで首位を難なく奪還し、そのままトップでチェッカーフラグを受けて圧倒的な速さを見せつけてくれました。モントーヤも終盤は2位につけ、ワンツーフィニッシュでアロンソとライコネンのポイント差を大きく縮める手助けができるかと思った矢先、最終ラップで周回遅れのモンテイロをかわす際に追突されてスピンを喫し、3位に沈んでしまいました。

琢磨は11台抜きで9位まで追い上げたもののポイントには1歩及ばず、しかも8位のクリエンには2秒差まで詰め寄っていたのに、という非常に歯痒い結果となってしまいました。このままでは本当に来季のシートが危うくなってしまいますが、内容的には非常にいいレースだったので次戦に期待が持てるのではないでしょうか。

それにしてもこのサーキット、今のF1カレンダーの中で最も素晴らしい出来栄えであると言っていいのではないでしょうか。テクニカルなコースのせいであれだけスピンやコースアウトするドライバーが続出し、それにも関わらず広いエスケープゾーンのおかげでクラッシュせずにコースに復帰してレースを続けることができる、またコース幅が広いのでオーバーテイクシーンが数多く見ることできました。トルコではグランプリ開催前に「税金を投入しすぎだ」として批判も的にもなったそうですが、これだけの成功を収めることができれば今後の経済効果も見込むことができるのではないでしょうか。ヨーロッパからは中途半端に遠いので一部のチームスタッフには不評のようですが…

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