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ガガーリン 世界を変えた108分

これも冷戦の産物。
🧑🏻‍🚀

ここで何度も書いているとおり、私は子供の頃に家族で見に行った1978年の「宇宙博」で強い影響を受けたことで、宇宙開発には人並み以上の関心を持っているのではないかと思います。しかしながらこの宇宙博が冷戦真っ只中に開催されたもので主にアメリカと日本の宇宙開発をテーマにしたものであったこともあり、またロケット開発自体が軍事機密でもあり東側陣営に関する情報はなかなか得ることができませんでした。最近では情報公開とインターネットの発展により調べることはできるようになりましたが、それでも私の知識は知れたものです。

最近も宇宙をテーマにしたハリウッド映画がいくつか公開されていますが、それらもやはりアメリカのものなのでアポロ計画を描いた「ファースト・マン」やそれより前の「マーキュリー計画」に関わる「ドリーム」などに限られており、どうしても西側からの視点になってしまいます。しかしそんな中、Amazon Prime Videoで「ガガーリン 世界を変えた108分」なるロシア製作の作品を見つけたので、早速観てみることにしました。

ガガーリン 世界を変えた108分 [DVD]

「ガガーリン」といえばボストーク1号で世界最初の有人宇宙飛行を果たしたソビエト連邦の宇宙飛行士ユーリイ・ガガーリンに他なりませんが、ボストークの打ち上げ前日から帰還までのガガーリンとそれに関わる人達を描きつつ、ここに至るまでの幼少期から直前までの出来事が回想として綴られたものになっています。

この作品ではボストークロケットの打ち上げの場面なども過度にドラマチックに演出されることもなく、108分とされる地球周回軌道上でも大きな問題が起こるわけでもなく、比較的淡々と描かれているように感じましたが、その分落ち着いて観ることができます。アマゾンのレビューでは「全体的に物悲しい雰囲気に描かれている」といっている人がいますが、当時のソビエトの空気自体がそうしたものだったでしょうし、これでもだいぶ柔らかく抑えて描かれているのではないでしょうか。

しかし、まだテレビも一般には普及していない60年前のソビエトの技術で、一連の宇宙飛行を自動制御で実現することができたということには改めて驚かざるを得ません。ガガーリンが搭乗していたとはいえ、本人には操縦することができず、ただ状況を無線通話で報告していただけのようです。また、ボストーク1号がどこまで事実に忠実に作られたものなのかわかりませんが、船内は私が想像していたよりもかなり空間的な余裕があったようだということがわかりました。座席を離れることはできなかったでしょうが、身動き一つできないというようなものではなかったようです。

なお、本作は字幕版がないようだったので日本語吹替版で観たのですが、作品中でガガーリンが歌うロシア語の歌の歌詞がむりやり日本語に翻訳されているところにかなり違和感がありました。歌詞の意味に重要な意味があるのであればそれも仕方ないかと思うのですが、そういうわけでもなかったようなので、歌の方は原語のまま、歌詞を字幕で表示するなどしてもらえるといいのではないでしょうか。

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Rocket Man

両親がひどすぎる。
🎤

私が住む姫路市にも以前は複数の映画館があり、大手シネコン進出の話があるたびに「青少年の健全な育成に悪影響が…」などという訳のわからない理屈で横槍が入って潰されてきていました。しかしながらそうこうしているうちに各映画館も老朽化が進み、デジタル化への投資ができる状況ではなくなっていたため、2015年についに市内の全映画館を統合して一つの独立系シネコンが作られることとなったのでした。それが現在も市内唯一の映画館であるアースシネマズ姫路です。

それまで私は映画を観るときにはわざわざ隣の加古川市まで車で30分以上かけて行っていたので、「ようやく我が街にもシネコンが!」と喜びたいところなのですが、ちょっと問題があります。地方の映画館にしては結構営業に力を入れているようで、舞台挨拶を誘致したり、ガルパンの大音響上映やコンサートの上映などの企画で頑張っているのはいいのですが、どうも洋画に冷たいのです。邦画の方が興行成績が良い、要するに儲かるというのはわかるのですが、売れない洋画は上映回数が絞られていたり、公開からちょっと時間がたつとレイトショーだけになったり、一番の問題は吹替版しか上映されないことが多いということです。

そんな状況なので観ようと思っていた映画をやむなく見送ってしまうようなことも多々あり、「ロケットマン」もそんな作品の一つになってしまうかと思っていたのですが、先日神戸に行ったときにちょうどあと10分で開演というときに映画館のそばにいたので、「今だ!」と駆け込みで観てきたのでした。私が席についた瞬間に例の「カメラ泥棒」が始まったので、本当にギリギリでした。

ということで前置きが長くなりましたが、この作品はイギリスの偉大なロック歌手Elton Johnの半生を描いた伝記的ミュージカル作品です。といっても、私ももちろんEltonの事は中学生のときから知っていましたが、実はそれほどEltonの曲はよく知りませんでした。数多くのヒット曲を持っているので、聴いたことがある曲もたくさんあるはずなのですが、あまり私の趣味ではなかったのでした。しかしそんな私でも十分に楽しむことができましたので、予備知識は特に必要ないと思います。

ロンドン近郊の55 Pinner Hill RoadでReggie Dwightとして生を受けた彼がElton Johnになり、Bernie Taupinと組んでアメリカ、母国、そして世界で成功を収め、そして破滅ギリギリのところで踏みとどまる、という姿を数々の歌を交えて描いたものです。この作品にはElton本人も製作に入っていますので、少なくとも彼の視点からの事実に基づいたストーリーとなっているのではないでしょうか。

Eltonを演じているのは「キングスマン」のEggsyことTaron Egertonですが、Elton本人もTaronの歌を認め、彼以上にEltonの歌をうまく歌った人はいないとまで言ったそうですから、間違いないでしょう。実際、作品中でもかなり聴かせてくれます。私が感動したのはEltonの初期の代表作である”Your Song“が生まれるところです。これは私も知っている曲でしたが、Ellie Gouldingによるカバーしか持っていなかったので、オリジナルの曲を購入してしまいました。私が生まれるよりも前にリリースされたものなのでもちろん古さはありますが、これは今聴いても良い曲です。

Elton Johnといえば奇抜な舞台衣装も有名で、私はそのせいで真面目に評価できなかった面もあるのではないかと思っていますが、やはりあれだけぶっ飛んだ格好はまともな精神状態ではできないのでしょうね。様々な事情で精神的に追い詰められ、それから逃げるためにアルコールと薬物に浸ってしまっていた様子はとても痛々しいものでしたが、そんな中でも手を差し伸べて支えてくれる人が一人でもいたというのは本当に救いでした。私自身も救われたような気がします。

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The Theory of Everything

今まで何も知らなかった。
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2014年にアメリカを中心にIce Bucket Challengeという運動がSNSなどを通じて社会現象となりました。バケツに入った氷水を頭からかぶる様子を動画で公開し、つぎに同じことをやる人を2、3人指名して繋いでいくというものでしたが、これは筋萎縮性側索硬化症(ALS)の研究を支援するための運動でした。氷水をかぶることについての意味は私にもよくわかりませんでしたが、この運動を通じてALSに対する世間の関心を高め、莫大な資金を集めることができたようですので、運動そのものが当初の期待を大幅に上回る成功となったのは間違いありません。

それまで私のALSに関する知識はほぼゼロだったのですが、それでもDr. Stephen Hawkingが患っている難病であるということだけは知っていました。ほとんど体を動かすことができず、機械を通じてのみ意思疎通が可能でありながら理論物理学の権威であるという、二重の意味で平凡ならざる人生を送られたであろう博士も昨年生涯を終えられたのですが、その博士の伝記映画である「博士と彼女のセオリー」という作品を観てみました。

博士と彼女のセオリー (字幕版)
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この作品は博士がまだ健在だった2014年に製作されたものですが、博士の元妻であるJane Hawkingが書いた「無限の宇宙 -ホーキング博士とわたしの旅-」という回顧録を元に、二人の関係を描いたものとなっています。博士がALSを発症する直前に知り合い、発症して余命2年と宣告されたにも関わらず添い遂げる覚悟を決め、その後予想を大幅に超えて何十年も活躍を続けた博士とそのそばにいたJaneの思いが伝わってくる映画でした。しかしただ美しいだけでなく、現実として存在するであろう様々な問題についても考えさせられます。

本作ではEddie RedmayneがDr. Hawkingを演じていますが、Eddieはこの役でアカデミー主演男優賞などいくつもの賞を受賞しており、完全に本人にしか見えないような迫真の演技を見せてくれています。本人の写真を見てみてもまったく違和感がなく、Eddie以外にこの役が務まったとは思えません。Jane役は私にとっては「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」のJyn ErsoでおなじみのFelicity Jonesですが、童顔の彼女なので老けメイクをしても若々しく見えてしまうのは良いのか悪いのか微妙なところです。

ちなみに博士が初期に提唱した「ホーキング放射」、ブラックホールが何もかも吸い込むだけではなく熱的な放射があるという理論的予言は、今年になってEvent Horizon Telescopeによって「撮影」された画像によって人々の目に触れることになりました。実際には予言に基づいてそれらしい画像を探したということのようですが、それまでイメージ図でしかなかったものが写真として見ることができたことで、Dr. Hawkingの理論が単なる計算上のものなのではなく、現実であると実感できたような気がします。