よく考えて票を投じましょう。
麻生総理が拒み続けたとされる解散が先月行われ、それによって明日8月30日に衆議院議員総選挙が行われることになっています。今回の選挙ではついに民主党が政権を握るのがほぼ確実とされているようですが、その民主党が掲げるマニフェストの中ではそれほど高い優先順位でないにも関わらず注目されているのが「高速道路無料化」という項目です。
自分では車を運転しない、高速道路は走らないというような人でも、トラックでの流通には欠かせない高速道路ですから、これが無料化されたときの社会的な影響はかなり大きなものとなり、仮に実現したとするとそのメリット・デメリットというのは誰もが受け入れなければならないものになります。メディアにより取り上げられる市民の声では歓迎する声が高いように見える一方、各方面からは批判の声も上がっており、特に社民党なども批判的な態度を明らかにしているようですが、はたしてこの政策は歓迎すべきものなのか、またその実現性はどの程度あるものなのでしょうか。
民主党のマニフェストをそのまま引用すると、次のように記載されています。
30.高速道路を原則無料化して、地域経済の活性化を図る
【政策目的】
○流通コストの引き下げを通じて、生活コストを引き下げる。
○産地から消費地へ商品を運びやすいようにして、地域経済を活性化する。
○高速道路の出入り口を増設し、今ある社会資本を有効に使って、渋滞などの経済的損失を軽減する。
【具体策】
○割引率の順次拡大などの社会実験を実施し、その影響を確認しながら、高速道路を無料化していく。
【所要額】
1.3 兆円程度
この政策を批判する人が一番に掲げるのは財源の問題です。このマニフェスト全体を通して財源が実に不明確で、党首討論などでも攻撃の対象になっていましたが、「無駄を無くせば大丈夫だと思っている」というだけではあまりに説得力がありません。本当に大丈夫なのでしょうか。ちなみに、もう一つ注目されている子ども手当についても大きな財源が必要ですが、こちらは扶養控除を撤廃することで相殺するので大丈夫なようです。しかし専業主婦の皆さんはご存じなのでしょうか? 働いた方が得な状況を作って失業率は大丈夫なのでしょうか?
さて、財源さえ解決されているものだとすれば、高速道路が利用しやすくなっていいことづくめなのかというと、もう一つ批判の的となっているのは渋滞が増えると予想されることで、それが経済の非効率化と環境破壊に繋がるとされています。これに対し民主党は「料金所がなければ渋滞するポイントもなくなる」と説明していますが、それは本当でしょうか。最近の首都圏の事情はよくわかりませんが、私が遭遇する渋滞は料金所とは無関係なトンネルや上り坂、そして事故の地点を起点としたものばかりです。
私自身も高速道路は無料であるべきとは考えているのですが、今すぐにそれを実現してしまうというのは問題があるのではないかという立場です。ヨーロッパなどでは無料なのが当たり前だからという主張も耳にしますが、残念ながら日本の高速道路の現状は欧米とは少々異なるものになっています。もともと無料を前提とした交通量で設計された道路と、いずれ無料になるという建前で設計されたものとでは大きな違いがあります。日本の高速道路では車線数も不足しているでしょうし、インターチェンジの構造もスムーズに流出入できるようにはなっていません。まずはこれらを改めてからでないと無謀というものではないでしょうか。
とはいえ、無料化に向かって進む、ということが明らかに示されるのであればそれは歓迎すべきです。これまで通り自民党が安泰なのでは何も変わらないでしょうから、いいきっかけになるのは間違いありません。また、民主党が政権を取ったとしても、実際に無料化に踏み切るためには高いハードルがいくつも待ち構えており、結局トーンダウンするのではないかと予測しています。したがって、どちらが政権を取ることになったとしても、これまでと何も変わらないということはなく、また激変してしまうということもないのではないかと、いかにも日本的な流れと読んでいるのですが、はたしてどうなることでしょうか…?