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シャンカワカーン

ちょっとした覚悟が必要です。

「美味しい食べ物の美味しそうな写真を撮るために旅をする」というのが近年の趣味になっている私ですが、個別の飲食店についてはあまり記事にしていません。特に理由があって避けているわけではなく、一つの記事にできるほど文章で描写する力がないだけなのですが、先日訪問した「シャンカワカーン」というレストランについてはなんとかなりそうなほど面白かったので書いてみることにしました。

この変わった店名についてちょっと一生懸命調べてみたところ、アメリカ先住民のラコタ語の言葉で”shanka”が「馬もしくは犬」、”wakan”が「神聖な」を意味するようなので、「神聖な馬」という意味の言葉から取っているのではないかと思われます。ただ、これはあくまで私の推測に過ぎないので、また次に行ったらぜひ聞いてみたいと思います。

さて、このレストランの何が特筆すべきなのかというと、その立地です。福山市街の北に位置するのですが、それは中国山地の山の中、南北に走る国道182号線からちょっと逸れたところにあり、藤尾ダムという農業用ダムのダム湖に囲まれた半島状の土地にあります。凄いのは国道からここに至るまでの道で、途中からは舗装されておらずすれ違いもできない細い道を進まなければならず、知らなければ絶対にたどり着くことのない場所です。

そのたどり着いた先で待っている店主は少々気難しげに見え、こちらの方が気を使ってしまう感じですが、敬意を払って接すれば良いだけのことでしょう。しかし、私とほぼ同時に入った学生グループは冒険のつもりで来たのかちょっと不躾な発言(「高い」とか?)をしたらしく店主の機嫌を損ねてしまったようですが、そうなると互いに不幸なだけですね。

こちらで提供されるのはワイルドなカウボーイ風ステーキで、厚みのある赤身肉にかぶりつくことができます。しっかりとしたボリュームのある肉なのでお値段もそれなりにしますが、こんなところまでやってきてファミレス価格のはずはありません。客の方もそれなりの品質を期待してやってくるはずですから、お店の方もそれに応えてくれているわけです。

しかしステーキもさることながら私が素晴らしいと思ったのは、セットに付くチリスープが日本では珍しい本物のチリの味であったことです。あくまでスープなので本当のチリとは違うのですが、味付けはまさにチリです。ちょっと聞いてみると「アメリカの人に教えてもらった」とかで、まさしく本物の、私にはちょっと懐かしい味でした。

またこちらではテラスにも席が設けられているので、気候のいい時期にはここがおすすめです。湖に突き出た半島という立地なので、必然的にちょっとした高台になっており、目の前180度に緑の木々が広がっていました。紅葉の時期であればさぞかし見事であろうという感じでしたが、市街地よりも何度か気温は低いようだったので、その時期を誤らないようにしなければなりません。

なお、店の横の車庫にはベントレーが駐車されていたのですが、こんな山の中でベントレーに乗っているというのはちょっと普通ではありません。この店自体もベントレーが買えるほど儲かっているというようにはとても見えませんでしたので、言い方は悪いですが金持ちの道楽というか、すでにひと財産築いたあとの趣味としてやっているという感じなのかもしれません。しかしだからといって手を抜いているわけではなく、むしろ随所にこだわりを感じさせるお店だったのは儲けに走る必要もないということなのでしょうか。まあ当人から聞いたわけでもなく、私の憶測に過ぎないのですが。