両親がひどすぎる。
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私が住む姫路市にも以前は複数の映画館があり、大手シネコン進出の話があるたびに「青少年の健全な育成に悪影響が…」などという訳のわからない理屈で横槍が入って潰されてきていました。しかしながらそうこうしているうちに各映画館も老朽化が進み、デジタル化への投資ができる状況ではなくなっていたため、2015年についに市内の全映画館を統合して一つの独立系シネコンが作られることとなったのでした。それが現在も市内唯一の映画館であるアースシネマズ姫路です。

それまで私は映画を観るときにはわざわざ隣の加古川市まで車で30分以上かけて行っていたので、「ようやく我が街にもシネコンが!」と喜びたいところなのですが、ちょっと問題があります。地方の映画館にしては結構営業に力を入れているようで、舞台挨拶を誘致したり、ガルパンの大音響上映やコンサートの上映などの企画で頑張っているのはいいのですが、どうも洋画に冷たいのです。邦画の方が興行成績が良い、要するに儲かるというのはわかるのですが、売れない洋画は上映回数が絞られていたり、公開からちょっと時間がたつとレイトショーだけになったり、一番の問題は吹替版しか上映されないことが多いということです。

そんな状況なので観ようと思っていた映画をやむなく見送ってしまうようなことも多々あり、「ロケットマン」もそんな作品の一つになってしまうかと思っていたのですが、先日神戸に行ったときにちょうどあと10分で開演というときに映画館のそばにいたので、「今だ!」と駆け込みで観てきたのでした。私が席についた瞬間に例の「カメラ泥棒」が始まったので、本当にギリギリでした。

ということで前置きが長くなりましたが、この作品はイギリスの偉大なロック歌手Elton Johnの半生を描いた伝記的ミュージカル作品です。といっても、私ももちろんEltonの事は中学生のときから知っていましたが、実はそれほどEltonの曲はよく知りませんでした。数多くのヒット曲を持っているので、聴いたことがある曲もたくさんあるはずなのですが、あまり私の趣味ではなかったのでした。しかしそんな私でも十分に楽しむことができましたので、予備知識は特に必要ないと思います。

ロンドン近郊の55 Pinner Hill RoadでReggie Dwightとして生を受けた彼がElton Johnになり、Bernie Taupinと組んでアメリカ、母国、そして世界で成功を収め、そして破滅ギリギリのところで踏みとどまる、という姿を数々の歌を交えて描いたものです。この作品にはElton本人も製作に入っていますので、少なくとも彼の視点からの事実に基づいたストーリーとなっているのではないでしょうか。

Eltonを演じているのは「キングスマン」のEggsyことTaron Egertonですが、Elton本人もTaronの歌を認め、彼以上にEltonの歌をうまく歌った人はいないとまで言ったそうですから、間違いないでしょう。実際、作品中でもかなり聴かせてくれます。私が感動したのはEltonの初期の代表作である”Your Song“が生まれるところです。これは私も知っている曲でしたが、Ellie Gouldingによるカバーしか持っていなかったので、オリジナルの曲を購入してしまいました。私が生まれるよりも前にリリースされたものなのでもちろん古さはありますが、これは今聴いても良い曲です。

Elton Johnといえば奇抜な舞台衣装も有名で、私はそのせいで真面目に評価できなかった面もあるのではないかと思っていますが、やはりあれだけぶっ飛んだ格好はまともな精神状態ではできないのでしょうね。様々な事情で精神的に追い詰められ、それから逃げるためにアルコールと薬物に浸ってしまっていた様子はとても痛々しいものでしたが、そんな中でも手を差し伸べて支えてくれる人が一人でもいたというのは本当に救いでした。私自身も救われたような気がします。