TAKE ACTION! 2008 +1やはりただ者ではありません…

今からちょうど10年前、日本サッカーが初めて世界の舞台に立った1998年のフランスワールドカップの時、中田英寿は若くして日本代表の中心的存在、司令塔として広く知られるようになったわけですが、試合の日に何度もテレビに映る彼の姿を見た翌朝、私を見て「ナカタ!」と声を掛ける人が何人もいました。特に日頃親しいわけでもなかった人からも言われたので、実際よく似ていたのでしょう。それ以来4年おきにそんなことがあったのですが、前回2006年のドイツワールドカップを最後に現役を退いてしまいましたので、今後はもうそういうこともないのかと思うとちょっと寂しいような気もします。

そんな風に「似ている」と言われるとなんだか全くの他人とは思えず、特に熱心にゲームを見るわけでもない私も職場の机の上には日本代表の7番のジャージを着た中田のマスコットが置かれていたり、彼の動向にはちょっと意識してみるようになりました。まあ似ていると言われる相手が彼ほどのスーパースターだったら悪い気はしませんよね。

引退以来テレビにもポツポツとしか映らなくなりましたが、先日図書館の「話題の本」のコーナーに「中田英寿 誇り」と大書きされた本を見つけ、「まさか自伝なんて書かないよなあ」と思って見てみると、帯には

怒り、孤独、歓喜、挫折、名声……本場ペルージャへの電撃移籍からドイツW杯における日本サッカー崩壊、そして世界を巡ったこの1年。ヒデへの独占取材とあらゆる関係者の証言により浮かび上がる真実ーー。かつてどんな日本人も直面しなかった壮絶な体験と、孤高のプレイヤーの本心が初めて明かされる。感動の人物ドキュメント大金字塔。

と長々と書かれており、あまり多くを語らなかった中田の考えたことを知ることができるかもしれないということで読んでみました。(引用が長くてすみません…)

中田英寿誇り
著:小松 成美
幻冬舎 (2007/06)
ISBN/ASIN:4344013395

本書は中田が引退を決意してから2~3ヶ月後、中田のマネジメントを引き受けるサニーサイドアップ社長の次原氏から著者がそのことを伝えられたところから、ワールドカップ終了後に引退を明らかにするところまで、中田や関係者へのインタビューも交えながら彼の心理状態を描きつつ、日本代表の各試合をダイナミックにかつ克明に描いたものになっており、ゲームの様子はまるで目に浮かぶようです。中田が好きでないという人にはとてもお勧めできませんが、そうでなければ読み物としてなかなか面白いのではないでしょうか。

他の立場の人から見ればもうちょっと批判的な声もあるのではないかと思いますが、どうしても中田の身内の立場で綴られているのでこの本を読むと「スゴイ人」にしか思えません。実際スゴイのは間違いないのでしょうが、他の選手が中田のサッカーについてこられなかった、他の選手の意識が低かった、というように読めてしまいます。しかしサッカーというのは団体競技なのですから、全体でまとまることができなければ意味がありません。彼は「自分には団体競技は向いていない」ということも引退の一因としているようですが…

ところで引退以来世界中を旅しているという中田ですが、現在「TAKE ACTION! 2008」というプロジェクトに携わり、各人が世界中で起こっている出来事に対する問題意識を持ち、何か一つでも行動するきっかけを得られるように、というような活動を行っているようです。具体的にどういうものなのかちょっとわかりにくいプロジェクトですが、こういう視点から実際に行動に移れるのが彼の凄いところでもあり、理解されにくいところでもあるのでしょうね…