A Sound of Thunder時間旅行ができるようになったとすると、過去の世界に何らかの影響を与えて変えてしまうことにより、それが未来を変えることにつながり、結果的に過去に行ったその本人にも波及してしまうという「タイムパラドックス」が必ず問題になってきます。本人に及ぶ影響により時間旅行がなかったものになってしまうとすると、今度は過去を変えることもなくなってしまい、やっぱり時間旅行があることになり…というジレンマに陥ってしまうので、そもそも時間旅行というものは不可能なのだ、という人もいます。また、時間旅行とはいっても行く先は自分のいる世界の過去ではなく、それと並行に時間が流れている別の世界であり、過去に影響を与えたとしてもそれは直接自分に跳ね返ってくることはない、というパラレルワールドの概念を説く人もいます。それはそれで色々と疑問は湧いてくるのですが、そもそも空想の世界の話にすぎないので、そうやって考えを巡らすこと自体が楽しめればそれはそれでいいのではないかと思います。

ということで、時間旅行が可能になった時代に恐竜のいる時代へ遡って恐竜を倒す「タイム・サファリ」というツアーの客が一匹の蝶を誤って踏みつぶしてしまうことにより、生物の進化に大きな変化が起こって未来の世界が大変なことになる、という映画「サウンド・オブ・サンダー」を観てみました。

サウンド・オブ・サンダー デラックス版
ジェネオン エンタテインメント (2006/07/21)

倒す恐竜自体はいずれにしてもその直後に死ぬ運命にあることがわかっていて、それを殺してしまうこと自体は問題がないように管理されているという設定です。毎日毎日同じ自国の世界へ「ジャンプ」して恐竜を倒しに行っているはずなのに、ツアーの一行は互いに遭遇しないのはなぜなのか、というのが私のもっとも大きな疑問で、他にも色々つっこみどころはあるのですが、あまり細かいことを気にする人には向いていない映画なのかもしれません。

映画の構想自体は非常に壮大なスケールのものなのですが、制作費がそれに全く追いつかなかったようで、全体的に金がかけられていないことがあからさまにわかってしまう、非常にチープな作りのB級作品になってしまっています。70年代の映画と見まがうような安っぽい書き割りや、PCを使って趣味で作ったかのようなCGもかなりいただけませんが、シーンによってはまともなところも一応あります。まあ、そういうところにこだわって観てもいけないということなのでしょう。

しかし、過去の世界から段階的に波及してくる進化の波が、まさしく津波のように襲ってくるという表現はなかなか独創的で面白いのではないかと思います。最初に天候が変化し、その後植物、動物、と影響が及び、じわじわと最終的な進化形態であるという人類に迫ってくるのですが、人類が変化してしまうともう元に戻すこともできないのでそれがタイムリミットとなっており、ハラハラドキドキの展開を演出しています。また、植物に覆われた都市に生息する様々な生き物が人間を襲ってくるというのもスリルを高めていますが、私はこういうのが苦手で一気に観ることができず、細切れにDVDを止めて自分を落ち着かせてからでなければ先に進むことができませんでした。何とも臆病な自分に嫌になりますが、何でこんな我慢をしながら観る必要があるのかもわからなくなっています。

ということで、SFとして観てしまうとあまり満足度は高くないのではないかと思いますが、スリラー好きな人には悪くないのかもしれません。もうちょっと潤沢な資金がつぎ込まれていればまた違った作品になったのではないかとも思われますが、これはこれでカルトな魅力があったりもするのでしょうか。ストーリー上はロマンスらしきものもなく、実に硬派な仕上がりの一本でした。