The Hunger Games: Katniss Everdeenあまりお勧めは…

集められた人々が最後の一人になるまで互いに殺し合い、それを誰かが見ているという設定の映画は、古くはArnold Schwarzenegger主演の1987年の作品「バトルランナー」、比較的記憶にあたらしいところでは(と言っても既に前世紀の2000年の作品ですが)残虐性が話題になり国会でも取り上げられた深作欣二監督の「バトル・ロワイアル」などがありますが、今回観た「ハンガー・ゲーム」もそんな映画でした。ここに挙げた過去の2作品も小説を映画化したものですが、この「ハンガー・ゲーム」も欧米で青少年を中心に人気のヤングアダルト小説の映画化で、映画自体も大ヒットとなりました。

タイトルでもある「ハンガー・ゲーム」とは、現代の文明が崩壊した後の未来のアメリカで、高度に文明が発達して裕福なキャピトルを囲む12の貧しい地域から、年に一度それぞれ少年と少女が1名ずつくじで選出され、最後の1人が残るまで殺し合いさせられる様子がテレビ中継される、というイベントです。この年行われる第74回の大会に、主人公の少女Katniss Everdeenはくじで引かれてしまった妹をかばって出場を志願するのです。

ここでまずよくわからないのが、どうしてこのようなイベントへの出場が強制されてしまっているのか、74年もの間これらの地域の人々はどうして甘んじて受け入れなければならないのかということです。優勝した地域には何かの見返りがある、というのであれば分からないでもありませんが、そのような説明は特にないので大会の必然性がそもそもわかりません。

また、実際の「ゲーム」が始まるのは映画の中盤が過ぎてからで、それまでには出場者がキャピトルに集められてしばらく訓練を受けさせられ、また競技中の支援を受けるスポンサーを付けるためのアピールなどが行われます。このスポンサー集めのあたりはちょっと皮肉な感じがして面白いと思ったのですが、訓練中の様子はこの後互いに殺し合う事になるのがわかっているにしては緊張感がありません。

ゲームが始まってからも違和感があるのは誰か1人しか生き残ることができないという状況で出場者同士が油断しすぎではないかということです。本来は熾烈な心理戦をどう描くかというところが見どころになるのではないかと思うのですが、この作品ではほとんどそういうところが見られないのが残念で、やはり子供向けだから仕方がないのかという印象を持たざるを得ませんでした。

過去にあったようなテーマで、映像的にもさしたる見どころがあるわけでもなく、演出に深みもない、とあってはいったい何がいいのかがよくわかりません。ここに挙げた以外にも納得の行かない点はいくつもあり、大人の鑑賞に耐えるものではない作品のようです。子供にも積極的に見せるべきものとは思えませんし、どうしてこれがヒットしたのでしょうか。今年11月には続編の公開も予定されているとのことですが、監督が交代しているようなのでそのヒットに見合うものになっていることを祈りたいものです。