King Kong

今年は”Star Wars Episode 3 – The Revenge of Sith”、”Harry Potter and the Goblet of Fire”と期待と前評判を裏切らない超大作が封切られましたが、暮れも押し迫った12月に入ってまた一つ、話題性に満ち溢れた超大作、”King Kong“が公開されました。この作品は言わずと知れたアカデミー賞監督、”The Lord of the Rings”シリーズのPeter Jacksonの監督ですし、指環ファンの私としては逃すわけにもいかないので、別に映画の日でもありませんでしたが観に行ってきました。

そもそもPeter Jacksonが映画監督を志すようになったきっかけが1933年公開のKing Kongと言われており、この作品はそのリメイクとなるわけですが、さすがに自身の思い入れの強い映画なので気合の入り方が違います。制作費も300億円を超えるとも言われる史上最高額となっているのですが、さてその回収は可能なのでしょうか…そして、その後リメイクを繰り返されている名作を超えることができるのでしょうか。

The Lord of the Ringsの3作やHarry Potterシリーズなどもそうであるように最近では珍しくなくなってきてしまいましたが、上映時間も3時間を超える長編です。内容が濃い上に長ければ観る方にとっては喜ぶべきことでもありますが、無駄に長く間延びしているのは困り物です。この作品の場合には、全編に渡って非常に凝った美しい映像が繰り広げられるのですが、とても良くできているというKongが登場するとわかってしまっているだけにそれが待ち遠しく、Skull Islandに上陸するまでのストーリーがやや冗長に感じられてしまいました。物語の登場人物の背景を描き出すためになくてはならないものなのはわかりますが、もう少し簡潔であってもあまり影響はなかったかもしれません。とはいえ、1930年代のNew Yorkの街並みや航海中の様子などはとてもリアルに作られていて、一見の価値はあります。

しかし舞台をSkull Islandに移すと描写はますますリアリティを増し、美しい世界に入り込むことになります。その中でも原住民は恐しく、生き物が何でも巨大に進化した世界の巨大なムカデなどの虫が本物さながらで実に気色悪くできています。何種類かの恐竜も登場し、これらの動きもスムーズですが、CG技術の進歩であまり珍しいものではなくなってしまいました。

そして、やはり何といっても見どころはKongの動きと表情ですが、これは本当に素晴らしいものです。巨額の制作費が注ぎ込まれているのも納得できる出来で、セリフを喋らないKongの心情がしっかりと観客に伝わってくる豊かな表情を作り出し、Naomi Watts演じるAnnとの心の交流が無理なく描かれています。また、Kongが恐竜と闘うシーンやKongの吠える場面などは映画館の大スクリーンで観ると一層の迫力です。こればかりは自宅でDVDを観てもわからないでしょうから、映画館に足を運ぶ動機として十分かと思います。

私は1933年のオリジナルも1976年のリメイク版も観ていないのですが、これをきっかけに観てみようかという気になってきました。映像的には間違いなく今回のPeter Jackson版がベストでしょうが、比較してみるとそれぞれのいいところがあるのではないかと思います。今回の作品は映像作品としての出来は文句の付けようがない秀作ですが、あまり心に残るものがなかったような気がしてしまうのは脚本のせいなのでしょうか。やはり映画というのは物語を見せるものですから、映像と脚本のどちらかだけが秀でているだけではダメなのですね。もちろん脚本も決して駄作というわけではないのですが、映像との釣り合いでそう感じてしまいました。

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