Steve Jobs周りの人たちは大変だったろうな…

日本にいる時は毎週図書館で5,6冊の本を借りて読みあさっていたものですが、なぜか今はそういう余裕もなく、読みたいと思って買った本も一向に読み進めずにそのまま置いてある、いわゆる「積ん読」状態でどんどん溜まっていってしまうような状態になっています。特に以前より仕事が忙しいというわけでもありませんし、新しい趣味ができたというわけでもないのですが、強いて言えば睡眠時間を意識的に長くしているくらいでしょうか。睡眠不足は免疫力の低下につながるので、極力風邪もひかないようにしなければならない環境ゆえのことです。

しかし先日、地元Ann Arborのダウンタウンにある図書館に行った際、日本語書籍のコーナーに行ってみると思った以上に日本の本があって、しかも比較的新しい人気作品があり、それでいて借りる人は少ないので日本の図書館では一年以上待たないと順番が回ってこないようなものもすぐ借りられるというようなことになっていました。もちろん、全体の冊数は僅かなので選択の幅はありませんが、異国の図書館であることを考えれば十分でしょう。ということで、今回はそんな中から見つけた「スティーブ・ジョブズ」を借りて読んでみましたが、やはり貸出期間の1ヶ月では読み切ることができず、結局2度延長して何とか読了です。

スティーブ・ジョブズ I
スティーブ・ジョブズ I

posted with amazlet at 13.10.27
ウォルター・アイザックソン
講談社
売り上げランキング: 486
スティーブ・ジョブズ II
ウォルター・アイザックソン
講談社 (2011-11-02)
売り上げランキング: 1,377

この作品は言うまでもなくちょうど2年前に亡くなったAppleの創業者でありCEOであったSteve Jobsの伝記ですが、唯一本人が公認しているもので、しかも亡くなったわずか20日後に発売されたということで大きな話題になったものです。他のJobs非公認の伝記は何冊も読んでいた私ですが、この頃ちょっとバタバタしていたこともあってこの作品は読むタイミングを逃してしまっていました。実は原書の英語版はKindleで購入していたのですが、こちらもほんの冒頭部分までで止まってしまっていたので、ようやく読めたというところです。

この作品を読んでいて思うのは、Steveの人生というのは完全にAppleと共にあったのだということです。Appleからエポックメイキングな製品が世に出てきた時、それはすなわちApple IIMacintoshiMaciPodiPhoneそしてiPadといった製品が生み出された時には必ずSteveがそこにいて、その開発の細かい部分にまで関与していたのだということで、本書ではそこを中心に描かれているように感じました。もちろん私生活についても書かれてはいますが、彼がどれだけ自分の会社と製品を愛し、熱意を持って接していたかということがひしひしと伝わってきました。

そしてなぜAppleからはこれだけ魅力的な製品が出てきて他社にはできないのか、それはSteveがいるかいないかではないのだと感じました。そうではなく、会社を動かす立場にいる人が、Steveと同じように自分たちの製品に深い愛情を持って関わることができるかどうか、違いはそこではないでしょうか。Steveは決して技術者として優れていたわけではありませんが、鋭い感性を持ち、そして決して妥協しませんでした。彼に振り回される周囲の人間は大変だったでしょうが、必死に信じて従っていたのでしょうか。

SteveがいなくなったAppleがどうなってしまうのかは彼がCEOを退いた頃から不安視されていたことですが、それは今後新たなイノベーションを起こすことができるのかということでしょう。iPhoneの販売数が伸び悩んでいるなどという報道もありますが、限られたパイの中でいつまでも同じペースで数量が伸びるはずもなく、まだ減少しているわけでないなら心配するところではないと思います。それよりも問題はiPhone、iPadの次の革新的な製品を、高い完成度で生み出すことができるかどうかではないでしょうか。

本作は最近「テルマエ・ロマエ」のヤマザキマリ氏により漫画化され、またAshton KutcherがSteveを演じている映画化作品「ジョブズ」も今度の週末に日本でも公開されるということでまだまだ話題となっているようです。アメリカでは映画”Jobs“の公開は既に終わってしまっていて、私は見逃してしまったのですが、この本を読み終わった後で今さら観たくなってきてしまいました。DVD等は来月発売されますが、評判を聞くと買ってまで観るほどではないような気もしますし、レンタルでいいかもしれません。この本はまあまあ面白かったのですけどね。

スティーブ・ジョブズ(1) (KCデラックス)
ヤマザキ マリ
講談社 (2013-08-12)