後出しジャンケンかもしれませんが。
今年4月、ゴールデンウィークに入る直前になって「メキシコで豚インフルエンザが流行」というのがニュースになっていたのはずいぶん前のことのような気がしてしまいますが、その「豚インフルエンザ」と呼ばれていた新型インフルエンザA H1N1は10日ほど前に神戸市の高校生の感染が確認されたと思ったら、一気に関西圏に広まり、私の住む街でも感染者がいたことから学校が1週間休校になるなど、大騒ぎになりました。
しかし、「人の噂も七十五日」どころか、5日も学校が休みになったことですっかりうんざりしてしまったのか、この週末にはマスク姿の人もあまり見かけなくなり、緊張感は完全に途絶えてしまったようです。近所のショッピングモールに買い物にいったときも、入口のエスカレーター脇には消毒用アルコールのボトルが寂しく置かれていましたが、それを実際に使う人の姿は見られませんでした。
これも政府がこれまでのスタンスを大きく変えたことが報じられたためでしょう。水際対策として北米からの飛行機は入国前に機内で物々しい検疫が行われたりしていたのを、既にその時期は過ぎたとして取りやめたというのが心理的に大きな影響を与えているのではないかと思いますが、もともとすでにメキシコやアメリカでは蔓延してしまっていて根絶など望めそうにないインフルエンザを食い止めるための検疫をいったいいつまで続けるつもりだったのでしょうか。今はちょうどもともと計画していたその時期だということなのでしょうか。
また、当初メキシコでは死者が数十人規模で出ているということで深刻に受け止められたのではないかと思いますが、実はその時点で感染者数は1万人を超えていて、その後アメリカで感染者が出たというときには死者が報告されなかったことから、結構早い時期に鳥インフルエンザのような高病原性ではないということはわかっていたのではないかと思います。しかしまた、それがわかったあとでも「いつ高病原性に変異するかわからない」などと当たり前のことを大げさに言う人がいて不安を煽っていましたが、それは季節性のインフルエンザでも全く同じことであり、そんなことを気にしていても仕方のないことです。季節性のものと唯一違うのはワクチンがないことに尽きるわけで、ことさら大騒ぎする理由が私には理解できませんでした。
結局、新型インフルエンザとして想定されていたものが高病原性の鳥インフルエンザであったため、厚生労働省も自治体もそれに準じた対応を取るしかなかったということなのでしょう。とはいえ、新型インフルエンザをそのまま受け入れてしまって大流行してしまったとすると、一人一人の症状は大したことがなかったとしても社会機能は一気に麻痺してしまうことになるので、ちょっとずつ順番に感染して免疫を得るというのが重要だったのでしょう。
しかし、マスコミが大騒ぎしてマスクがバカ売れしてしまったりしましたが、今回の騒動で私が恐かったのはインフルエンザに感染すること自体よりも、仮に感染してしまったときに受ける社会的制裁の方です。勤務先からは余計な追及を受けそうですし、下手すれば新聞に載って晒し者になったり、病気が治っても何事もなく職場に復帰できるものなのか、勤務査定が下がってしまったりしないのかと変な心配ばかりしてしまいました。私はそれが恐くてマスクをしていた日もありましたが、やっぱり熱くて息苦しいので長続きせず…まあ今からならうつってしまったとしても1週間休むくらいで済みそうですから、強毒化する前に免疫を獲得した方がいいかもしれません。