Panasonic若い人にはこちらの方が馴染みがあるでしょうか

9歳で丁稚奉公に出たという松下幸之助氏が一代で築き上げた松下電器産業は長らく日本一の総合家電メーカーとして君臨していますが、製品のブランドとしては国内の白物家電には「ナショナル」、国内のAV機器と海外向け製品には「パナソニック」という2つのブランドを使い分けるような状態となっていました。もともと使用していた「ナショナル」の商標がアメリカ進出時に他社が先に使用していたというのがブランド変更の理由だったわけですが、後に国内でも「パナソニック」ブランドをAV機器に使うようになってからは「ナショナル」ブランドは白物家電のものという古くさいイメージになってしまい、「パナソニック」は先進的なイメージで捉える人が多くなったようです。

こういう社名と2つのブランドがバラバラの状態というのはブランドイメージの戦略上好ましいものではなく、サムスンソニーに大きく後れを取ってしまったことに危機感を抱き、10月1日を以て松下電器産業の社名をパナソニック株式会社に変更すると発表しました。松下ほどの大規模な企業であるため、この社名変更にかかる経費はおよそ300億円と想定しているそうですが、それだけの費用に見合う戦略上の効果があるとの判断で踏み切ることになったのでしょう。

もともと海外やAV機器では使用していたブランドを社名に当てるだけなので競合他社は大きな影響はないと考えているようですが、社名変更そのものよりは、ナショナルからパナソニックへのブランド変更の影響の方が大きいのではないでしょうか。パナソニックブランドの白物家電というのは当初は違和感が拭えないでしょうし、特に高齢の方などは説明を受けるまで知らないブランドだと思ってしまいかねません。短期的に見ると少々危険なことにも思えますが、長い目で見ればブランド統一というのはプラスに働くでしょうか。

松下で働く方々にとってはそれぞれ感慨深いものもあるかとは思いますが、創業家の名を社名から外すことで、さらなる飛躍を目指し再出発するにはいいきっかけとなることでしょう。