小林可夢偉これは誰が見ても凄いと思うはず。

モータースポーツの最高峰と言われるFormula 1(F1)ですが、日本では一時期のブームはすっかり彼方へ消え去り、一部の熱心なファンだけが楽しむものになってしまったような気がします。リーマンショックに始まる世界的な不況もあって、ワークス参戦していたホンダトヨタは相次いで撤退してしまいましたし、ブリジストンのタイヤ供給も今年限りということになっています。

私も以前は夜更かしして深夜のテレビ中継を観ていたりしていたものですが、F1そのものがもともとヨーロッパの文化であるため、日本チームがちょっと活躍するとレギュレーションが変更されて排斥されてしまうような傾向にあることに嫌気がさし、また応援していた佐藤琢磨がシートを逃したということもあってしばらく遠ざかってしまっていました。しかし昨日、妻の実家に行ったときに何気なく新聞のテレビ欄を見てみると、ちょうど鈴鹿サーキットで開催されていた日本グランプリのテレビ中継が行われている最中ということに気付いたので、その場でテレビを点けて見始めました。その時点ですでに終盤あと十数周というところだったのですが、そこからでもかなりの見どころがありました。

ポールポジションからトップをほぼ守り続けていたのは前年の覇者でもあるSebastian Vettelですが、磐石すぎたのかテレビでは彼の走りはほとんど見ることができませんでした。そのかわりに画面や解説者らの話題を独占していたのは今年唯一となってしまった日本人レギュラードライバーの小林可夢偉です。私が見始めたときには12位を走行していたのですが、その走りはかなりアグレッシブなもので、私が見ているうちに次々とオーバーテイクを見せ、結局最終的には入賞圏内はおろか7位という立派な結果を残すことになっていました。

オーバーテイクショーの舞台となったのは主にヘアピンコーナーだったのですが、圧巻だったのは史上最年少でF1ドライバーになったというJaime Alguersuariに仕掛けたオーバーテイクです。これまで誰もやったことがないのではないかという、セオリーに反したタイトコーナーの外側からのパッシングには驚きました。これは接触を免れず、このままリタイアしてしまうのではないかと目を覆いたくなる一瞬でしたが、確かに軽い接触はあったもののなんとか抜き去り、ほっと安堵です。Alguersuariの方はパーツを破損し予定外のピットストップを余儀なくされたようですが、一方可夢偉の方は空力パーツにダメージを追いながらもどんどんペースを上げ、ついにはファステストラップをたたき出す始末… こんなドライバーが他にいるでしょうか。あのパーツは要らなかったんじゃないかというコメントもありましたが、それにしてもこの積極的で果敢な走りには世界中のF1ファン誰もが魅せられたはずです。

ということで、俄然面白くなってきた気がするF1は今後またチェックしていきたいと思いますが、次戦は初開催の韓国グランプリです。舞台となる韓国インターナショナルサーキットはFIAによる最終検査が今日に延期されるほど工事の遅れが問題となっているようですが、無事に開催されるのでしょうか。

ところで、歴代の日本人ドライバーの中で、鈴木亜久里片山右京高木虎之介山本左近、そして小林可夢偉とちょっと個性的なファーストネームを持つ人が目立つような気がするのですが、これはやはり命名一つとっても平凡な親のもとで育ってはF1ドライバーになるのは難しいということなのでしょうか。ちなみに「可夢偉」というのは大な能にする、ということから付けられたのだそうですが、確かに名前に負けない素晴らしい夢を実現しているようです。