伝統あるイギリスの民族系自動車メーカーはついに全て終焉を迎えることとなってしまいました。1924年以来のスポーツカーブランドMGと、1904年から四輪自動車を生産していたRoverのブランドで自動車を生産していたMG Rover社への支援をイギリス政府が打ち切ったことで、破産手続きに入ることになったそうです。

前身のRover Carsは1980年代からホンダとの業務提携が行われていて、ホンダの一世代前のプラットフォームを使用した車をRoverブランドで発売するなどしていましたが、1994年にBMWが買収したことによってこの提携は打ち切られることになりました。その後業績は悪化の一途をたどり、2000年にはBMWにMINIのブランドだけを残してLand RoverがFordグループに、残りがイギリスの投資家グループに売却されることになりました。このイギリスの投資家に売られた時の価格はわずか10ポンドだったということでも話題になりましたが、BMWにとって単なるお荷物でしかなかったということを物語っています。結局このRover買収の責任が問われて当時のBMW社長が解任されるということもありました。

かつてイギリスには数多くの自動車メーカーが存在しましたが、その多くが統廃合され、またアメリカやドイツのメーカーに吸収されるなどして、結局最後に残ったのがMG Rover社でした。今でもJaguarやRolls-Royce、Lotusなどはイギリス車として一般には認識されているのではないかと思いますが、現在はそれぞれFord、BMW、Protonの一部門となっています。また、MINIといえば50代以上ならAustin、30代以上ならRoverの一車種という感覚かもしれませんがそれは先代の話で、今のMINIはBMWのブランドであり車種となっていて、その外見以外はターゲットや設計思想など根本から先代とは全くつながりのないものとなってしまっています。

今回のMG Roverの破綻により、イギリスの製造業の衰退が決定づけられてしまったといわれていますが、魅力のない古い車を作り続けるにも限界がありますので、仕方のないことではないでしょうか。個人的にはイギリス車はコンパクトでキビキビと走るものが多く、シンプルで味があったので特に70年代のものは好きだったのですが、最近のRoverには全く関心が持てませんでした。しかし、2000年前後の自動車業界の世界的規模の再編により淘汰されてしまったということになるのでしょうが、一つの文化が消え去ってしまうと思うと寂しいものがあるのは事実です。FIATの自動車部門も厳しい状況が続いているそうですが、先日GMへの売却が破談となったということで先行きが不透明です。FerrariやAlfa Romeoなどは熱烈なファンが多いのですが、そんな車ばかりでは会社が持ちませんからねえ…次はイタリアの番でしょうか…

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