Arrival - Heptapod B "HUMAN"これが本当のサイエンスフィクション。

先週末公開された映画「メッセージ」は、予告にも登場する宇宙船の形状が米菓のばかうけに似ているということで巷では話題になっているようですが、これに対して監督が「ばかうけに影響を受けた」とジョークで応えたり、ばかうけの販売元が「”メッセージ”が”ばかうけ”しますように!」と大ヒット祈願したりと変な盛り上がりをしているようです。しかし私はこれとは無関係に、以前読んだ「あなたの人生の物語」が原作になっているということで観たいと思っていたのですが、地元シネコンでは平日には早退しなければ観られない時間かレイトショーでしか上映されていなかったので、先週末は都合が合わなかったので今日の夕方まで観ることができませんでした。

原作を読んだときにはこの作品を原作にしてどう映像化するのかと思っていましたが、まったく違和感もわかりにくいこともなく、非常に自然に映像作品となっていて素晴らしいです。結末部分は原作から少々アレンジされているようでしたが、それまでの部分はとても忠実に描かれており、そしてその結末部分も原作から大きく外れることはなく、むしろ原作の難しかった部分がわかりやすく説明されているように感じました。

突然地球上の12か所に同時に現れた宇宙船らしき物体で、宇宙人らしきものとコミュニケーションを図るために米軍に呼ばれたのがAmy Adams演じる主人公の言語学者Louise Banksで、科学面での分析のために呼ばれたのが理論物理学者のIan Donnellyで、こちらはJeremy Rennerが演じています。その「宇宙人」の音声は単語になっているのかさえわからず、どこから手を付けるべきかもわからない状況ですが、一方で米軍はその「宇宙人」がどこから来たのか、その来訪の目的は何なのかを一刻も早く聞き出すことを求めてきます。

しかし、実際に異星人と接触するとしたらこうなるのではないでしょうか。よくあるSF映画ではいつの間にか宇宙人と対話が成立していたりしますが、文化も科学レベルも違う相手とのコミュニケーションはそうそう簡単に成り立つものではないでしょう。まあそれ以前にいきなり対決姿勢になっているものも多いですが、それも実際ありうることでしょう。どんな星の言葉でも通訳できてしまう機械翻訳機があるという世界の作品もありますが、そんなものは魔法と大差ありませんね。ちなみに私が大好きなスター・ウォーズは、SFはSFでもスペースファンタジーの略なので別枠です。

ということで、この作品は極めてシリアスなサイエンスフィクションになっています。そんなことはありえないとわかっていても、なんだか納得できてしまう、そういうバランスが上質なSF作品の証でしょう。